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リルハ、眠る兎をもふもふ

 兎さんが眠ってしまった。

 私が座って膝においで、って誘ったらホントに来てくれて驚いた。

 どうやら人に慣れてるみたいでちょこんと膝の上に収まった兎さんはそのまま眼を閉じ進化し始める。


 どこかで飼われていた兎だろうか?

 なんにせよ寄生虫やダニに感染している様子も無く、ふさふさの毛触りが手でなでると凄くいい。

 もっふもふなのだ。

 顔を近づけ匂いを嗅いでみると、お日さまの匂いが香ってくる。


 思わずにやけてしまう自分の頬を必死に引きしめ、後ろの木に背持たれる。

 直ぐ近くではエフィカさんが周囲に気を配って魔物が来ないかを探っていた。

 しばし周囲を索敵し、危険は無いと確信したようで私の隣へとやって来た。


「その、すまなかった」


「え? なんのことですか?」


 不意に謝られても困る。兎の背中を撫でながら、私は小首を傾げるしかなかった。

 謝られるべき事柄が全く身に覚えがないのだから。


「ローバス様とエルレオのことだ」


「ああ。あの二人が私をノロマって言ってたことですか? 別に気にしてません」


 冒険者というのは大体ああいう手合いが多いのだ。

 特に低レベル冒険者は荷物持ちのことを卑下している奴が多い。

 でも、そんなことを気にしていたら荷物持ちなど出来はしないのだ。


 そもそも闘う力がないから荷物持ちをしているのだから卑下する冒険者はある意味正しい。

 ちょこまかと戦場を逃げまどいながら死体からアイテムをはぎ取っていく。

 特に倒された魔物は一分でアイテム化してしまうので、ドロップアイテム以外のアイテムを剥ぎ取るのは時間との勝負。

 だからこそ荷物持ちたちの需要がある訳だが、闘っている冒険者からすれば目端をちょこまかと動く私達は目障りでしかないだろう。

 それでも荷物持ちが居るだけで自身の荷物が減るしドロップアイテム以外のアイテムを入手できるのだからパーティーに一人は入れておきたいと思うのだ。


 御蔭で荷物持ちはまさにパーティーのお荷物扱いされていて、荷物持ち仲間からも扱いの悪い冒険者の噂がちらほらと聞こえる。

 特に荷物持ちを性の対象としか見ない冒険者などは早々に干され誰も荷物持ちをしなくなるのだ。荷物持ちの横のつながりは結構強固なのである。

 今回のパーティーも扱いは最悪など告げるつもりだったのだが、まさかその前に壊滅してしまうとは思わなかった。


 わざわざノロマのフリをして付いて来たのだが、相手のパーティー状況を見定める必要すらなかったようだ。

 といっても、動作がノロいのは私自信自覚しているけれど。

 それでもやる気がある時はもっとちょこまか動けるのです。


「あ、兎さん起きた」


 一時間程経っただろうか?

 そろそろ足も痺れて来たと思っていると、兎さんが覚醒した。

 どうなったのか調べようか、と思った次の瞬間、また眠ってしまう。光り輝く兎さん、どうやらまた進化を始めたようだ。

 えっと、さっき進化したばっかりだよね?


「あれ? 兎さんまた寝ちゃいましたよ」


「兎だもの、ミミックハウス討伐の経験値が多かったんじゃないか?」


 ああ、そういうことか。

 余剰経験値が大量だったから即座にレベルアップして再進化してるのか。

 凄いなぁ、普通こんな魔物の進化を見ることも一生に一度あるかないかなんだよ?

 まさか連続進化が見れるとは、しかもこんな間近で。


「ということはしばらく寝て起きてを繰り返しそうですね」


 足、そろそろヤバいかも。

 でも、兎さんもふもふ。可愛い。癒される。

 私今、最高にツイてるのかも。

 白いウサギさんだし、幸運の使いかな?

 よく白い動物を見ると幸せになれるっていうし。あ、ウサギさんは魔物だっけ?


「折角だからそろそろ開拓村に向かいましょ。あまり長居すると魔物に襲われかねないし」


「あ、そうですね。すいません長らく休憩してしまいまして」


「いや、大丈夫だ。しかし、二人がいなくなるとはな。先に死ぬのは私だと思っていたんだが……」


「言ってはなんですが酷い人たちでしたし居なくなって清々するのでは?」


「すまんな。あんな奴らでも私にとっては命の恩人なんだ。確かに酷い扱いだったが、奴隷商の所に居るよりはマシだった」


「え? 奴隷ってそんなに扱い悪いんですか?」


「ああ。私は戦闘奴隷だったからまだマシだが、性奴隷でしか使い道がない女の末路は悲惨だ。それでもまだ性奴隷としてすら使えない女の扱いよりはマシだがな」


「最下層の奴隷って、どんなひどい扱いに?」


「炭鉱の労働、あるいはアリーナ用の魔物の苗床、最悪なのは貴族が飼っている魔物の餌だな。もはや生還すら不可能で死が確定している」


「はわわわわ……」


 生きているなら明日は我が身の奴隷身分、街で見かけたら少しは優しくしてあげよう。そう思う私だった。

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