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桃瀬、康弘救出作戦

「康弘さん!」


 地下牢へと降りた瞬間、安全すら確認せずにシエナさんが走ってしまう。

 中に牢番がいたらどうする気だろうか?

 桃瀬はそんな事を思いながら、先程倒した牢番を思い浮かべる。


 鍵を持っていたから牢番だろう。

 何故あんな場所に居たのかはわからな……うっ、くさっ!?

 牢屋ってこんなに臭いところなの!?


 思わず後ろを見ると、一緒に来ていたメンバー全員が鼻を摘まんでいる。

 鼻を摘まむけど臭いが酷い。目から涙が出てくる辛さだ。

 カラフサのリリーレンチームは陽動を買って出てくれたけど、むしろそっちの方が良かった気さえしてくる。私も一緒に陽動に向かえば良かった、と今更後悔する桃瀬。


「シエナさん、急い……キャァァ!? なんで裸なの!?」


 こんな臭いところ早く出よう。と、階段を下りた瞬間シエナに告げようとして、炎に包まれた太った男を見る。見てしまう。全裸の不細工デブが立ち上がってシエナに振り向いたところを。

 きゃーとかいいながらシエナが普通に両手を開いて顔を隠しているのだが、普通に見てしまっている気がする。


 桃瀬たちとしても目を瞑りたかったのだが、さすがに敵地でそんな事はできなかった。

 ゆえにロアが目を閉じて闇炎弾を放った以外皆が仕方なく康弘を見ながら行動を続ける。

 桃瀬はシエナに鍵を渡し、皆で敵を索敵した後、安全を確保してすぐさま地下から脱出。

 シエナにさっさと出て来てね。あと田代君、下半身隠してから来てね。

 とだけ言い残す。


 しかし聞いてくれていただろうか?

 牢屋の鍵を解錠したシエナはすぐさま康弘に抱き付き、康弘はそれに気付いて慌てて闇炎纏いを解除。驚きながらも抱き合っていた。

 あの王女様、もしかして本気で田代君を好きなのだろうか?

 そんな疑問が脳裏を掠めたが、本人同士が問題無いならいいか、と桃瀬は放置することにした。


 地下から脱出し、敵影を探しながら二人を待つ。

 幾らもしないうちに、康弘が脱出して来た。

 シエナが抱きついたままなので適当な布を下半身に巻き付けやってきたのだ。

 見苦しくはあるが、マシになった方なのでそのまま脱走に移る。


「あ、あの、高藤さんたち、僕なんかのためにありがとうございます」


「気にしないで。私達はシエナさんの依頼を受けただけよ。それに、勇者として召喚したのに牢屋行きなんて酷いじゃない。脱走手伝うに決まってるでしょ」


「いろいろ聞いたぞ田代、主、なかなかやりおるではないか」


「ちょっと見直したネ」


「ほら、皆、くっちゃべってないで急いで!」


「右から足音複数。左に抜けましょ!」


 稲葉と西瓜に促され、皆で左の通路を駆ける。


「いたぞ! 脱走だ!」


「あー、バレた」


「待て、なんでシエナ王女があそこに居るんだ!? 魔族に囚われた筈では?」


「わ、私のこともバレた!?」


「とにかく走って!」


「ふはははは、我が暗黒の身柱が火を噴くぞ! ダークフレイムウォール!」


 通路を遮るように黒き炎の壁が兵士達の行く手を阻む。


「ナイスロア!」


「郁乃さんが遅れ始めてる、涙亞さんお願い」


「アイアイ、ワタシに任せるネ」


 体力のない郁乃を背負い、涙亞が走るのを再開する。

 城内を抜け、ダリス達に分かるよう、上空にロアが闇炎弾を投げる。

 そのまま王族しか知らない抜け道を抜けて城外へ。

 ロスタリスの街を離れた後は近くの街道でダリスたちと合流する。


「よぅ、随分鮮やかに行ったみたいだねぇ」


「ええ。正直ここまで上手くいくとは思わなかったけど、王族の抜け道通れたのが一番助かったわ」


 脱走して来たカラフサのリリーレン、ダリス、ピーラ、シエスタ、ケストニー、トーナの五人は軽傷こそあれど致命的な傷はないようだ。

 陽動を買って出ていただけに心配だったが、無事な姿を見て桃瀬もようやく安堵の息を吐く。


「で、そこの半裸男が目的の奴かい?」


「ええ。わざわざ陽動ありがと。でもいいの? お尋ねモノになるんじゃない?」


「はっ、冒険者ギルドがちゃぁんと保障してくれるから問題ないさね。で、行くんだろ? 仕方ないから最後まで付き合ってやるよ。冒険者としての心得も教えてやんなきゃな」


「あはは。お手柔らかに頼みます」


 合流した皆で向うのは、本来康弘が向かおうとしていた場所、つまり魔族の住む大陸東部。

 攫われた王女の影武者となったメイドを救うのだ。

 そのことを話していないせいでよく分かっていない康弘自身を放置して、皆で一先ずコーライ村へと向う。


 康弘の服を整えないとならないし、少しだけでも態勢の立て直しや食料の備蓄を補充しないとならないからだ。

 一日、最悪でも二日ゆったりして、直ぐに発つ。

 魔族の大地に入ってしまえば敵地も同意だ。正直どれ程危険かは全く分からない程である。

 それでも、助けたい人がそこにいるのだ。

 シエナの願いに、応えると決めたのだ。


「行きましょう! メイドさん奪還作戦開始です」


 魔族領向け、桃瀬達が動き出したのだった。

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