うさぎさん、はゆったりしたい
「「あっ」」
脱兎で撤収する兎さん。
気付いたライゼンさんとマールちゃんがそれに気付いて声を上げる。
おじいちゃんと孫なだけあるのか見事に声がハモった。
ライゼンさんが慌てて後追おうとしたが、マールちゃんにひっつかれていることもあり、声を出すだけで俺を見送ってくれた。マールちゃんの方はお爺ちゃんの安否を優先したようだ。
動こうとしたライゼンさんを押し留めている。
がさりと茂みに駆け込み少し行ったところで回り込み、叢から周囲を窺う。
クロが死んだからだろう。
コボルト達は尻尾巻いて逃げ出し、追撃を始めた兵士達に討ち取られていく。
よかった。残党に村が滅ぼされるような心配もなさそうだ。
やはりクロが彼らのリーダーだったから司令塔無くしたことで烏合の衆になったんだろう。
バラバラに逃げだしている。
お、HP10以下のコボルト発見。電光石火ッ!!
―― 何処からでも出ます を覚えた! ――
よし、これで7レベル。残り3レベルでクラスアップだ。……次、マギラビットあると良いなぁ。
倒したコボルトからアイテムを頂き、森の奥へと消える。
村も守られたことだし、とりあえず一旦自宅に戻ろう。愛しき兄弟が待っている。
そう、思ってたんだ。
まだ四匹いるし、まだまだ安全だって、思ってたんだ。
俺はまだ気付いちゃいなかった。この森は、弱肉強食。弱き兎が生き残るのは本当に命がけだったんだってことに……
……
…………
……………………
これは、どうしたことだ?
洞窟に戻ってみれば、誰も居ない。
いや、奥の方に一匹、いつものように俺を出向える小型の兎が一匹だけ残っていた。
もっきゅもっきゅしている兎さんはステータス見たところあの姉妹だと思われる。姉だろうか? 妹だろうか?
とりあえず、一貫して外に出てないから物凄いレベルが低い。
他の兄弟たちはせっせと毒消し草食べてレベル5くらいになってるのにこの雌兎だけはレベル2なのだ。
ほんと、巣穴にどっしり構える姐さんは一体何者なのか。そう言えばステータスそこまでしっかりとは確認してなかったんだよ。今回のステータスで分かったのは……
名前:
種族:ノウサギ・シロウサギ ♀
Lv:2
HP:35/35
MP:2/2
状態:普通 ∞s
スキル:
省エネ /動かないことでエネルギー消費を最小限に抑える。
毒耐性(Lv1) /状態異常・毒に掛かりにくくなる。
種族スキル:
粗食耐性 /食べるモノが貧しくとも普通に育つ。
脱兎 /初期状態から速度二倍で動くことが可能。制限時間1m。クールタイム2m。
病気弱点 /病気に掛かりやすい。
うわぁお。省エネって。いや、まぁいいんだけどさ。こいつにぴったりのスキルだな。
瞬間転移とかなんか凄い能力……って訳じゃなかったのか。
というかこいつのせいで全く動かないんだな。
喰ってるのは何日前の草だろう? 多分発酵に発酵を重ねていると思われる。アルコールになってんじゃないか?
しかし、他の兄弟はどこ行った?
近くで草喰ってる姿もなかったし、喰っちゃ寝系のお母様も戻ってないのか。
まぁいい、とりあえず今日は疲れたから寝よう。
ふぁ~ふっ。
欠伸をしながら起き上がる。
うーん。結構寝たな。既にお昼になってるぜ。一日寝てたのかもしれん。
背伸びをして猫のように身体を伸ばす。女豹のポーズという奴だ。
巣穴の中に居るのはやはり雌兎一人のようだ。一歩も動いていない。
俺は一人巣穴を出て食事を取る。
今日は巣穴周辺でちょっとゆっくりしよう。激戦続きでちょっと疲れたし。
何しろここ最近オークにカマキリにクマさんにブラックコボルトという激戦だったからな。正直疲れた。
今日はいつもの湖周辺でゆったり泳ぎながら過ごそう。正直冒険はお腹一杯です。
ふふ、憩いの場で他の魔物達と語らい合うとするか。え? 他の奴らにとっては迷惑? 知らんがな。クマさんにでも話しかけてやるか。
毒消し草を食んで湖に向う。
本日の憩いの場にいるのはにっちゃう二匹にゴブリン二匹。あとベアさん一匹。
本当にこの泉は休戦地帯だな。どこまで有効でどの辺り一緒に離れたら肉食獣が襲って来るんだろう?
つかにっちゃうってなんだ? 見た感じ兎を雪だるま形にしたような生物みたいだけど。手足ないし口も無いぞ。なんだあのふわもこ生物?
まぁ、いいや。それはまた後でいいとして、とりあえず俺が求めるのは憩いである。
……ん? そう言えばこの周辺にある草、誰も食べようとしないよな。何でだ?
折角だしこの辺りの草でも食べながらゆっくり寝そべっておくか……どれどれ、なんの草ですか~っと。




