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ウサギさん、第三王子の決断

 ディアリオが召喚されて自宅へと戻って行ってから数日が過ぎた。

 日々を忙しなく過ごしたビルくんの王様体験期間は本日終了である。

 朝早く起きたビルは、あ、そうか。と独り言を呟く。

 しばしぼーっと虚空を見上げたあと、ぽすっとベッドに倒れ込んで息を吐く。


「終わった、のか」


 ―― 国王体験は昨日で終わりだ。どうだった? 今日はそのことについて10時位に謁見あるぞ? ――


「今は?」


 ―― 6時くらいだな。随分早く起きれるようになったじゃないか ――


「はは、父上が随分早くから起きてる理由がようやく分かったよ。ふぅ、よし、とりあえず起きるか」


 折角早く起きたのだから、とこの時間から起きることにしたビル。

 全てから解放された気分なようで、立ち上がると同時に伸びをする。

 早朝だからだろう、少し空気が冷たい気がする。


「穴倉暮らしだから、なかなか日の光に当ることなくてな」


 ―― ほら穴の中にも日が差し込むようになっていただろ。王城にも光は差し込んでる、折角だから外に出て浴びてきたらどうだ? ――


「それもそうだな」


 近くにいたメイドさんに外に出る旨を告げる。

 メイド達が直ぐにやって来てビルを着替えさせる。

 王族って自分で着替えたりしないんだよね。こうやって複数のメイドさんに身体見られながら着替えさせられるんだ。

 うらやまですね。本人はその恵まれてる状況に気付いてないけども。


 着替えを終えると訓練場に向かうビル。

 そこでは既に朝錬しているイリアーネとリードリヒ。

 ビルに気付いたリードリヒが珍しく早いな。と告げて来るが、ビルは最近はこの時間に起きてると普通に返す。どうでも良かったようでリードリヒはそうか。と一言だけ告げて訓練を再開した。


「ご主人様っ」


 不意に、ビルの頭の上で寝そべっていた俺がビルから引き離される。

 なんだ? と思った次の瞬間、柔らかな肉厚のある何かにうずまった。

 見上げれば、綺麗な女性が俺を抱きしめている。


 おお、今日は早いじゃないか。

 こいつはつい先日、邪神ディアリッチオを崇拝していた信者の一人。

 俺を抱き上げた女性信者である。

 当然、頂きました。

 そしたらこの状況ですわ。


「は~、この抱き心地癒されます。ウサギ好きなんですよ私」


「お前は……ああ、ウサギの従者になった女だったか」


「はい、うさしゃん様付きのメイドになりましたチェルロといいます」


 チェルロは白人である。白い素肌に金色の髪。彫が深く見えるのは日本人から見た外人さんといった感じだろうか? すらっとしてスレンダー、三つ編みにしたポニーテールは正直先っぽの方にリボン付けてやりたい。

 額から上の部分からアンテナのようなモノが二つ。強い奴に会いに来そうなアーミー娘に似てなくもない。正直可愛い。元気溌剌に過ごして欲しいです。


 ―― んじゃ俺はチェルロに抱かれながら行くッす ――


「チッ、変態ウサギめ。まぁいい行くぞ」


 外の散歩を終える。まだカルセットとペルセアはまだ寝てるので放置。

 セレスティ―アの部屋近くを通ると、丁度セレスティ―アが部屋から出て来た。全裸で。


「あら、ビル兄様。随分お早いですわね」


「昨日まで父の仕事をやらせて貰っていたからな。身体がこの時間に目覚めるようになってしまった」


「あらあら」


「で、お前は全裸で何をしてるんだ?」


「ちょっと早くに起きてしまったのでトイレにでも行こうかと」


 セレスティ―アはそそくさと去っていく。もしかして、っと、チェルロに頼んで部屋の中を見てみると、ああ、やっぱし、本日は宰相様だったようだ。

 宰相が起きてそろそろ動き出そうか、と視線を上げた瞬間、俺と目が合う。

 あ、やべ。って顔してるけど、もう遅いぞ?


「今日の相手は宰相か、なにやってんだヘックシ」


「な、ななな、び、ビル王子!?」


「全くお前までセレスティ―アの毒牙にかかっているとはな」


「お、お願いいたします、陛下にはっ」


「父のことだ、この程度の事すでに知ってるだろ」


 あ、それはありうるな。

 そんなぁ、と項垂れる宰相。まぁ、がんばれや。

 自業自得って奴だぜ。


「しかし、宰相まで浸食しているとなれば確かにセレスティ―アの権力は父上よりも上といっても過言ではなさそうだな」


 だろうな。ほんと女って強ぇわ。

 宰相さんのことは黙っとくことに決めた俺とビルは、時間になるまで城内をゆったりと見回り、部屋に戻って休息。謁見に向かうことにした。


「さてビルよ。この一週間王をやってみて、どうだったかの」


「ええ。慣れれば、私でも務まるのではないかと思います。ただ、あの激務を毎日かと思うと自由がなさすぎる気がするのですが?」


「王とはそういうモノだ。なんならガッパイのように数日我が仕事を傍で見るのも良いぞ?」


「いろいろと考えました、が、やはり私には王は向かぬようです。ガッパイ兄上に王の座を譲り私は宰相となりたく思います。リードリヒ兄上が軍事面でガッパイ兄上を手助けすると宣言なされましたので、私は政治の方を手助け致したく」


 ビルの野郎逃げやがった!?

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