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セレスティ―ア、決起

「ごきげんようお父様」


 謎の老人と廊下ですれ違ったセレスティ―アは、謁見の間へと辿りついた。

 丁度謁見中だった国王ゾーゲル、そして宰相のヘックシがづらづらと入って来た貴族達を見て戸惑いを見せている。


「セレスティ―ア……」


「申し訳ございませんわお父様。王位を、頂きに参りました」


 優雅にお辞儀をし、大胆に告げる。

 彼女の背後には無数の貴族たち。

 その中にはゾーゲルが信頼を置いていた者も少なくない。


 ゾーゲルは思わず隣を見る。

 ヘックシよ、そなたはどうする?

 そんな思いが籠った視線に、ゾーゲルもまたため息交じりに視線を向けた。


「一応聞かせていただきましょう、セレスティ―ア王女。それはすなわち、クーデター、ということで?」


「端的に言えばそうなりますわ。ですがお父様、よく考えてくださいまし。今まで何かしらの決断を下す時、必ず私に許可を求めておりましたわよね? それは何故か。私が彼らにお願いすることで可能になるからです。それはつまり、私を女王とするのが一番良いと思うのですが、いかがでございましょう?」


「なるほどのぅ。確かに、そなたが貴族達を牛耳っておるのならばそなたを王位に付ければ国は滞りなく動かせるじゃろな」


「出来れば、父上の口から私に王位を譲ると言っていただきたいのです」


 顎をさすり感情を見せぬまま告げるゾーゲルに、不敵な笑みを見せるセレスティ―ア。

 しかし、彼女の言葉にゾーゲルは首を横に振る。


「残念じゃが、無理じゃ。次期国王はガッパイ。そこに変わりは無い」


「どれほど兄上が頑張ったところで私をのけものには出来ませんが?」


「しかし実質の実権は持てたであろう。なぜ裏方で満足せんかったのだセレスティ―ア」


 その言葉には、ゾーゲルの哀れみがあった。

 さすがに憎悪も怒りもなく憐憫の感情を向けられれば、セレスティ―アとしても面白くない。

 ムッとした顔でゾーゲルを睨む。


「どういう意味かしら? そもそもお父様は現状を理解しているの!? 既に兵士も貴族も私のモノ、この国は既に私が君臨してるのよ!」


「そうか……残念だセレスティ―ア」


 溜息混じりに告げ。瞳を閉じるゾーゲル。

 その上から目線の態度がセレスティ―アに怒りを灯す。

 本来ならば国王相手にこのような態度を取ること自体が大問題なのだが、既に女王として君臨するつもりのセレスティ―アにとっては、既に隠居する未来の父親が自分を見下しているのが我慢できないのだ。


「実の娘を反逆罪にせねばならんとはな」


 かっと目を見開くゾーゲル。

 咄嗟にセレスティ―アは叫ぶ。


「元国王を捕らえよ!」


 貴族たちが、兵士達が動き出す。

 だが、最初に兵士が、次に貴族たちが続々と倒れ始めた。


「……え?」


 想定外の事態に呆然とする。

 ゆえに、ゾーゲルは本当に残念そうに我が娘を見つめた。


「本当に、残念だセレスティ―ア。王国を守るのは兵士や貴族だけではないのだ。影に関しては全くの無手だったの」


「か……げ……?」


 顔の分からぬ女性が数人。黒尽くめの衣装を着て立っていた。

 そんな存在聞いたことが無い。見たことが無い。

 彼女達は、なんだ?


「紹介しようセレスティ―ア。遥か昔より脈々と受け継がれていた我が国の至宝にして最強の情報部隊、影じゃ」


「な、な……」


 影は代々レッセン王国を守る王唯一の武器にして各地の情報を入手するための部隊である。

 彼らは歴代の王と婚姻を結ぶのだが、影に徹するためその子孫に王位継承権は存在しない。代わりに王を助け王国を影から牛耳る栄誉を賜る。

 ゆえに暗殺者等は全て彼らが撃退し、王の傍で王を守り王の敵を排除する。


「奴らを全て牢にぶち込め。ガドウィン諸共処刑する」


「え? あ。やめ、離しなさいっ、私は、私はこの国のぉっ」


 首筋に手刀を浴びて、セレスティ―アの意識が途絶える。

 あとは影達により牢屋へと移されるだけである。


「悔しいですな」


「全くだ。セレスティ―アまで消さねばならんとはな」


「ウサギにくれてやるとかは?」


「無理じゃの。奴が欲しいと思っておれば島に連れて行っておったじゃろう。そうすればこんなことにはならんし、ウサギに襲われておったじゃろうし。結局あのウサギイリアーネまで襲いおったし」


「……確かに」


「まぁ、セレスティ―アは諦めよ。儂も、諦める」


「承知しました国王陛下。では、次期国王はガッパイ様で話を進めておきます」


「街の民を雇ったのだったな」


「はい、ウサギの言っていた通り、ディアリオアイランドへのフォロー要員ではなく貴族の仕事を任せ実力重視で仕事をさせることにいたします。なかなか有用ですよ」


「それは僥倖」


 失う貴族たちに変わり、民が率先して国を動かす。自分たちでは常識が邪魔して出来ないことだったが、ウサギの助言を受けて、臨時で民に仕事を任せることにした国王であった。

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