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真廣、至るポーラン

 元道真廣率いるパーティーは、ナリアガリッパー王国から南東へ、ポーランという国へと辿りついていた。

 ポーランは北にテモニー帝国、東にサランザ―ド、南にラパト、西にピポト、北西にナリアガリッパーと五つの国に囲まれた内陸国である。


 産業は農地が多く、キャ○ツやキャロッド、ハグサイ、キュウリ夫人、トウモトロッコシなどを栽培しているらしい。一応名産はサイトウキビで、筋肉質な男性に似た植物である。これを割って中身を絞り器でぎゅーっと絞ったあと、こして熱して砂糖を作るのだとか。

 なんか汗臭そうな砂糖である。


 国王が治める国であり、君主制を採用しており、国内は比較的穏やかな国民が多い。

 兵士も詰所などに居る以外に数人が見回りをしている程度なので殺伐とした雰囲気は殆ど無かった。

 活気に満ちている訳ではないが、そこそこの人通りがある。

 貴族の馬車も通っているが、通るたびに平民が側面に避けることは無く、普通に人々の流れの中をゆったりと移動していた。


「この国はそれなりによさそうね」


「ナリアガリッパーほど殺伐してないし、ゆったりできそうだな」


 とりあえず宿屋で一泊。その後どうするかはギルドを見てから決めよう、ということになった。

 元道真廣、赤穂楓夏、ルルジョパ、中浦沙希の四人は取った宿で休息。真壁莱人、上田幸次の二人は情報収集をすることに決め、男子二人が宿から出て行く。

 宿の二階、パーティー用の大部屋を借りた四人は、一先ず部屋に向かい、床に腰を降ろして各々息を吐く。


「ふはー。なんっていうか、異世界って大変」


「確かに、日本が恋しいデース」


「この世界にはないモノが多いものね。出来ればスマホは使いたかったわね」


「私はそういうのに興味は無いが……せめて湯浴みくらいはしたいものだ」


 今の所、彼らがやって来た国に風呂は存在していなかった。基本井戸で汲んだ水を使って身体を拭き取るか、川に入って身体を丸洗いのどちらかだ。

 ちなみに、真似するように川に入って身体を洗った真壁莱人が蛭の大群に襲われて以来身体を洗うのは拭き取りだけにしている面々である。


「はー、テレビにエアコン、炬燵にミカン。ドライヤーに除菌スプレー、マスクに漫画。いと恋し、なんつって」


「ほんとに、テレビは見たいデス。ダンス衣装もほしいし、化粧品も現代日本の方が高度で安心ですね」


「あー、確かに、こっちの化粧品って何使ってるか分からないから使用したくないよね。パウダー系の素材聞いたら人体に有毒なもの普通に使ってたし。鉛入れたらやばいっての」


「食品も気を付けなければ普通に毒素を溜めている可能性もあるぞ。毒抜きもしっかりできてるか不安がある」


「はぁ、科学の発達してない世界って不便で怖いよね……」


 溜息混じりに楓夏が告げると、ルルジョバと沙希が同意する。


「しかし、これ、どうやって取ればいいのやら」


「一応それも男子が聞いてくるって言ってたけど……そうね、折角だし休憩したら外出てみる? ちょっと女性だけだから危険だけど大通りだけなら普通に歩けるんじゃないかな?」


「装備整えて武器持ってれば冒険者と思われるからまずゴロツキには襲われないでしょ」


「そう、だな。私のせいで、すまない」


「真廣さんのせいじゃないわ。この世界がクソなだけよ」


 しばしガールズトークに花を咲かせた彼女達はベッドでゆったり仮眠したあと、外に出ようとして、戻って来た男子チームと合流。そのまま一緒に外に出ることになった。

 理由を話したらやっぱり女性だけで外出すのは危険だ、と言って男子が付いて来たのだ。


 折角なので明日行く予定だった冒険者ギルドに顔をだす。

 一先ず依頼を流し見て、このギルドで扱われる依頼の傾向を掴んだ後は情報を売っているカウンターでいろいろとこの国について聞いておく。

 それが済んだら街をぶらぶらとお店を梯子しながら周囲の人の世間話を盗み聞きしていく。


「おっと」


「きゃっ」


 幸次が女の子と肩をぶつけてしまった。

 フードを目深に被っていた少女はそのまま尻持ちを付いてしまう。

 咄嗟に彼女に手が伸びたのは真廣。


「私の連れがすまない。大丈夫か?」


「え? あ、はい……奴隷?」


「む、ああ、これは……」


「えっと、これにはちょっと事情があって、とある国で無理矢理嵌められたの」


 律義に説明してしまった楓夏に沙希が怪訝な顔をするが、当の本人は気付かなかった。


「無理矢理、ですか、証明できるのでしたらお外し致しましょうか?」


「へ?」


「これもきっと我が神アンゴルモア様の思し召しでしょう。不幸は全て御身で引き受ける。ふふ、我が神の信徒としてその不幸、私がお受け致しましょう」


 クスリ、口元を歪める少女に言い知れない狂気を感じる真廣、しかし、この好機を無駄にする気にはなれず、お願いすることにしたのだった。

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