うさぎさん、ディアリオアイランド到着
「……う、ん? 儂は寝とったか?」
執務室に居ただろう貴族のおっさんが眩しい光に目を覚ます。
ぴーひょろろろろー、みゃーみゃーと何かの鳴き声。
目を開けば突き刺すような日差しと海の音。
ぼやけた視界からはっと我に返ったおっさんは飛び起き周囲に視線を走らせる。
目の前には打ち寄せる波間と自分が座っている海岸。
遠くに見えるは水平線。
ばっと振り向き逆方向を見る。生い茂る密林、獣の鳴き声。
目を瞑り頬を叩く。痛みを感じたのだろう。改めて眼を開いて周囲を確認。
海、森、海岸、青空。
「な、なんだこれは――――っ!!?」
せめてなんじゃこりゃ。と言ってほしかった。
おっさん、もとい侯爵の一人は、屋敷の執務室に居た筈なのに、寝落ちして起きたらどことも知らない海岸に一人眠っていたことに気付かされたのだ。
否、周囲を見回して気付く。
一人、また一人、海岸に打ち捨てられるように見知った貴族たちが倒れている。
「こ、これは、一体!?」
慌てて立ち上がる。
その頃には周囲からも気付いたおっさんたちが起き上がり始めている。
「おお、ソウナン子爵、ボーゼン男爵もいるのか!?」
「ナニモデキン侯爵っ!? こ、ここは一体!?」
「わ、分からん、だが周囲を見ろ、他の貴族たちもここにいるようだ。集団転移か? 何が起こった?」
「こ、侯爵、あちらに居るのは王子では!?」
「なっ!? リードリヒ王子!」
三人は砂浜に足を取られながら倒れたままのリードリヒに駆け寄る。
「ん……なん、だ?」
リードリヒの隣には間もなく結婚秒読みに入った女性、パーラ=ハイランドが倒れていた。
リードリヒが起きるのに合わせて彼女も意識を取り戻す。
「ん? お前達は?」
「リードリヒ様、大変でございます。我々はいつの間にかどこともしれぬ島に連れ去られたようです」
「何……?」
リードリヒは機嫌の悪そうな眼で周囲を見回し、隣にいるパーラに気付く。
「パーラっ!? 無事か?」
「え? はい……あの、リードリヒ様、ここは?」
「分からん、だが、海岸?」
立ち上がり砂を払いながら再び周囲に視線を向けるリードリヒ。
起きだした貴族たちが各々知り合いごとに寄り集まり始めている。
「兄上、起きましたか」
「ビルか? 何があった?」
リードリヒが起きたことで目立ったのだろう。彼の元へセレンを引き連れたビルがやって来る。
王子二人が揃ったことにナニモデキン侯爵が安堵の息を吐く。
「さて、俺にはなんとも、一応何か知ってそうなのが一匹いるが、な」
と、ビルが視線を向ける。
そこに居たのは二人の女。
一人の女はメイド服を着ており、もう一人は貴族服を着ている。
そしてビルにとってはあまり顔を合わせたくない相手であった。
その為、おそらくこいつが原因だろうと思われるウサギがその令嬢に抱きしめられているとしても容易に聞きに行くことが躊躇われたのである。
「うさ公か。奴もここに来て……ん?」
そんなウサ公が二人の女のきゃっきゃうふふしている場所に、一人の男が近づいて行った。
しかも、彼もまた二人が見知った存在である。
彼らの兄、ガッパイ王子であった。
「ウサギよ、とりあえず教わった通りにやればいいんだな?」
ガッパイはウサギと共犯である。
しかし他の面々はそのことを知らない。
ガッパイはウサギにだけ聞こえる声で最終確認を行い。頷いたのを見て覚悟を決める。
ここからはガッパイ次第。彼の腕に掛かっている。
貴族たちを纏め上げられるかどうかは彼の導く能力に掛かっているのだ。
さぁてどうなるか、ウサギさんとしても楽しみでなりませんよ。
ここに連れて来られたのはビル派侯爵二名、伯爵二名、子爵五名、男爵二名、準男爵二名。
リードリヒ派が侯爵一名、伯爵三名、子爵五名、男爵三名、準男爵五名、騎士爵六名。
ガッパイ派が伯爵二名、男爵一名、騎士爵二名だ。ここにはイリアーネを狙ってる奴も入ってる。
あと単品でカルセット君。
女性はセレンさんとパーラ、ユーリンデとチェルロが居る。王族はリベラローズ、イリアーネ、ペルセアの三人だ。セレスティ―アさんはレッセン王国に置いて来た。
最後にうさぎさんが一匹。
この総勢五十二名と一匹が今回ディアリオアイランド。ディアリオさんにより造られた島に連れて来られたメンバーである。
ちなみにビル派とリードリヒ派は、元というのがつくのだが、今はガッパイ派には付かずにラドウィンとカルセット、リベラローズのどれかに所属しているらしい。
でも怪しい奴らばっかなので纏めて矯正することにしたのだ。
ギミック満載だよ皆、このディアリオアイランド、楽しんでねー、なんつって。
ちなみに女性陣に襲いかかる奴は居ないだろうとは思うけど、ユーリンデとチェルロに襲いかかってきたりしたら地獄見せてやるからな。
あとガッパイさんや、妻と息子さん連れて来なくて本当によかったの?




