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桃瀬、運命の出会い

「なんだかんだ言って、結局仲良くなったわね……」


 ロスタリスにやって来たのは、高藤桃瀬、九重西瓜、二階堂ロア、戒涙亞、河井稲葉、天竺郁乃、セシリア。そして敵対したり協力したりで道中を共にしてきたカラフサのリリーレンチーム。すなわち、ダリス、ピーラ、シエスタ、ケストニー、トーナの五人組である。

 結局敵対した彼らはいつの間にか仲良くなって戦友のような状態になっていた。


 桃瀬とダリスなど、ダリスに肩を抱かれて酒場行こうぜーっと楽しげに笑い合っている。

 どうやら同じウサギを追ってるパーティーということもあり、実力も拮抗していたこともあり、仲良くなるのは直ぐだったようだ。

 否、実力自体は暗黒十字軍の方が強かったのだが、スキルの入手法を桃瀬達が教えたことでかなり強力なパーティー同士で切磋琢磨することになったのである。

 御蔭で互いに高めあったこの二つのパーティーはロスタリスでも一、二を争う実力あるパーティーになっていたのだが、当のパーティーメンバーたちはそれに気付いてすらいなかった。


「まぁ、先にギルドで仕事完了の確認やんねぇとな」


「それもそうね。一緒に行く?」


 桃瀬とダリス、パーティーのリーダー格が仲良くギルドに向かって行く。

 付いて来ているパーティーメンバーたちは互いに顔を見合わせ、仕方ないなぁと溜息吐いて彼らの後を追うのだった。

 だが、大通りを歩けば歩くほど、違和感が噴き上がる。


 違和感の理由は簡単だ。

 ロスタリス城の上部が爆散した状態になっているのだ。

 既に工夫たちが修復を始めようとしているが、高さが高さだけに修復準備に時間が掛かっているようである。


「なんか、あったみたいね」


「なんじゃあの壊れ方。暗黒竜王撃でも喰らったかの?」


「普通に爆弾か何かで壊れたと言えばいいアル」


「気になるし、私達勇者だから問題ないでしょ、宿取ったら城に向かってみましょ」


「それじゃ、私宿取ってきます」


「待ちなトーナ。どうせいつもの酒場で飲むんだ。その近くに二グループ分取っときな」


「あ、待って。リリーレンチームの皆さん、もしかしたら王城で泊まれるかもしれないから宿は後で良いんじゃない」


 稲葉の言葉にそういえば、と桃瀬も納得する。


「へぇ、あたしたちまで王城泊まれんのかい、そりゃ嬉しいねぇ」


「お、お城に泊まるなんて、そ、そんな凄いこと、いいんですか!?」


「多分大丈夫でしょ。ここの王様勇者には結構甘いし」


 楽観的に言う桃瀬がギルドの扉を潜る。

 すると、何やら人だかりが出来ていた。

 なんだろうか? 皆して顔を見合わせる二チームは、人だかりが依頼を申し込むカウンター前が中心らしい。

 気になったのでそちらに向かってみる。


 人だかりを割って中心に向かってみれば、そこにはみすぼらしい町民の恰好をした綺麗な髪を持つ女性。

 必死に受付嬢に何か訴えているようだ。

 何か異様な決意に似た物を感じた桃瀬は、近くの冒険者に尋ねる。


「あの、何ですかアレ?」


「ん? ああ、なんか連れの勇者が王に捕まったから助けてくださいって依頼しようとして来てな。名前を聞いても明かせませんってことで受付出来なくて押し問答だ。そろそろギルド長出てくるんじゃねぇかな」


 何やら不穏な話である。

 しかし、勇者が王に掴まった?

 さすがに勇者の一人として聞き逃す訳にはいかない言葉である。


 正直面倒事としか思えないのだが……

 桃瀬は背後にいた自分のチームを見る。

 意味を察した西瓜が頷き、稲葉がため息を吐く。

 ロア、涙亞、郁乃はどっちでもいいらしい。

 セシリアが目を見開いて震えている。

 視線の先に居るのは件の女性だ。必死な姿を見てありえないと震えている所を見るに、どうも位の高い人物と見える。


「仕方ない。貧乏くじ引くか」


 桃瀬は一人、人だかりの分から飛び出し、女性の元へ行く。


「さすがにその依頼内容じゃギルドでは取り扱ってくれないわよ」


「え? あ、貴女は……? いえ、黒目黒髪……勇者様ですか!」


 天の助けっと顔を満面の笑顔にする女に、思わず気押される。


「と、とにかく落ち着いて、皆さんの注目になってますし、あの、受付嬢さん、談話室借りれませんか?」


「あ、はい、それでよければ、右の扉から中へどうぞ」


 談話室、ではなく応接間の一つを貸して貰い、暗黒十字軍、カラフサのリリーレンの二チームと、謎の女性が席に着く。

 長方形のテーブルを真ん中に三人掛けソファーが二つだけしかなかったので、片方に謎の女性を、もう片方のソファーには代表の桃瀬とダリス、ついでに何か見知っていると思われるセシリアが座る。

 他のメンバーはソファーの後ろにいたり、壁に持たれたりしながら話を聞くことにしたらしい。


「えーっと、それで、貴女は?」


「はい、私の名はシエナ、シエナ・ロスタリスです。お願いします勇者様ッ、康弘さんを、康弘さんを助けてくださいッ!!」


 逸る気持ちを胸に手を当て押さえつけ、決死の覚悟を見せながら、シエナ、またの名をロスタリス第一王女は告げるのだった。

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