うさぎさん、正義と悪1
―― ふむ。転生者を転生させない方法、か ――
俺としてはあってほしくないとは思うんだけど必要っちゃ必要なんだよディアリオさん。
俺が死んだ時に記憶持って別の何かに転生ってのは、むしろありなんだよ。アリ寄りのアリなんだよ。でも、相田たちが何度も転生して行くのは、ちょっとマズいっしょ。
―― 確かに、一から転生ならともかく、転生前の能力を引き継ぎとなると、我をも凌ぐ何者かになる可能性はゼロではないだろうな ――
だっしょ。絶対アウトな感じになるし、邪龍転生とかしちゃったら俺でも勝てるかわかんないんっすよ。しかも倒すたびに強くなるとかやってらんねーっす。
―― 確かにその通りだが、神が何の保証もなく転生チートを行うとは思えんが。もしかすれば転生の際に何かしらのペナルティがあるのかもしれんぞ? ――
記憶やら何かが少しずつ引き継がれなくなる、とか?
―― そうだな。引き継ぎ率が100%とは限らんだろう。何かしらのデメリットがなければ死んだ者勝ちになってしまう。我はおそらくだが、死ねば死ぬほどこの世界に縛られて行くのではないかと思っている ――
と、いいますと?
―― 何度も死んで強くなることは出来るが、徐々に世界に馴染んで行くことで、記憶が曖昧になっていく、とか ――
ありそうだ。ここの神クソ野郎だしな。
―― 老人の姿を取っていた筈だが、クソ野郎、か。また知らない言葉だが、意味はなんとなくわかるな ――
あ、やべぇ、ディアリオさんにいけない言葉教えちまった。
口が悪くなるから覚えなくて良いんすよ、ソレ。
―― しかし、加護か。我も出来んだろうか? どれ……あ、できた ――
マジか!?
―― 試しにそこのアーボとやらに加護をやってみたが、出来たぞ ――
アーボに!?
いや、確かに一人になるためにアーボ連れ回して来ることで二人で遊んでるように思わせるために連れて来たのである。つまり、皆の目を欺くための道具でしかなかったりする。
そのアーボに、ディアリオさんの加護が付いた、だとぉ!?
―― ふむ、力量差のある相手なら加護を付けることが可能らし……何をしている? ――
ふしゃーっと嫉妬のウサギがアーボに襲いかかっていた。
口が無いので両手で目一杯開くといった嫌がらせが出来ない。
仕方ないので蹴り転がして雪達磨造るみたいにごろごろごろーっと強制移動。
やめろーっとじたばたするアーボだったが、丸っこい体なのでされるがままだ。
ウサギに転がされるアボカド君である。
なんかこれはこれで楽しい。
―― むぅ、話を聞いてないなウサギめ。しかし、それ、ちょっとやってもいいか? ――
なんか凄く楽しそうに見えたらしい、ディアリオさんが自分もやってみたい、とうずうずしていらっしゃる。
魔神時代は一度もこういうこと出来なかったらしいからやってみたくてしょうがないらしい。
人間らしいこと一つもしたことないから……って、こんなもん人間の赤ちゃんがする訳ねぇだろがいっ。
フシャーっと思いっきり力を入れてアーボを転がす。
おっと勢い付け過ぎたか。
俺の傍から転がってしまったので拾いに向かおうとした俺、ぞくりと嫌な予感がして振り向いた。
女が一人、立っていた。
おお、ここからだとパンツが丸見え……って、うおぉ!?
あっぶねぇ!?
思わずパンツに見とれていたら足が持ち上げられ、俺向けて一気に降ろされた。
危うく頭蓋骨かち割られるところだった。
瞬間移動でぎりぎり避けたのだ。このスキル覚えてなかったら死んでたぞ今の!?
誰だこの野郎、俺を殺そうなんてウサギさんハッスルしちゃうぞコルァ……って、げぇ!?
俺を殺そうとした人物を見て、思わずうげっとしてしまう俺。
そこに居たのは奴だった。
雲浦兎月、またの名を正義の味方クラウドバニーがそこに居た。
蔑んだ目で俺を見降ろし、まさに虫を踏み潰すように俺を潰そうとしたのである。
何しやがるっとか言った方が良いのだろうか? いや、こいつが俺を殺そうとするのは当然だろうな。畜生、やっぱ見逃したりする気は無いか。
「クラウド装着……」
変身する気か!?
クソ、こいつやる気まんまんじゃねぇか。
暗い表情で決意したように告げるクラウドバニー。
どうやら何も会話する気は無いらしい。
―― テメェどういうつもりだ! ――
「煩いっ。改造人間は見付け次第倒す。それだけよッ」
聞く耳持たず。変身を終えたクラウドバニーが雲に飛び乗り武器を構える。
やるしかないらしい。
面倒だが、いいだろう。ライゼンじいちゃん戦の肩慣らしだ。
ただやられるだけの怪人等と思うなよ。今は怪人じゃなく魔物のウサギさんだからなっ!
ぶっ倒したら襲ってくれるわ!




