うさぎさん、VS、A級冒険者1
「まぁ、なんだ。命のやりとりする気はねぇが、テメェと闘やそれなりに実力と性格が分かるってもんだ。ちぃっと付き合えや。まだ見せてねぇもんがあんだろ?」
全部力見せろってか?
はぁ。こういう筋肉だるまはこれだから。
俺は熱血バトル系のウサギさんじゃねーんだぞ?
俺に対してカモンカモンと手招きする斧を肩にひっさげたおっさん。
獰猛な笑みを見せ、闘いたくてうずうずした顔になっている。
理由を後付けしただけの戦闘狂だなこれは。
まぁ、とりあえず様子見だ。
まずはかるぅく、アクセラレート!
走り出した俺を見て武器を構えるガロワ。
疾風怒濤!
さらに加速して注目を集める。
からの、咆哮!
「キィ―――――――――ッ!!」
「ぬぐぉっ!?」
びりびりと空気を震わせる一撃に、ガロワは必死に耐える。
うらぁっと気合で金縛りを弾き飛ばした。
これだから脳筋はっ。
「ぬははっ、やるじゃねーか。いい咆哮だ!」
と、楽しげに告げた瞬間だった。
ガロワは見た。
無防備に見た。
見てしまった。
ウサギの右手が左手に隠される。
なんだ? 思わず魅入った。
引き抜かれた右手、その親指が、無くなっていた。
「なっ!?」
電光石火、身体超強化、風圧操作、遅延時空、物質吸引、スピードアップ、死者への誓い、恋人への誓い、巨人殺し、人族特攻!
スキルを重ね掛けして走りだす。
一部は常時発動だから告げる必要無いんだけどねっ!
そしてお決まりの必殺攻撃。黄金玉宝破壊――――ッ!!
ガロワの真下に潜り込んだ俺は大ジャンプで思い切り飛び上がる。
自身に硬化を発動させ。テクニシャンによるクリティカルヒット。さらに不意の一撃による忍びの一撃が発動し……あ、やべぇ、今の俺、ヴォルパーティンガー状態だ。
二対の角がガロワの股間に襲いかかる。
「ぬおおぉわぁっ!!」と叫びながら飛び上がり身を捻るガロワ。ぎりぎりで斧が股間をガードした。
くっそ、必殺の一撃が破られた!? クロウだって倒したのに!
「あ、あっぶねぇ!? なんつーことして来やがる!? 男として殺す気か!」
ディアリオさんが回復してくれるから玉無しさんにはならないよ。だから、遠慮なく弾けて良いんだよ?
「ざけんなクソウサギッ!」
しかし、やっぱりA級冒険者共なると油断してない場合は対処されちまうか。
奇襲が避けられたので距離を取って警戒する。
ガロワもさすがにさっきまでのような油断はしてくれないらしい。
どんな攻撃が来るかワクワクしていたから速攻でカタ付けるつもりだったが、こりゃ本気で全力見せてやるしかないらしい。
なら、まずは魔法から、だな。
ファイアアローを作りだし、投げつける。
魔法系は中級までなら全属性使えるのだ。光やら闇は初級までだけど、いや、闇は中級まで出来るか。
光属性はまだ進化してないんだよ。余裕出来たしそろそろ連続進化したいんだけどなぁ。
「魔法も使えんのかよ!?」
次に氷弾、水、風、土、雷、光、闇、核熱系はヤバいのでとりあえず抜かしておく。
「お、おいおい、どんだけ……ぬおぉ!? 光が!?」
あ、しまった。それ神聖魔法のターンアンデッドだ。
光をもろに喰らったガロワ。思わず目を瞑ってしまったらしいが、魔法効果が終わると同時に自身の身体を確認する。
「何だ今の?」
ターンアンデッドですが、なにか?
「なんで俺に使ってんだよ!? 俺はアンデッドじゃねーぞ!?」
なんとなく? だって全力見せろっつったじゃーん。
「効果ねぇ奴はいいんだよ!? ちょっとあせっちまったじゃねぇか!?」
えー。我儘な。ちなみに即死攻撃いくつか持ってるけど、使った方が良い?
「それも止めとこうか」
ちょっと青い顔で告げるガロワ。やっぱ使わない方が良かった?
ちなみにGBCの時にいっこ使ってるんだよ。忍びの一撃。あれ、通常攻撃を即死攻撃にするスキルだからな。
まぁ、知らぬが仏ともいうし、わざわざ告げる必要はないか。
んじゃぁ、これ、行っとくか。
全ての魔法スキルを一斉発動。全属性ディレイ。
ガロワはソレを見て「おい、嘘だろ?」 と顔を青くする。
「ぬおぉぉぉぉっ!?」
チュンチュンチュンと無数の魔法弾が飛び交う。
ぬはははは、これぞ王の蔵魔法再現であーる。
伝説級の武器もないし、全属性魔法だから魔法無効能力者相手には効かないけど、ついに再現可能になったのだ。
他の属性があるかどうかはまだ分からないけど、核熱とかあったわけだし、他の属性とかありそうだよな。あと回復魔法そろそろほしいな。
補助魔法はあるのに回復だけ覚えないんだよ。肉体再生はできるのに。




