うさぎさん、ウサギの奥の手は他人任せだった件
―― さて、それで兎君、君への加護に関してなんだけど…… ――
あ、そうっすよボルバーノスの旦那。幾ら俺の奥の手見たいからってゴブリンエンペラーは酷すぎません? しかも翡翠装備のキング居たし。
―― それに関しては僕は一切関知してないよ。ウサギの実力見たいからなんか適当に連れて来てって頼んだだけだし ――
と、視線をエリスエールに向けるボルバーノス。
全員の視線を向けられたエリスエールは即座に視線を逸らして私関係ありません、とワザとらしい口笛吹いて噎せていた。
噎せる姿がなんかおっさん臭い。でも綺麗なお姉さんだからむしろアリ、みたいな?
「ちょこっと過剰だったとか言いたいんでしょうけど結局全滅しちゃったからこれでも過小戦力だと思ったのだけれど」
やや居たたまれなくなったエリスエールはふんっと上から目線で恥ずかしそうにしながら告げる。
ツンデレさんか!? くぅ、なんてエロ可愛いんだお姉様。俺のうさしゃんが暴走しちまうぜ。
「兎はともかく俺らは死んでてもおかしくなかったんだが……」
「だって、ウサちゃんの底力見るなら、ほら、親しい人が死ぬくらいの方が本気出すっていうじゃない?」
アニメかなんかの見過ぎですかね?
宿敵よぉっ!? とか泣き崩れろってことかな? その場合はシュリックくんかガロワでいい?
二人がゾクッとしたらしく驚きながら周囲を見回していたけど俺、殺気も呪いも飛ばしてないよ?
しかし、加護貰うなら俺の奥の手を教えた方が良さそうだなぁ。
いや、別に隠すもんでもないし、いつも全力全霊なうさしゃんですから、奥の手ってのはただのお願い助けてディアリオ先生! なんだけどもね?
―― あー、ボルバーノスの旦那。俺の全力って今見せたので全部っすよ? ――
―― でも、何か隠してるよね? ――
―― まぁ、俺が余裕ぶってたのが疑惑だってならディアリオ先生が居るからでしょうね ――
ディアリオ? と小首を傾げるボルバーノスとエリスエール。
そのキョトンとした顔、めっちゃタイプですエリスお姉さん。襲っていいですか?
―― あれ? でも、どっかでディアリオ知ってるな……あ、そこのアーボ君に加護与えた奴! ――
あ、そう言えばボルバーノスの旦那も鑑定みたいなスキル持ってるのか。アーボのステ見たらディアリオ先生の加護見れるもんな。
「だれ?」
―― ほら、あの20倍の加護与えてる人 ――
「あー。確かに、その守護あるなら安心だわねー」
―― でも、ここには居ないでしょ? ――
ディアリオの旦那なら多分一瞬で助けに来れるかな。ねー先生、先生ーっ。用心棒的なディアリオ先生ーっ。
―― 誰が用心棒だ。全く。ボルバーノスとエリスエールだったな。全て見ているので説明は不要。ディアリオという者だ。一応兎と知り合った関係で彼の動向をたまに覗いている ――
え? 俺覗かれてんの!? 生活がモロバレ!? いやん、ディアリオ先生のえっち。
―― 阿呆か。そう思うなら見境なく女性を襲うことを躊躇したまえ。少々抑えが効かなすぎるのではないか? ――
ぐほぅ、ディアリオさんからまで注意されてしまった。
だってさぁ、俺兎ですもん。俺の状態見て下さいよ。常時発情っすよ。毎日毎日もんもんもんって奴ですよ。
そりゃメスが居れば襲うでしょ。動物的本能で。
―― それを理由にして好き勝手しているだけだろう。行動には責任が付きまとう物だ ――
耳に痛いお言葉で。まぁ、責任っつーかじいちゃんに追われてるっていうか。
多分、これからも被害者の親とか、彼氏とかが出て来て俺を討伐しに来るんだろうな。
でもこの世界では好き勝手するって決めたんだ。ウサギだからって自重せず被食者になったりなんかしてやらないってな。
と言う訳で、許してちょ。
―― よし、ギルティ ――
―― ギルティだねー ――
「ギルティーですわよ」
あれ? 皆さん揃って兎さん否定派?
いやん、味方がいなーいっ。
―― ところでディアリオさんや、あんたどんな存在? ――
―― うむ。この世界の神に転生して自由に生きてみろとこの世界に連れて来られた転生者といったところか。前世は魔神だった御蔭で魔力等はそのままでな。御蔭で赤子なのにそこの兎よりは強いよ ――
うん、ディアリオ先生には敵う気しねぇっすわ。多分敵対した瞬間、この世界の裏側からだって俺を消滅させる力を持ってるだろう。
あんたは俺の敵だぁっとか言った瞬間俺が弾け飛ぶのさ。って、恐っ!?
ムリムリ、ディアリオ先生に敵対とか無理だから。
―― さすがにそういうことは出来んと思……いや、あのスキルなら出来なくは……? うむ。魔木化の呪いならば…… ――
本気でヤベェ人だった!?
逆らうのは絶対に止めとこう。俺はまだ弾け飛びたくないのです。




