ウサギさん、と第三王子の国王体験一日目
と、言う訳で、国王に話したらなんか面白そうだしやってみよう。ということになった。
本日よりビル国王が一週間誕生である。
宰相ヘックシとお目付け役として国王が傍付きしているが、決断を下すのも書類整理するのもビルくんである。
さすがにいきなりの大役にちょっと緊張気味。
まずは朝の謁見である。
何人かの謁見が済んだところでふぅっと息を吐くビル。
父親であるゾーゲルにいつもこんなに面会しているのですか? と尋ねている。
多分だがこれでも少ない方だぞ?
「ビルよ、今日はむしろ少ないぞ? 面会予定はこれで終わりだしな。明日以降は飛び込みも入って来るし、各地の領主達からの定期報告が届く、本日も本来ならばあと一時間は座りっぱなしだ」
「トイレはどうするのですか父上、そろそろ限界なのですが」
「儂の椅子で漏らしてくれるなよ。トイレは普通に行けばいい。少しくらいなら宰相が持たせる」
「ちなみに、私がトイレに向かっている間は陛下が待たねばなりませんゆえご了承ください」
「そ、そうか、では少しトイレに行ってくる」
そうそう立ち上がって小走りに王族用トイレに向かうビル。俺は監視役という意味を込めてビルの肩に飛び乗り一緒に向かう。
そしてしばらく、トイレを終えてしばし、ビルは洗面台を前に溜息を吐く。
「のっけから激務だな」
―― 座っているだけだろう? ――
「それが一番きついんだ。父上が尻が痛いと嘆いていた理由がよく分かる。これは確かに苦行だ」
嘆いてたんだ。
確かに座りっぱなしだと痔になりやすいって聞いたことあるな。
ということは国王って殆どの王様が痔持ちなのか? ついでに女王様も……
オイラが何とかしてやらねばな、ふっふっふ。どこかに女王様いねぇかな?
午前のお勤めが終わり、ようやく休憩だ、と思ったビル。しかし書類整理がまだだった。
宰相さんに連れられて執務室にやってきたビル。朝のうちに国王ならある程度仕分けしていたのだろうが、本日はソレをしなかった為になんかうずたかく書類が積まれている。
「ち、父上、これは?」
「うむ。朝にやる書類だ。お前がやるというので起きてすぐにする仕分けを行っていない状態だ。今日は儂も手伝うが、明日からは頼むぞ」
嘘だろ? そんな言葉が聞こえた気がした。
実際にはビルが呆然としていたので言葉すら聞こえなかったのだが。
だから言ったじゃん。王様の仕事って結構きついって。
結局一時間押しでなんとか全部終わらせ、食事、は時間がないので昼の謁見が始まった。
お腹の虫が鳴り響いてる、陛下まで飯抜きする必要無かったのに。
やっぱり息子だからってことで自分だけ食事するのは止めてあげたのかな。息子に苦行させるなら自分もやっとくべき、みたいな?
しかし、ビルはそのことに気付いてないようだ。
お腹を鳴らしながら必死に謁見者の話を聞いている。
本当に頭に入ってるかどうかは別だけど。
とりあえず飯食えなかったことでかなりご立腹なのは見ていて分かる。
昼の謁見が終わるとようやくゆっくりできる。と思ったのもつかの間、また書斎に連れて行かれたビルは、終わらせた筈の書類が山積みになっているのを見て呆然とする。
「お、終わらせたはず、だが?」
「何を言っておる。書類は現在進行形で下から上がる。管理する全ての部署から上がるのだから数時間でこれくらいは貯まるぞ?」
「うそ、だろ?」
「ほれ、さっさとやるぞ。三時までに終わらせれば休憩が一時間取れる。ケーキくらいはでるからの、昼食となるかどうか微妙ではあるが喰わんよりマシじゃろ」
父に促されビルが書類整理を始める。
初日は何をすれば分からないから余計に時間掛かるんだよね。
とりあえず二日目である程度の感覚掴んで、三日目からは何度も躓いて忘れたところを直して、そして一週間してようやく一通りこなす位になる。そしてそこで終わり、と。
午後も一時間経過して終わったので休憩は返上となった。
そのまま夕方からの仕事が始まり、夜食をなんとか数分だけ取る。その後は風呂に入って王様は後宮へ。ひっさびさの休日じゃーっとすっごい楽しそうだった。
そして宰相は残った後始末を始め、仕事を終えたビルは自室へふらふらと戻って行く。
ちなみに俺はビルの部屋で今日も寝ろってことらしい。
まぁ、欲情状態はまだ問題無いんだけどさ、そろそろ本気で女性が欲しいです。
このままじゃ本気でカルセット君襲いに行きかねない。
セレスティ―アにお願いしようかなぁ。なんつって、なんか恐ろしいことになりそうだからやめとこう。
さぁって、ビル君はどれくらい持つかなぁ。
数日持てばいいけれど、もしかしたら一週間は持たないかもしれないな。
国王の仕事ってこれが基本ってだけでまだまだあるんだし。
頭を使い過ぎて泥のように眠ってしまうビル。
彼は理解しているのだろうか? 明日から王としての作業が本格的に始まるのだ、朝早くから、というか起きた瞬間から王となる訳だから大変だぞー。




