うさぎさん、エリスエールの森3
ガミガミガミガミ
只今エリスエールとレッサーパンダ君に怒られ中のウサギさんです。
ミナミコアリクイ君と一緒に正座で怒られてます。
二人揃ってなんで俺までって顔してるけど、お前が悪いんだぞコアリクイ君。
あんだよその目は? 俺が悪いみたいにいうなよ。
たんまりぴかぽよ喰っただろ。
ギルティだよギルティ。
あ? ダンゴムシ転がしたのは俺?
何ってんだ。ダンゴムシ君は勝手に転がっていったんだよ。
俺はたまたま持ってた棍棒がたまたまダンゴムシ君に触れて、驚いたダンゴムシ君が丸まって逃げだし、たまたまエリスエール達の方に転がっただけじゃないか。
ほら、俺悪くない。
「あんたが悪いのよッ!」
えぇぇ!? 心外だ!?
俺見てただけだよっ。しいていうならあのダンゴムシが悪いんだよ。
どこ行ったあの野郎!
「ウサちゃぁん、お姉さん激おこなんだよぉ、わかるよねぇ?」
はいっ。すんませんっした!
素早く謝る。
綺麗な土下座である。
兎にとっては普通の状態とも言える。
顔伏せただけだね。
「Oh、そろそろ飽きまーシタ。出発しましょー」
空気を読まないジョージが助け舟。
エリスエールがギロリと睨むが全く気づいてない。
むしろ目があったことで気があると思ったのはウインクしてやがった。気持ち悪い。
「はぁ、珍妙生物に免じてこの位にしておきます。さっさと進みますよ」
―― エリスエールも兎に翻弄され始めたねー。ぷーくすくす ――
「捻りますわよボルバーノス!」
―― キャー捻られるぅー、ウサギさん助けてー ――
そこで俺に来ます!?
とりあえず捻られといてください。その間に助ける方法考えます
―― それ、助ける気ゼロだよね!? ――
そもそも守護者同士の争いにしがないウサギさんを参加させる方が間違ってますぜ。
俺なんかもうその場で土下座して頭の上に草履乗せて過ぎ去るまで待つしか出来ませんって。
「夜行さんかよ!?」
福田よ、お前ツッコミも出来たのか!?
成る程、彼もまた、ちゃかして良い部類の漫才師だったか。
ならば、これより先は遠慮はいるまい。
お。なんか一杯いる。なんだろ?
ちっさい小人が列なして歩いている。
全員がゴブリンを小人化したような姿だが、目がなんか優しい。
「それはグリーンスキンたちよ」
グリーンスキン? 緑の肌? ゴブリンと何が違うんだ?
しいて言うなら着ている服か。
サンタさんみたいに赤い服に白いふわもこが付いている服を着ているのだ。
手に持っているのは身長に見合ったトンカチとか大工道具。
何十人も列を成して歩いている。
エリスエールの説明によると、彼らはたびたび移動して集団生活をしているらしい。
丁度民族大移動の時に見付けたようだ。
でも、この森もこの小さな旅人達にとっては脅威だろう。
危ない魔物もそこまではいないみたいだけど……
ってそういえば森って侵略者から守護しないとだよね。エリスエールは大丈夫なの?
「あら、私の所だって強力な魔物はいるのよ。会いたい? 会いたいでしょぅ、会いたいわよねぇー」
ちらっちらっと俺達を見るエリスエール。
どうやら反応が欲しいようだ。
ボルバーノスを見れば、可哀想だからのったげて、と自分は蚊帳の外から俺にお願いするらしい。
仕方ないなぁ。全く。
エリスおねーさーん。僕会いたいなぁー。
「そうでしょそうでしょー。仕方ないなぁー。って、ウサちゃん、あんた一人称僕だったっけ?」
なんのことかわっかりっませーん。
それよりエリスお姉さん、この森さいきょーの魔物ってなーぁに?
「それはねー、あそこにある聖樹に擬態しているエインシェントトレントよ」
おお、開けた場所に出たと思えば、なんか神々しい感じのでっかい木が一つ。
大樹と言った方が良いか? それとも気になる木と言った方がいいのか。
あの懐かしい歌が脳内を流れて来たぜ。
にしても……でかいっすね。
皆して思わず見上げる。
枝はが周囲の木々を押しやるようにして凄い広がっている。
エインシェントトレントの下は完全の日の光が差し込まない木陰で、半径数キロに及ぶ他の木が生えてない地帯が生まれていた。
エインシェントトレントの胴体と言っていいのか? お爺さんって感じの顔が掘られているように見える。
どうやらこれがエインシェントトレントの知能部分らしい。
口が動くし目も動く。
「話は聞いている。良く来た人間たちよ。儂がこの地を収めるエイ……げふんげふん。失礼。エリスエール様の治めるこの地を守護しているエインシェントトレントである。名前はまだない」
やべぇ、こいつ野心ありまくりだ。
守護者の地位狙ってやがる。
というか、多分エリスエールがたびたび別の場所に移動するから実質ここ収めてるのこいつなんだろうな。
待てよ、普通守護者っていろいろと優遇されてるはずだよな。
あるいは皆から慕われてるとか尊敬されてるとか。
決して悪戯されたり突撃されたりはしないよな。
もしかしてだが、エリスエールの姐さん実は結構ヤバい状況じゃね?
そっと周囲を見回す。
何やら視線がそこかしこにある。
息を殺しているところを見るに、襲撃のタイミングを計っているか、ずっと隠れたい理由があるか。
これ、本格的に時間もなさそうだな。
下手すりゃ囲まれるぞ。
でも、多分だがボルバーノスがいる御蔭で仕掛けるか躊躇っている様子も見られる。
ボルバーノスさん、実は気付いてる?




