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ウサギさん、と第一皇子

 結局、王様との一日では後宮に向かうことは無かった。

 なぜかこの王様俺がいるからってことで今日の後宮巡りを取りやめたらしい。

 アレか、俺の女グセに気付きやがったか!?


 そのせいかこのじじい俺を抱き枕扱いでぎゅっと抱きしめながら寝やがったのだ。

 女性に抱きしめられるならともかくなんでこんな厳ついおっさんにぬいぐるみ抱きしめる少女みたいな姿で抱きしめられにゃならんのだ!?

 しかも寝まきがナイトキャップ付きって、軽く引くわっ!


 実は貴様可愛いもの好きだろう。顔がデレッデレになってやがるぜ。

 御蔭で俺の正気度は駄々下がりだけどな。

 全身おっさんに抱きしめられていたせいか体中がばっきばきに固まってる気がするぜ。


 謁見の間に連れていかれて第一皇子ガッパイさんに引き継がれる。

 ゾーゲルが凄く名残惜しそうに俺を見てたけど、やめて、おっさんの愛玩動物になる気はないんだよ。

 アレだぞ、動物が嫌がるような口付けはしちゃダメなんだぞ! されてないけどさっ。


「親父は可愛いもの好きだからな、意思持つ魔獣としてはげんなりだろ」


 がははと笑うガッパイに連れられて、王子の部屋へと向かう。


「紹介しよう。俺の妻サレータと息子のマイサンだ」


 ガッパイの部屋に案内されると、そこに居たのは黒い肌の女性。なんか砂漠の民とすら思える奥さんだ。多分ガッパイと同い年くらい。目元がちょっと皺を隠しきれてない。

 そしてガッパイとサレータさんの肌を足して二で割ったくらいの肌を持つマイサン。マイサンのマイサンですか、そうですか。突っ込まないぞ!


「サレータ。こいつが昨日伝えたウサギだ」


 一応俺のことは伝えてあるようだ。

 ガッパイは既に王としての教養は覚えてるそうで、後は王位を継ぐまで暇なんだそうだ。

 なのでもっぱら妻と息子に今しか出来ない家族サービス中らしい。


 と、いうわけで俺は息子さんと遊ぶことになった。

 おっさんの次はショタッ子ですか。

 女の子は? 女の子は何処ですか?

 奥さん、よろしければふわもこボディ、堪能しませんか? あ、こら小僧、邪魔すんな。

 ぎゃー、耳引っ張んなっ!?


 結局二日連続で女っ気殆ど無く野郎共の相手をさせられるウサギさんだった。

 撫でられる動物も楽じゃないんだぜ?

 ちくしょう、なんであのくらいの小僧はなんでもかんでも口に入れたがるんだ。

 ウサギの耳なんて口に入れても美味しくも何ともないだろ。

 毛塗れになるだけだぞ。


 うへぇ、ちぎれてない耳の方が涎塗れになっちまった。

 どうしてくれるガッパイ。おい、ガッパイ、どうしてくれるっ!?

 そんなガッパイは弄ばれたウサギさんを見てがははと大笑いしてやがる。


 次期王の癖にその一般のおっちゃんみたいな粗野さはどうかと思うよ。いや、むしろ野性味溢れるおっさんの方が王が務まるのかね?

 でも確かに、このおっさんが王様になるのは普通に想像できるな。

 南の獅子王、いや、征服王ってところか。


 となるとカルセット君がウェ○バー君とか? さすがに無理があるか。

 んで、おっちゃんはどれくらい王に適してるのかいね?

 俺は遊び疲れて眠ったマイサンの枕元から抜け出し、ガッパイの肩に乗る。


 ―― 王としての業務がみたい ――


「お、おぅ? ああそうか、俺の日常を観察するんじゃなく王として相応しいかどうかを観察するんだったな。じゃぁしゃーねぇ。とりあえず教わったこと一通りやって見せるな」


 頭を掻きながらサレータにちょいと出てくるわ。と告げて部屋を後にする。


「サレータはよ、異国の女性なんだわ」


 通路を歩きながら、ガッパイが告げる。

 うん、知ってる。てか見たらわかる。


「肌が黒いだろ。そのせいで悪魔の使いとか大臣共に言われてよ、ムカついたから殴り飛ばしたらそのせいで貴族連中とぎくしゃくしだしてな。軍部の将軍も俺が悪魔に堕落させられたとか言いだして、それが民に広まってな。どうもならず者達が噂の発生現らしいんだが……」


 ―― それ、ラドウィンの差し金じゃね? あいつならず者統括してんだろ ――


「だよなぁ。俺もそう思った。でも証拠がねぇからどうにもならん。ならず者どもを捕まえて聞こうにも軍部が言うこと聞かねぇから捕まえても俺に連絡が来ねぇ。俺は確かに親父に国政教わったがな、こんな状態じゃ国王になっても直ぐに潰される。そうなりゃサレータがヤバい。あいつを守るためには俺は王になって次の王が息子になるまでしっかりと務めてぇ。ウサギよ、悪りぃが協力してほしい。って、ウサギに頼んでもしゃーねぇか?」


 バツが悪そうに頭を掻きながら庭、というか練兵所へとやってくる。

 兵士達がしっかりと訓練していたが、ガッパイを見た瞬間凄く嫌そうな顔をし始めた。

 それは別の場所に向かい、貴族と出会った時も同じだった。

 就寝まで仕事を見ていたが、そつなくこなしているので国王になって問題が出ることはなさそうだ。

 やはり彼に必要なのは人望であろう。

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