ボルバーノス、ウサギの実力6
一つ前にEX・ウサギさん被害者の会というただの襲われた女性リストを投稿してます。気が向きましたら、どうぞ。
「嬢ちゃん、今どういう状況だ!」
「私が当ってみてダメそうだったから攻守交代したのよ。アーボが攻撃、私が防衛……」
「防衛も妨害も出来てねェじゃねぇか。アーボ一人が闘ってるのと変わらんぞ?」
「うぐっ」
手痛い現実を突き付けられ思わず呻くクラウドバニー。
だが、それが事実なのだ。自分の実力はあまりにも弱い。
ソレを理解して縋る気持ちでガロワに尋ねる。
「どうにか、手伝えない?」
「はっ。嬢ちゃんはアタッカーは得意らしいがサポートはてんでダメだな」
確かに、今まで他人をサポートするようなことはしてこなかった。
とはいえ、ただ手伝うだけだ。一体何が違うというのだろう。
相手に攻撃を加えればいいのではないのか?
「できるならいろいろ教えてやりてぇが、今は時間が惜しい。嬢ちゃん、回り込んで敵が攻撃するタイミングで膝裏を狙ってくれ」
やるべきことが出来たのならクラウドバニーは迷わない。
その行動を行うことで何が起こるかは考えず、言われたことを的確にこなすことだけに注視する。
アーボの攻撃を必死にいなし続けるゴブリンキング。
攻撃のタイミングはまずないのだが、攻撃ではなくいなす時に動くタイミングであれば狙いやすい。
クラウドクラッシュを打ち込むだけの簡単な仕事だ。
そもそもゴブリンキングはこちらには注視してないのだ。
ゆえに、次のアーボの一撃をいなそうとしたゴブリンキング、その膝裏に黒き雲が激突。
放電が始まりパチリ、ゴブリンキングにとっては静電気が走った程度の一撃だ。
されど、一瞬の驚き、身体の硬直。
闘いの最中に起こればそれは致命的な隙となる。
アーボも気付いて神殺之槍を発動。
さらに巨人殺しに、掬い上げる一撃により黄金玉宝破壊が発動。
硬直した身体ではこれに反応出来ないゴブリンキング。
焦った顔がアーボを見る。
どこが顔かすら分からないでこぼこの黒いアボカド。そんな小型の魔物の一撃が、ゴブリンキングにぶち当たる。
刹那……消し飛んだ。
「へ?」
思わずクラウドバニーから間抜けな声が漏れる。
仕方ないと言えば仕方ない。
仕掛けようとしたガロワだって想定外過ぎて振り被った状態で止まっているし、周囲のゴブリンたちは消え去ったゴブリンキングがどこ行った? と思わず空を見上げてしまっている。
残念ながら空には何もなかった。
クラウドバニーも周囲を調べる。
しかし、ゴブリンキングはおろか、その装備全ても無くなっており、ゴブリンキングがそこに居たという痕跡全てが消え去ってしまっていたのである。
倒したアーボだけが万歳三唱をしており、だからこそガロワも既にゴブリンキングが居なくなったと確信できただけである。
「ま、まぁいい、これでゴブリンキングは撃破出来た。アーボはウサギのフォローを……いや、なんか必要なさそうだな」
「あの馬鹿、なんでこんな時まで遊んでんのよ!?」
ウサギに意識を向ければ、必死に矢を打つゴブリンエンペラーをお尻ペンペンしたりあっかんべーしたりと挑発しまくりながら転移、液状化、すり抜けを駆使しておちょくりまくっていた。
憤怒で咆哮すれば咆哮で返し、フェイントを混ぜても隙を見てロンギヌスを投げてくる。
ゴブリンエンペラーの嫌がることを全力でやっているウサギさんがいた。
「よし、アレは任せて残ったゴブリンを掃討するぞ」
「え、ええ。そうね」
「ったく、ゴブリンエンペラーなんざ災厄級のバケモンだぞ。存在してることだけでもS級冒険者総動員で全国動かして連合軍で当るべき案件だっつーのによ」
ウサギの動きを見ていれば余裕が滲みでているので負ける未来が想像出来ない。
なのでウサギは放置して味方の危険を排除することにしたガロワたち。
とはいえ、こちらもこちらでかなり優位に闘いを進めていたので、ガロワたちが加わるとゴブリンの群れが一気に瓦解する。
必死に女性を襲おうと迫るゴブリンたちだが、鉄壁の守りに加え的確に襲ってくるイチイバルの速射。
ワンパンな攻撃に的確な切り返し、人間達の防衛網を突破出来る戦力は無かったようだ。
徐々に削り取られ、もはやゴブリンも数える程になってしまっていた。
「っし、皆よく耐えた! あと少しだ」
ガロワが皆を鼓舞する。
皆も残りのゴブリンが既に数匹になっていることにようやく気付いたようで、終わりを見据えて最後の一踏ん張りだと気を張り直す。
「ゴブリン相手なら普通に闘えるのにっ、キングになるとお手上げだなんて……」
「まだまだ伸びシロはあるんだ。焦んじゃねぇぞ嬢ちゃん」
「分かってるけど……はぁ、この世界強い奴多過ぎでしょ」
思わず愚痴を零すクラウドバニー、その視線の先には、ゴブリンエンペラーと闘い続けているちっぽけなウサギがいるのだった。




