うさぎさん、エリスエールの森6
数時間経過。
無数にいた魔物も数える程になりました。
すげぇなあんな大魔法使いまくってるのにまったく衰える気配がない。
―― そりゃそうでしょ。一応曲がりなりにも妖精族だからさ、魔法の方が本職なんだよあのバケモノ。 ――
いや、女性相手にバケモノて。
まぁ、確かに魔力はバケモノ級だよね。
通常攻撃でも一般の魔物は一撃だし。
うん。アレはバケモノだわ。
「なんっつーか、そろそろ決着着きそうだな」
「圧倒的ではないか、デース」
「はぁ……でも、被害がこっちに来なくて良かった」
被害も結構無くなってきたみたいだし、こっちにまた魔物が飛んでくることはもうなさそうだ。
風魔法って凄いのな。なんっつーかレパートリー多過ぎて衝撃的な魔法の使い方を覚えたよ。
「あとは消化試合になりそうだね」
「あー、じゃあ俺ちょっとそこでトイレしてきます」
「Oh、我慢してまーシタ」
「そ、そっか、別にトイレまで待たなくてもそこらですればよかったんだっけ」
なんだお前ら、揃って連れションかよ!?
この世界の人物は想定外だったようで連れションってなんだ? と小首を傾げるシュリック。
連れション知らないのか、一緒に連れだって小便するだけだよ。
折角だし俺もっと。
別に今すぐしたいって訳じゃないし、ウサギさんなので適当な草木に栄養補給と称して放出してますが、折角だから皆で連れションだ。
横一列に並んで俺、福田、ジョージが立ちションです。
相手のアレを見ないように皆なぜか上を向く。
「なー磁石寺」
なんだね福田君。
「どうやったらモテるんだろーな」
「Oh、彼女出来ませんもんねー」
お前ら自分の顔見て言ってみろ。
ケツアゴでモテるのは上流階級だけだぜ。偏見? なんかゴテゴテのでっかい指輪嵌めまくって葉巻吹かせてる奴くらいしかイメージないんだよ。
カジノとかに居そうだよねケツアゴ金髪男。
まぁ、なんだ。思い切りが大事なんじゃねーの。
俺だって一世一代の告白してさ、桃瀬から返事貰った訳だし。
振られるとか考えず、この人と彼氏彼女の間柄になりたい。って思った時に思い切り告白するとか?
「まー、だよなー」
「でも、告白してもフラれるばかりデース」
だから、お前自分の容姿確認しろよ。
そんな容姿でアナタガ好きデースとか拙い日本語で言われてもそりゃ無理だぜ。
お前は金持ちになってから金に群がってくる女性を狙うんだな。
女なんて金見せれば一発さハッハーとか笑っといてくれよ。俺が一人ずつ寝取って追い落としてやるから。
「後先考えず、か。告白とか俺にゃー縁遠いなぁ」
お前モテないもんな。
やっぱ動物に向かうしかねーんじゃね?
魔物相手ならほら、容姿だけなら人間っぽいのもいるしさ。
やり方間違えなければ捕獲できるだろ。
ワーキャットとかどうよ? 失敗したら腹裂かれるけど。
「動物はなー、やっぱ勘弁」
「それはナイデース。でもネコミミ少女はアリデース」
二人とも思わずネコミミ娘を思い浮かべたようだ。
「なー、小便ってさ、種類あるよな」
いきなり何の話?
「いやな、普通に出るなら問題ねーんだけどさ、たまに二本に分かれたりしねぇ? 本流は真っ直ぐ飛ぶのに左側にも同時に飛ぶっつーかな、便器から外れた場所が濡れてくから焦るけど止められない、みたいな」
「Oh、ワイドになることもありまーすネー」
「そうそう、他にもスプラッシュとかな。真っ直ぐ飛んでんのになぜか持ってる手に掛かるんだわ」
……お、おい、待て。
まさか、今その話題したのは……
「現在進行形で掛かっております。手拭きねぇ?」
ははっと泣きそうな顔で告げる福田。
下げた視線の先に拭き心地の良さそうな真っ白ボディのウサギさん。
「磁石寺ぃ、いい毛並みだなぁ。拭いて、いい?」
ふざけんな、やってみろ、殺すぞッ!?
あ、福田の方が速く終わりやがった。
ヤベェ!? 止めろ。近づいてくんなッ!
と、止まらない、止まらないけど逃げなきゃやべぇ!?
あ、ちょ、やめ……
アァ―――――――……ッ。
……
…………
……………………
しくしく。穢されちゃった……
俺は泣きながらボルバーノスに突撃。
こっちの会話を聞いてなかったボルバーノスが巻き添えを喰らった。
―― うわ、汚っ!? 止めろウサギッ、僕に近づくなーっ! アァ――――……ッ ――
「何を、してるんだか……」
「アレ、どうやって洗うんだ?」
「後でクリエイトウォーターで丸洗いしてあげますね。……だから近づかないで」
ちょ、リルハさん。今凄い早口で感情籠ってない言葉が漏れてなかった!?
俺とボルバーノスさんはちくしょうちくしょうと福田に恨み事を告げるのだった。
追伸、ボルバーノスさんと一緒に体験したリルハのクリエイトウォーターはドラム式サイクロン方式でした。




