うさぎさん、ＶＳエリスエール＆ボルバーノス５
つまり、今回もボルバーノスが一番の黒幕ってことか。
―― あれ？ ウサギ君？ 旦那を忘れてるよ？ ほら、ウサギ君僕のことボルバーノスの旦那って呼んでたよね？ ――
正直勝てる見込みはないけども、でもボルバーノス。俺、皆に言ってない奥の手が一つあるんすわ。
直接的な攻撃とかじゃないし、周囲にどれ程の影響でるかわからないから本気で追い詰められてもうどうなってもいいやって思った時くらいしか使わないだろうって思ってんですがね？
―― え？ そんなのあったっけ？ ――
俺はボルバーノスに念話で告げる。
その能力は俺も未だに使った事がないというか、成ったことがないのでどうなるかすら不明だけど。
俺の奥の手は確かにあるのだ。
おそらく、一生切るのことない手札。
俺が余程この世界どうなってもいいやって思わない限り使われることはないだろう。
それでも、奥の手だ。
―― ちょ、待った待った待った！ それはヤバい。マジでヤバい奴だからっ！？ 下手したら世界滅んじゃうよ！？ ――
ボルバーノスが俺を追い詰めるから、さー、つかっちゃおーっかなぁー。
―― いやぁーやめてぇー。ゆるしてウサギくぅーんっ。謝るからー ――
えー。どうしよっかなー。
「オイテメェら……なんでコントになってんだッ！？ もう全然怒ってないだろそこのウサギッ」
げぇ、バレた！？
―― な、何故分かったぁ！？ ――
「諸共縊るぞクソ共がァッ！！」
ぎゃー、アーボたっけてぇ。
―― ちょ、ストップストップ。これ以上の戦闘は止めようエリスエール！ ――
「煩いっ、あんたたち揃いも揃って遊び過ぎなのよっ、ムカつくから一発殴らせろッ！！」
やっぱダメっぽい。
ボルバーノスさんよ、俺、マジで行くんで夜露死苦。
アーボ、遠慮はいらん、やるぞ！
アーボが先頭で盾を構えたまま特攻。
俺はそのアーボを後ろから追走だ。
迫り来る俺たちに風魔法を放射するエリスエール。
これは、吹き飛ばし系か！？
ならばアレだな。進化発動！ タングステンラビット。からの、限界加速！
転がりかけたアーボを後ろから支えて走りだす。
凶悪な重しで転がることが無くなったアーボと共に、エリスエールへと近づいて行く。
無数の魔法が乱れ舞う。
そのことごとくをアーボが受け流して行く。
「クソッ、あの魔物本当に面倒なッ！」
さらにアーボの動きが速くなる。
こいつステータス２０倍に引き上げやがったな。
ってことは、トドメのアレを使う気か。
―― エリスエール、神殺之槍が来るぞ！ ――
「当たるかッ」
当てるさ！
行くぜアーボ。これが俺達の、必殺だァ！
魔法が途切れた瞬間を見計らい、アーボを抱えあげる。
何をする気だ？ と怪訝な顔をしたエリスエール。
そんな彼女向け、アーボを思いっきり投擲。
テクニシャンが仕事して大した力もいらずにアーボが飛んで行く。
「はっ、それでアーボちゃんが神殺之槍でも使うって？ 喰らってやるもんですか！」
―― 馬鹿、ウサギだ！ ――
「へ？」
間抜けな声を発したエリスエール。
俺はアーボの影に隠れながら大きく息を吸っていた。
「キィ――――――――――――――ッ！！」
「しまっ……」
想定外の咆哮に思わず身体が硬直するエリスエール。
そこに飛び込むアーボ。
エリスエールが焦った顔をするがもう、遅い。
アーボが神殺之槍を発動する。
「きゃああああああああああああああああああっ……あれ？」
絶体絶命の一撃だった。
避けられないはずだった。
でも、エリスエールに肉薄し、槍を突き出した格好で、アーボが蜘蛛の糸に絡め取られていた。
ボルバーノス、また邪魔したァ！
―― だから、おちつけって。これ以上は本当に死人でちゃうから ――
やり過ぎだと思わず止めに入ったボルバーノス。
これはもうボルバーノスも敵認定でいいのだろうか。
正直こっちも結構頭に来てる。
いくらなんでもあの連撃はこちらを殺すつもりじゃないと放てない。
だから、ここで終わらせられても双方禍根を残すだろう。
手打ちにする段階はとうに過ぎている。
あとは……ああ、そうか。頭に来過ぎて簡単な事を忘れてたな。
なら、行動だ。
「ちょっとボルバーノス！ いちいち邪魔しないでくれる！」
―― いやいや、だから落ち付けって。エリスエールまで激怒してどーすんのさ。とりあえず人間たちは避難させ終えたからよかったけど、これ以上はマジでヤバいからね ――
「あのウサギ私を殺しに来たのよ！ あの黒丸も！」
―― だからね、それは僕らが……あれ？ ウサギ君どこいった？ ――
「しまった、またっ！？」
焦るエリスエール。
でも、遅い。隠蔽と無音歩行で既に近づき済みだ！
「そこか！？」
スキル使用！ パンツを盗む！
「へ？ きゃぁ！？」
俺が頭に身に付けた物に気付いて慌てて下腹部に手を当て隠すエリスエール。服で隠れてるけどやっぱ気になるよな。女性ならさ！
何を盗ったかって？ そんなもん聞く必要はないよな？ 黒い紐だよっ。凄いの穿いてるな！？
行くぜエリスエール。これが、俺の、必殺技だー！ 黄金の右手をくらえぇい！
「き、きゃあああああああああああああああああああああああ！？」
