うさぎさん、&ボルバーノスVSエリスエール2
無数の光が瞬いた。
エリスエールが使ったホーミング式の光球魔法だ。
次々に襲いかかる魔法弾を糸を巧みに使い弾き飛ばし、包みこみ、誘爆させる。
ボルバーノスはたまにエリスエールに話しかけながらのらりくらり、魔法を避け、弾き、防いでいく。
そのたびにエリスエールが怒りゲージをあげていき、大魔法を使って来るが、立体機動を上手く扱うボルバーノスは当らない。
いや、たまに巻き込まれるが包球により全て防いでしまう。
ちなみに俺は今までの攻撃を受け切る自信はない。
多分ついさっきあった広域スラッシュカッターとアウトレンジゲイザーの連続コンボは多分避けきれない。スラッシュカッターで首ちょんぱされるか、それを避けた後に来るかち上げで空高く吹きあげられての超高速落下で潰れるか、そこで地面に飛ばされたところで次にやってくるスラッシュカッターでみじん切りにされるか。
うん、エリスエールとまともに闘ったら生き残れんわ。風魔法恐い。
そんなエリスエールは風魔法が得意なだけで他の魔法が使えない。なんてことはなかった。
先程使った光魔法以外にも、水を交えたゲイルトルネードや、土魔法を加えたマッドサイクロン。
さらに炎を加えたヒートバーストで熱帯雨林みたいに気温爆上げしたりと多種多様な魔法を披露する。
ボルバーノスはこれをことごとく粉砕する。
俺が前にやられたように対抗できる魔法や技で軽々凌ぐのだ。
本人からの念話がたまに届いて、うさぎさんたっけてー。もう無理。これ死ぬ奴だって。
といろいろと声が届いて来るのだが、とても余裕そうなのでサムズアップでガンバッ。とエール送るだけにしている。
というか、応援する以外に俺に何をしろと?
あんなバケモノ同士の闘いに参加しても普通に消し飛ばされるだけだぜ。
それこそ羽虫のごとく散りにけりってなもんだ。
森林で 羽虫の如く 散りにけり
うん、俳句で来たぜ。って季語……ないか。
ボルバーノス 羽虫の如く 散りにけり
うん、これは失敗だ。季語ねーし。
さて、どうでもいいことは放置してっと、先程までおちょくる態度だったボルバーノスは、今ゲリラ戦に突入していた。
高速移動しながら木の中へと突っ込み、葉っぱに隠れて毒液を飛ばす。
さらに立体機動で空中へと脱出。
魔法弾が木の枝を吹き飛ばし、脱出したボルバーノスを追って連弾が発射されて行く。
デコイと思しき糸が吐きだされる。
魔法弾がなぜかそちらへと向かって行き爆散し始めた。
さらにボルバーノスの投網型の糸。
エリスエールはぶわっと開かれた投網糸に掌を向ける。
「ロストカルネージ」
―― げぇ!? ――
うおぉ!? なんだあれ、スプラッシュ状態で噴出した赤い何かが糸を融解させちまった!?
そのまま飛沫がボルバーノスの身体に掛かる。
―― ぎゃあぁ!? 溶けるぅっ!? ――
ちょ、ボルバーノスさん大丈夫っ!?
―― 整体師に足つぼマッサージ受けた痛さだよッ! ――
どう反応していいのか分からん痛みだなオイ。
致命傷ではなさそうだけどすっごく痛そうだ。
というか、なんでそんな言葉を知ってんだよあんた。転生者か?
「誰が整体師よっ! トライベノム」
なんか紫色の毒々しい光球が三つ、ボルバーノスへと飛んで行く。
―― なんの、マジックキャンセルウェッブ ――
蜘蛛糸を再び投網状態で投げつけるボルバーノス。
三つの光球を捕獲した。
おお、消失したぞ!? すげぇ。
―― ふぅ、ようやく整ったよ ――
「?」
―― さぁさウサギ君見るがいい! ボルバーノスの巣 ――
「っ!?」
声にならないエリスエールの悲鳴。
何かを察して逃げようとしたのだが、ボルバーノスが指を鳴らすと……え? 指?
いや、なんか指パッチンしたから指かと思ったけどボルバーノスには指ないよね? どうやって出したの今の音?
とにかく、指? を鳴らしたボルバーノスに反応し、無数の糸が動き出す。
巨大な糸の群れが既にその場に張り巡らされていたのだ。
避けた拍子にくっついた羽に気付いたエリスエール。
脱出を試みようとするが、動けば動くほど巣が絡みついてくる。
凄い、どんどん糸が集まって、エリスエールが糸に巻き取られて行く。
あ、これヤバい。なんて顔を今更ながらするけど、既に遅かった。
なるほど、まともにやると確かに勝てないけど、絡め手使えばエリスエールを倒せる。
有言実行だなボルバーノス。
これで、殺す時は麻痺毒付きの牙をぶすっと一撃。
あとは得物が動かなくなるまで待ってから体内をドロドロにして血肉をすするんだな。
―― やらないよ!? なんでそんな蜘蛛みたいな食事するの! 僕は守護者だよ。蜘蛛の! ……蜘蛛だった!? ――
なんで新事実みたいな驚き方なの?
とりあえず、エリスエールには勝利したってことでいいのかな?
一仕事終えたみたいに額を拭く動作をするボルバーノスがこちらに来る。
俺も迎え入れて勝利を分かち合おう、として、ふと、気付く。
燃えていた。
エリスエールを捕縛した包球が燃え盛っていた。
あかん、これ、捕縛失敗だ。




