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うさぎさん、ボルバーノスの森疾走事件

 ―― もしよかったらなんだけど、姿を現すことは可能かい ――


「私も私もー。噂のディアリオ見てみたぁい」


 はいはいはーいと手を挙げて全力主張するエリスエール。

 どうやらオツムは弱いらしい。

 頭の弱い綺麗なお姉さん……大好物ですバッチコイ!


 ディアリオさんどうします?

 蜘蛛と綺麗なお姉さんがこう言ってますけど。

 ……うん?


 どさっと重量物が降ってきた。

 唐突だったので違和感感じるのが遅くなってしまった。

 って、おぅわぁ!? ディアリオさんなんで俺に乗っかってんの!?


「だぁ」


 ―― せっかくだから来てみたぞ。ウサギよ。どうせだ、ボルバーノスの森を走りたまえ ――


 またあれやるんっすか。

 はぁ。んじゃボルバーノスさんや、俺はディアリオ先生の騎乗兎になるんでしばらく森走ってきます。


 ―― え? あ、うん。うん? ――


 思わず返事したボルバーノス。しかし意味が分からなかったようで返事をした後で小首を傾げる。

 疑問を呈しようとした時には、既に赤ん坊を乗せたウサギさんは走りだした後だった。


「えええええっ!? 突然赤ちゃんが兎に降って来たんだけど!? きゃっきゃしながら兎に騎乗したんだけど!? っていうかそのまま走りだしちゃったんだけどもっ!?」


 ―― まぁ、いっか ――


 驚くエリスエール。そんな彼女の傍で兎達を見送ったボルバーノスはちょっと疲れた様子で呟くのだった。

 ディアリオの姿を見た瞬間にあ、これ敵わないや。と本能的に察したのだ。

 そんな暴君が森を兎に乗って一周したいというのだ。好きにやらせるしかないだろう。


「いや―見事に赤ちゃんだったわね」


 ―― でも強いねー。兎君が早々諦めたように僕でもあれには敵わないね。ウサギじゃないけど敵対したら一瞬で即死だろうね ――


「うわぁ、あの赤ん坊姿見せただけでボルちゃんにここまで言わせるって、転生者やばぁい」


 そんな言葉を聞きながら、俺は森を疾走する。

 ディアリオさんはきゃっきゃきゃっきゃ。すっごい楽しそうだ。

 赤ちゃんライフをエンジョイしていらっしゃる。


 そして窮屈なベビーベッド生活に飽き飽きしているからか森の中疾走していると凄く楽しそうだ。

 アレはなんだ、これはなんだと俺に聞きながら暴れウサギを乗りこなしていらっしゃる。

 うわっ、危ない、危うく陸上型バットフィッシュと正面衝突するところだった。

 あんなのと口付けとかしちまったら一生の傷になっちまうところだぜ。


 うおぉ!?

 唐突に突撃して来たウツボカズラのガチムチお兄さんがディアリオさんの魔法で跡形もなく吹き飛ぶ。

 想定外の敵まで用意していたようだ。

 なんで襲って来るのさ。ボルバーノスに言われてないのかい、俺ら襲うなって?

 まぁ襲ってくるなら反撃するだけだけども。


 あ、違ぇ、これ俺が速度出し過ぎて突撃してる形だわ。

 皆驚いた顔しながらディアリオさんに吹き飛ばされてく。

 ひゃっはー、ディアリオ様のお通りだぁ! ペンペン草すら生えねぇぜぇ!!


 ―― もっとだ! もっと速く! もっと速くッ!! ――


 うぉぉぉぉ、電光石火! アクセラレート! 行け、俺の身体よ!! 加速世界のその先へッ!!


 ―― レッドスピードフルスロットを覚えた! ――


 お、なんかスキル覚えた。

 ディアリオ先生、なんか覚えた。


 ―― うむ? 使ってみよ。とりあえず他のことはなにも考えず使うが良い。骨は拾ってやる ――


 え? ちょ、なんか不穏なんだけども?

 まぁいいや、えっとこれか?

 限界加速レッドスピードフルスロット:TP36    /肉体限界に挑戦する速度領域への切符。クールタイム20m。

 電光石火がTP12で速度を四倍に高めての連続攻撃。クールタイム4m。なのに比べるとかなりの上位互換スキルっぽい。


 でも、肉体限界に挑戦ってなんかすっげぇ不穏なんだけど。

 ディアリオ先生……あ、これ絶対使わないとダメなパターンだ。

 ええいままよ! スキル使用、レッドスピードフルスロットッ!! お、おぉ!? ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!?


 その瞬間、何か越えてはならない線を越えた。

 全身から軋みを鳴らしながら限界ぎりぎり、さらに加速する兎さん。

 邪魔な何もかもを撥ね飛ばし、一直線に駆け抜ける。


 これ、ディアリオ先生のバフがないと使えない。っつか使ったら自滅して死ぬスキルだ。

 周りの景色が認識した瞬間には既に遥か後方に存在しているという何が起こったか分からない状態。

 身体は常に前へと走り、ディアリオさんの張った防壁にぶち当たった何もかもが死滅する。

 壊れゆく肉体はディアリオさんにより常時回復が行われ、ただひたすらに走り続ける。

 音速の壁を越え、無数の空気の壁を粉砕し、マッハを越えたウサギさんが真空波を発生させながら駆け抜ける。

 木々が吹き飛び魔物も吹き飛び、赤ん坊が満面の笑みを浮かべる。

 ディアリオさんだけめっちゃ楽しんでました。


 そして……ボルバーノスの森が半壊した。

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― 新着の感想 ―
[一言] ボルバーノスカワイソス(笑) いやまぁゴブリン達けしかけてるとはいえ、翡翠装備とかは妖精の方が元凶だからなぁ とばっちりですな
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