ウサギさん、と第三王子の国王体験四日目
本日も書類整理から入るビル。
さすがに四日目ともなると慣れて来たようだ。
仕分けを最初の三分の二程の時間で終えて、謁見の間で玉座に座る。
本日最初の訪問者は、財務大臣だった。
さすがに青い顔でやってきた彼は、本日セレスティ―アから五千万国庫から頂戴、と伝えられたらしい。
色仕掛けに落ちそうになったが、極刑をちらつかされていたのでぎりぎりに耐えたらしい。
昨日伝えてなかったら危ない所だったようだ。
「それと、相手はコールデル子爵ということが判明しました。ただ、子爵家にそんな名前があったとは初耳でして」
「儂も初耳じゃな。この国の者ではないのではないか?」
「でしたらセレスティ―ア様を呼び出しましょう。彼女に聞いた方が早そうです」
「だな、では儂自ら行ってくる。他のモノでは巻き込まれるだろうしの。ウサギよ、ビルを頼むぞ」
「すまない財務大臣、忙しいとは思うが今しばらくここにいてくれ。陛下の居た場所で立っていて貰えるか?」
恐れ多いと辞退しようとしたが、ヘックシだけでなくビルからも促されたのでしぶしぶセレスティ―アを呼びに向かったゾーゲルの代わりにビルの傍に立つ。
そしてしばし、セレスティ―アの首根っこ引っ掴んだゾーゲルがやってきた。
物凄い疲れた顔のゾーゲルとつやっつやのセレスティ―ア。着崩れた服が何とも言えない。
「あー、ビル兄お久ー」
「昨日の夕食時に会っただろ」
「そーだけどぉー。で、何の用?」
「ああ、今日財務大臣に五千万工面するように言っただろ」
「ええ。言ったけどぉ? お姉様も五千万位いっつも使ってるじゃない」
「まぁ、そうなんだがな。今回は使う相手が問題だ。コールデル子爵だったか、この国の貴族ではない何者かも知れない相手に五千万もくれてやるなど何を考えている?」
「え? この国の貴族じゃ、ない? 何かの間違いよ、貧民街で落ちぶれた自分の領地を復活させたいって……」
「カルセットも神父に化けた何者かに五千万工面させられそうになっていてな、商工会や鍛冶同盟にも同様の詐欺で国庫から五千万引き抜こうとしている奴がいる。おそらくお前が出会ったのもそいつの関係者だろう。そもそも五千万程度で落ちぶれた貴族が貴族に返り咲けるわけがないだろう」
「なんてことっ、私を騙そうとした奴が居るのね! 男の癖に生意気だわ」
セレスティ―アさんの思考回路がおかしいと思います。
男性を何だと思ってるんだろう。
―― セレスティ―アさんや。男性ってそなたにとってどんな存在? ――
「そんなもの、チ○○に決まってるでしょ! それ以外に何があるのよっ」
酷過ぎる……
いや、まぁ、それはそれで楽しんでるならいいんだけども。
「いいわ、私をたばかろうとしたこと、後悔させてあげる。今に見てなさいよコールデルっ」
言うが早いか肩を怒らせ謁見の間を出て行くセレスティ―ア。
一時間後、セレスティ―アが簀巻きにされて顔ぼっこぼこにされた貴族っぽいちょび髭男を連れてやって来た。
目と口だけ穴のあいたフードを被った屈強な男二人が両側から挟むようにしてちょび髭男を連れて来ると、ビルの前へとぽいっと投げ捨てる。
「こいつよお兄様」
「早すぎだろ!? リードリヒ兄さんたちまだ探してるんだぞ!?」
「あら、この国の殆どの男達が私の足よ? 裏切り者一匹見付ける程度造作もありませんわ」
改めてセレスティ―ア怖いって思いました、がくぶる案件だわ。
「では、一応聞こう。そなたは何者だ? 何のために国庫から五千万もの大金を引き出そうとした?」
しかし男は答えない。
「仕方ない。拷問部屋に連れて行け、必ず吐かせろ」
「ダメですわねお兄様。拷問など愚の骨頂。一番喋ってくれるのは……快楽調教ですわ」
ペロリ、セレスティ―アがいたずらちっくに笑みを浮かべた。
あかん、この人ホント敵にしたらあかん人やっ。
カン○タっぽい二人に再び掴み上げられたコールデル子爵らしき人。セレスティ―アがもう一時間程お待ちになって、と去っていく。
謁見時間が終わり、書類に判を押してしばし、セレスティ―アから口を割ったとの言葉を聞いて、午後の謁見で話を聞くことになった。
理由は邪神崇拝者たちによる邪神を呼ぶ儀式のために必要な資金を調達するため、だったそうだ。
ちなみに邪神はアンゴルモアではなくディアリッチオという名前の邪神らしかった。
この世界の奴ら邪神好き過ぎじゃね?
邪神崇拝者の居場所も分かったので直ぐに捕縛部隊が結成された。
面白そうだったので俺はリードリヒに付いて捕縛に向かうことにしたのであった。
だってビル君謁見と書類整理のルーチンワークで見てて暇になって来たんだもん。
さすがに一週間はちょっと飽きるわ。
ところでディアリッチオって、なんかディアリオさんと名前似てるっすね。
―― ふむ、せっかくだから徹底的に潰しといてくれウサギよ ――
ディアリオさんに伝えてみたら気に入らなかったようで徹底的に潰せとご命令されてしまった俺だった。ちょっとはっちゃけないとダメかもしんない。




