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カルセット、男子会2

 カルセットは困っていた。

 ウサギについては誤解が生じているらしい。

 女好きのエロウサギなのだが、先生とやらを救った恩人と思われているようなのだ。


 とはいえ指摘すべきかと言えばそれはそれで困る。

 何しろその指摘をしないようにとウサギばかりか女性陣までが口を閉ざしているのだ。

 なのにカルセットがばらしてしまうのはいいのか、いや、マズいだろう。それこそウサギに襲われかねない気がする。


「さーって、風呂入ってくっかな」


「おー、お供するデース」


「うぜぇ、付いてくんなよ」


「ハッハー照れるな照れるな」


 福田が一緒に入ると言いだしたジョージに嫌な顔をするが、ジョージは気にせず彼の肩を叩きながら二人で風呂へと向かっていった。


「ふむ、風呂か。久々にひとっぷろと行ってみるか。最近桶ばっかりだったからな」


「場所分かります? ご案内しますよ」


 そして福田達の後を追うようにシュリックとヘンドリックが部屋を出て行く。

 ガドウィンは仕事に戻る、と立ち去ってしまい、部屋にはカルセットとガロワだけが残った。


「で、なんだ?」


「へ?」


 二人きりになると、ガロワが唐突に聞いて来た。

 何を聞かれたのか理解できず、小首を傾げるカルセット。


「随分と困惑した顔してたじゃねぇか。何か言いたいことがあるんじゃねぇのか?」


「それは……」


「そもそもあのウサギ、ライゼン爺さんが追ってた奴だろ。なぁんかうさんくせぇんだよなぁ」


「あぅ……」


 ぎろり、とガロワに睨まれ、思わず竦み上がるカルセット。

 さすがに歴戦の冒険者の眼光には耐えきれないようで、隠していたことをぽつりぽつりと話していく。

 曰く、ウサギはエロウサギであること。女性陣はほぼ被害を受けていること。

 そして彼らの話から、件の先生もまた、襲われている可能性があることなど、結局知っている事を洗いざらい話してしまっていた。


「おいおい、冗談だろ?」


 全ての話を聞き終えたガロワは、想定していた話を越え過ぎている事実に焦りを覚えていた。

 ただのウサギ? 冗談ではなかった。

 ライゼンが宿敵みたいな言い方をしていたウサギだから何かやらかしてるだろうとは思っていたが、まさか女性陣を襲ったばかりか、王族も気にせず襲い、既に貴族位を持った存在となっているという。


 さらにライゼンと激闘を行い生還しているのだから戦闘力、最悪逃げ足はかなりのモノだと思われる。

 だから、思うのだ。これ、野放しにしていい生物じゃないだろ、と。


「ウサギは今、どこに居るんだっけか?」


「中庭だそうですけど、多分ディアリオさんと連絡取ってるんじゃないですかね?」


「嫌な予感がしやがる。ちょっと確認に行くか」


「あ、でしたら僕もお供します」


 部屋に独り残るのも嫌だし、今から風呂に向かうのもタイミングがずれ過ぎている。

 第一カルセットもウサギが暴走していないかどうかは気になる所だ。

 なのでガロワと二人、中庭に向かうことにした。


 部屋を出てしばらく歩くと、丁度風呂から上がって来たらしい女性陣とはち合わせる。

 どこ行くの? と天音が聞いて来たので、素直に答える。

 ウサギの様子を見ると知った女性陣が全員付いてくることになった。


 ガロワがなぜこうなった? と頭を抱えたが、カルセットもまさか全員が付いてくるとは思ってなかったのだ。こうなると分かっていればちょっと夜風に当たりに。などと言葉を濁していた。

 結局大人数となったメンバーは、カルセットとガロワに天音、美与、咲耶、エフィカ、リルハ、エペ、リベラローズ、イリアーネ、ペルセアを加えたメンバーとなり、中庭への移動途中で見付かったエスティカーナまで加わって、中庭へと向かうことになったのである。


 ガロワはせっかくなので天音たちにカルセットから聞いた話を尋ね、詳細を把握しておく。

 ウサギの性格や強さを知るにも、彼の行動を知っておくにこしたことは無いのだ。

 もしも処置なしと思えるような極悪ウサギであったなら、ガロワ自身の手で殺すことも視野に入れねばならないからだ。


 彼も上級冒険者、他の下位冒険者の危険に繋がる魔物がいるのなら、排除するのもその使命である。

 とはいえ、その下級冒険者の一人に、否、一匹として数えられているのがうさしゃん本人であるのだが、そこはきっちり魔物として区別するつもりである。


 カルセットが吐いたことに一瞬驚いた女性陣だったが、ガロワだけなら問題は無いか、と結論付け、天音が代表して答えることになった。

 道すがらウサギの悪行が暴露されて行く。

 話を聞く毎に唸るガロワ。

 ウサギの悪人さに暗殺すべきだと感情が傾いて行く。

 そして、中庭に付いた彼は、あまりの光景を見せつけられ、その場について来たメンバー全員とともに、口を開けて魅入ってしまうのだった。


 そう、そこでは正義と悪の決戦が行われていたのである。

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