うさぎさん、いらない景品
「うぅ、まだ違和感が……」
闘いは終わった。
あまりにも呆気ない勝利である。
相手が油断したからってのもあるけど、容赦ない急所狙いが功を奏した感じだ。
遠慮など無かったし、躊躇もなかった。やったりました。
「い、今のは油断しただけだ。この僕がウサギなどに負ける訳が……」
「あらあら、ダーリンに負けたくせに言い訳? 見苦しくなぁい?」
「ぐぅ、し、しかし、あれは……」
―― 野性のウサギと出会った場合、同じ状況になればあんたは死んでた。その時も言い訳か? ――
「うぐっ!?」
「確かに今のでは実力を計る以前の問題だ。しかし、冒険中に同じ状況に陥った場合Bランク冒険者といえどもウサギに負ける可能性があるという証明でもあるな」
「ちょ、ギルド長!?」
「君が優秀で冒険者達にも気配り出来る存在だというのは分かっているさ。憎まれ口は直した方がいいけどな。だが事実は事実。君の負けだ」
「うぅ。ウサギに、負けたなどと、これから一体どうすれば……」
―― 評判を気にしてのことなら案ずるな。同じ戦法でクロウも撃破済みだ。まぁタマタマは破壊できんかったが ――
「え? アレ本当だったのかい!?」
いや、ギルド長、クロウには勝ったと言っただろうが。
「じゃ、じゃあ……」
―― S級冒険者と同じ方法で敗北したのだ。それについて負けたからどうこうと言われる必要はあるまい。それに、知っているのはそこのギルド長だし、我々が言いふらす必要性は無い ――
「おぉ……」
絶望しかけていたシュリックが起死回生を見付けたみたいな顔をする。
負けた事実は事実なんだけどね?
その辺りはもう気にしてないらしい。
「それじゃ、私達は?」
「うむ、文句はあるがウサギが勝ったので冒険者として登録証を発行しよう」
「しかし……やっぱり、本気出せば……」
おお、シュリック君やるのかね? ウサギさんはいつでも再戦おっけーよ?
「そ、そうだ。僕がウサギに負けた、なんてことを君たちが吹聴しないように、いや、そこの新人が直ぐに死なないように見守る冒険者が必要だろう、うん、必要だ。仕方ないから僕がしばらく同行してやろうじゃないか!」
は?
いや、いらんけど?
なんで同行してこようとしてんのさ? しかも髪掻き上げて仕方ないなァとか言いながらついてくんなっ!?
ナルシーさんお断りだぞクラァ!
そして、シュリックに勝利したらシュリックといういらない景品が付いて来たのであった。マジいらねぇ。
「とりあえず、戻ろうか?」
ギルド長の提案で俺たちは試合場を後にする。
戻ってきた受付カウンターで全員分のギルドカードを受け取り、ギルドを後にする。
うん、一応初依頼ってことでコロアへの護衛依頼受けといたよ。
まぁ、索敵は大丈夫だし、お爺ちゃん並みに危険な生物でも出て来ない限りは俺が対処できるだろうし、最悪ディアリオさんにお願いするから安全だ。
―― 私は君の専属用心棒ではないのだが? ――
いやん、頼りにしてますぜダンナ。
―― シナを作るな気持ち悪い。余程の事があれば手伝うくらいはしてやろう。こちらも赤子生活が大変なのだ ――
大変って寝て泣いて食事するだけだろ?
―― 親に笑ってやったり愚痴を聞かされたり、髭をじょりじょりと、アレは地味に痛いな ――
真顔で痛いのよ髭が。とか言っちゃえばいいんじゃない?
―― 父が本気で落ち込むので止めておくよ。そのくらいは人として生まれ落ちたことのデメリットと受け取っておこう ――
しょぼいデメリットですね。いや、おっさんの髭すりすりは地味に痛いのわかるけども、ウサギさんもたまに抱き上げられてやられるんだよ。あれは紙ヤスリで頬削られてる感じで地味に痛いのだ。もはや拷問だと思う。
でも相手のおっさんたちもウサギが可愛いからやってるんであって悪気はないはずなのだ。あまり無碍にも出来ないだろう。
しかし、なんか面倒なことになったなぁ。
シュリック君が無理矢理仲間になっちまったし。
まぁレベル的にはBランク冒険者だから戦力にはなるんだけど、ウチのリベラローズとペルセアとは犬猿の仲みたいな感じ……
「何で付いてきますの!?」
「別にいいじゃないか。見届け役さ。Bランクの僕が居るんだ、どんな危険な状況でも助けてやるさ、なんたって僕がいるんだからね。君みたいな雑魚でも見捨てはしないよ」
「きぃぃっ! 誰が雑魚よ!」
ちなみに、リベラローズ、推定30代。シュリック君推定10代、年食ってても10代後半かな。
いい大人の癖にリベラローズは突っかかってるんだよなぁ。
そしてソレを上から目線で見下しているナルシー系キザ男。
ろくな大人たちじゃないな。
ペルセア、こいつ等見習っちゃダメだからな。
美与、天音、ペルセアをよろしく。リベラローズみたいにしないようにね?
「了解。任せなさい、立派な天音好きに変えてあげるわ」
それもやめいっ。




