うさぎさん、唸れ伝家の宝刀GBC
遅れてやってきたミリキアギルド長がようやく到着。
見届け人が居ないと始められないってキザ男君が言うから待ってたんだよ。
俺側のメンバーは天音、美与、エペ、ユーリンデ、チェルロ、リベラローズ、イリアーネ、ペルセア、カルセット、ちゃんと全員が見学に来ている。
天音はアーボを抱きしめており、その天音をしっかと抱きしめている美与。
あいつらホント仲いいな。あんなことあったのになんでそんなベタベタ出来んだろう?
チェルロはユーリンデの斜め後ろにメイド服姿で佇んでいる。
彼女はもう立派なメイドさんだな。ユーリンデ専用メイドが板について来たらしい。
リベラローズとペルセアがなんかシュリックだっけ? に罵声を浴びせ続けている。
呆れた顔のシュリック君だが、キザったらしいのでなんかいらつくから撃破確定だ。
ぶっ倒してやろう。
「待たせた。ちょっと立てこんでてね」
「おいおい、万年暇なギルドの癖にどうやったら立て込むんだよ」
大方俺のスキルとか見て、アレ、このウサギおかしくね? とか受付嬢と話し合ってたんだろ。あのお姉さんだいぶ黒いからな。
ありゃヘタに近づくと手足のように利用されるヤバい人だ。
俺だって近づき過ぎればいつの間にか高難易度依頼こなさせられて帰ってきたら頭撫でてえらいねーって言われるんだ。
それだけで次も頑張って撫でて貰おう。とか思うように洗脳されちまうんだぜ。恐ろしい受付嬢だよ。
「さて、今回の模擬戦はウサギの実力確認だ。シュリックはBランクハンターなのでウサギ君は勝つ必要はない。そこの新人二人を連れ歩いて外で魔物退治をしても問題ない実力だと分かればそれでいい」
―― 別に、倒してしまっても構わんのだろう? ――
ふっ、一度言ってみたかった名台詞、ついに言ってやったぜ。
出来れば背中越しに言いたかったけどな、ウサギさんじゃぁカッコ付かないよ。
「言うじゃないかウサギ君。君のやる気はかうよ。気骨はなかなかだ。まぁ僕の胸を借りる気持でくるがいいさ」
あ、ギルド長がシュリック君に見えないようにして南無ーしてる。
こりゃ俺が勝つ可能性も視野に入れてやがるな。
遠慮はいらんらしい。
「ではルールを説明する。私が止め、と告げるか、相手を気絶させれば終了だ。当然だが試合だから殺害は無し。勢い余って殺すことのないように」
「了解」
いや、シュリック君、これ俺に対して股潜りとかはしないでね。って意味合いで告げたんであって君が俺を殺すとかまず無理だから。
君が全力のライゼンじいちゃん並に強いなら負けるけど、多分それは無理だろうし。
「では試合を始める。双方用意は良いかい?」
「何時でもどうぞ」
あの野郎、構えすら取らずにつったったまま俺と闘う気らしい。
下に見過ぎじゃないか? さすがにソレだと俺以外の相手でも足元掬われるんじゃね?
まぁ、折角だし世の中って奴を教えてあげよう。
「では、試合、開始!」
脱兎!
接近のために一気に加速する。
おおっと驚くシュリック。
まさか加速するくらい出来ないとでも思ったか?
「なかなか速いね!」
ようやく剣の柄を握ろうとするシュリック、はい、ここで親指消えまーすっ!
「なぁっ!? 親指が消えた!?」
アクレラレート、死者への誓い、風圧操作、物質吸引、遅延時空、電光石火!
「っ!? はや……」
大ジャンプ、からの……黄金玉宝破壊!!
「しま……はぎょっ!?」
ウサギさんのヘッドバットが急所に直撃。
うぅ、なんか頭に変な感触があったぞ、潰したか?
下半身の防御力が紙だなこいつ。防具装備しとけよ。ここ重要だぞ?
巨人殺しと人族特攻まで付いたせいでクリティカルヒットしてしまったようだ。
一撃必殺、俺がぴょいんとバックステップすると、
股間を押さえながら崩れ落ちたシュリック君が泡吹いて気絶していた。
うん、やり過ぎたらしい。
「ちょ、やり過ぎだよウサギさんっ!?」
カルセットがなぜか自身の股間を押さえながら抗議して来る。
というか、ギルド長もかよ、なんか文句あんの? え? 男としてそこは狙っちゃダメ?
知らねぇよ、野性舐めんな。敵のタマぁ取るもんさ。
「あの、シュリックさん大丈夫ですか?」
恐る恐る。シュリックの股間を触るカルセット、やっぱりそっちの趣味が?
しかし、顔は物凄い真っ青だ。
「つ、潰れてます、完全に……」
どうしよう、と恐れながらギルド長に視線を向ける。
ギルド長はさすがに俺には無理だ、と視線を逸らした。
責任を逃れるつもりらしい。
確かに、流石にこのままだと寝覚めも悪いか。
仕方ないな、ディアリオ先生、お願いしやす。
―― そこで私に頼むのはどうかと思うのだが、まぁ可哀想だから助けておくがな? ――
シュリック君のデリケートな場所はディアリオ先生により完治した。
だから俺に罪は無い。
勝利した、それだけのことである。




