うさぎさん、正体暴露
「あ、それ磁石寺君」
俺が自己紹介どうしようかと思っていると、さっそく美与が暴露した。
おい、お前天音のこと以外は頭スッカスカか!?
遠慮なく暴露しやがったなこいつ!
「磁石寺って……え? まさか死んだクラスメイトの!?」
仕方ない、とりあえずよっすと手を挙げておく。
「じ、磁石寺君……だったの?」
そして皆以上に驚いているのが東雲咲耶。俺が前に襲ってしまった先生だ。
つまり、先生は自分を襲った相手が俺だと知ってしまったのである。
困ったような顔で頬を染めた咲耶、皆に見えないように顔をそむける。
あ、エペが気付いた。
とりあえずエペだけに念話して言わないように告げる。俺の第二の逃走劇が始まっちまうぞ。
ここにはヘンドリック君がいるんだからな!
お爺ちゃんの猛攻がようやく止んだのに新たな刺客とか勘弁してくれ。
とはいえ、天音たちには既に先生襲った事告げてるんだよなぁ。ヘンドリック君に追われかねないから言わないでとは言ったけど、美与があっぱらぱー過ぎて不安だ。
こいつ天音のことしか頭にないから他のことについて考える余分な頭脳が無いらしい。
「磁石寺……怪人、マグネス・コピオッ!!」
がばり、唐突に立ち上がったのは部屋の片隅で三角座りで淀んでいた正義の味方、ようするに雲浦兎月だ。
今まで沈んでいた表情はどこかへ捨て去ったようで。憤怒の顔でこちらにやってくる。
どすどすと音が聞こえそうな歩き方で、肩を怒らせやってきた兎月は、俺をギロリと睨みつける。
エスティカーナの頭の上に居るからちょうどエスティカーナが兎月に睨まれる状態になっていて泣きそうになっている。可哀想に。
おい、あんまり睨んでやるなよ。子供だぞ。泣いちゃうぞ!?
「あんたっ、死んだんじゃなかったの!」
―― ああ、殺されたよ。ゆえにこんな姿で転生だ。まさかウサギ相手に怪人だからとかいちゃもん付ける訳じゃないよな? ――
「それは……」
思わず鼻じろむ。
このウサギ生では改造は受けてないので俺は秘密結社に居る存在ではないということになる。
まぁ、普通にマグネス・コピオに変身できるけどな。
「くっ、正義の味方としてあんたは認めない。必ず尻尾を掴んでやるわ。あんたが悪人だって暴いてやるッ」
ふっ、悪人な訳ないだろう。だって俺、人じゃないですからー。残念!
人でなしでーす。
あ、ちょっと、皆ジト目しないで。
確かにこいつ悪人だな、って顔を向けないで。
「と、とりあえず席につきなよ。話をするにも立ったままって訳にもいかないだろ」
机と椅子がある会議室だ。
こういう場所の会議室はなっがい長方形の机に無数の椅子があって上座に総大将とかギルド長が座るようになっていて、他のメンバーは左右にある椅子に座ることになる。
人数も大人数が会議出来るように造られているせいで長方形の長さがヤバいことになっている。
たぶんだけど、最後尾の人たちは会議に参加とか出来ないんじゃないか?
多分成り行きを聞き届けるだけで終わると思うぞ。
椅子はパイプ椅子みたいな木製の椅子だった御蔭で移動できるようで、俺たちは空いたスペースに円状に椅子を並べ、そちらで円陣を組むように座ることにしたのだった。
ヘンドリックが代表をやるらしい。なので右から東雲咲耶、雲浦兎月、ガロワ、ユーリンデ、チェルロ、エスティカーナ、リベラローズ、イリアーネ、カルセット、ペルセア、桜坂美与、夜霧天音、シュリック、ジョージ=W=ロビンソン、福田孝明の順に座る。
俺? エスティカーナの頭の上である。
話し合いになるからって机の上におろされたけど。すぐに乗ってやったわ。
しっかし、こうして見ると結構人数いるな。
壁の華になってるベアーさんと亀さんも気になるけど、どうやら人間たちの話し合いが一段落つくまでは無言で待っているつもりらしい。
だって俺が友好的に語りかけても完全無視なんだもん。
結構必死に自己アピールしたのに、全く反応しないでやんの。
まぁ守護者らしいし、あんまり茶化して嫌われたくないのでウザったいウサギさんにはならないでおいた。
まずは美与と天音がどうしてミリキアにいったのかを話し合うらしい。
天音がぽつぽつと語りだす。
美与もぶっちゃけて話しだす。
うわぁ、天音への愛がてんこ盛りだ。
正直引くわ。
彼女の闇が一気に噴き出したようで。聞いてる皆が冷や汗掻きながら引いている。
理由聞くんじゃなかったって顔してるぜ。
要約すると天音が愛おし過ぎたから奴隷にして一生可愛がるつもりだった。ってことらしいけど。生々しすぎるわっ。
「遅れましたっ」
「ウサギさん居るって聞いて、昨日寝れなくて……」
寝坊した二人がやってくる。
あれ? エフィカとリルハじゃん。
なんで二人までここに?
「やっぱり! うさしゃん!」
エスティカーナの元へと向かったリルハが俺を抱き上げる。
頭から重みが消えたエスティカーナがあぁっと泣きそうな顔をしていた。




