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うさぎさん、革新の時

 現状、敵対状態の相田と闘うには飛行能力が足りない。

 浮遊程度ではただの的。

 相手は空から攻撃して来て俺の攻撃は槍投げくらいしかない。

 槍が届かない高所から攻撃されたら、中の人消えまーすで逃げるくらいしか手がない。


 もしもこいつが追跡能力に目覚めてしまったら詰む。

 探させるような行動は極力取らない方が良いだろう。

 ならどうするか。


 進化の種だ。

 いままで必要無かったから使わなかったけど、こいつを使えば必要な能力を一足飛びに手に入れられるらしい。

 俺はその種を迷わず使用。食べた後に進化先にどんな能力が欲しいかを思い浮かべればいいらしい。

 問題は系統樹の先に思い描く進化先が見付からなかった時。不発に終わったら詰むだろうな。

 今は逃げることは出来ても後々追われることになるだろう。ここで仕留めなきゃいけないのはこっちも同じだ。


 まずは飛行能力。

 いくつかの候補が思い浮かんでくる。

 どうやら進化の種は上手く発動してるらしい。

 ウサギの中で飛行できる存在って結構居るんだな。

 あ、そっか、ESPラビットも一応飛行はできるしマジシャン系も浮くことはできるから飛行に入るのか。


 もっと絞らないと。

 ソニックバードと対等に闘えて、ライゼン爺ちゃんから逃げ切れる速度を出せる存在を……


 ―― オーダー了解。飛行速度がソニックバード以上のウサギ型。検索結果、1件です。選択肢が他にないため強制進化を開始します。緊急時のため就寝保護モードを解除。即時進化を開始します ――


 あれ? なんか嫌な予感ががががががががあぁッ!?

 ビキリ、ゴキン、バギッ

 唐突に体内から鳴っちゃいけない音が鳴り響く。

 ソレは次第に全身に広がっていく。


 マズい、マズいマズいマズいッ! これ、なんかヤバい。

 頭が盛り上がる。

 まるで身体が制御不能になったみたいだ。

 背中が膨れ上がる。骨がせり上がる。

 ゴキンと折れた骨が肉を突き破る。


 声の無い声で思わず叫んだ。

 悲鳴を上げるがウサギの声帯では声にならない。

 痛い痛い痛い痛いっ、額が割れる。背中がちぎれる。


 視界の先に、こちらへと突撃して来るソニックバードが映る。

 まだ変身中だぞ馬鹿野郎。

 この痛みの中アレの突撃を避けろってのか? 無理だろ。クソ、ぶ、物質透過ッ!


 避けるのは無理と判断し、咄嗟に透過スキルを使用する。

 一瞬遅れ、ソニックバードがくちばしを前に特攻。俺の身体に突き刺さる。

 そしてそのまま地面に激突、する寸前でV字飛行で空へと逃げて行った。


 驚いたか? ウサギさんに攻撃は効かないんだぜ。まぁ今のはかなり焦ったけど。

 ぎ、ぎゃあああああああああああああああああああああ!?

 背中が、背中が割れた!?

 ばくって今、ばくばくって二カ所裂けた!?

 いや、違う。何か、身体が、おかしい。


 脳内に何かが流れ込んでくる。

 これは、飛行の仕方?

 無意識に使用される飛行する時の飛行方法か。

 多分だけど飛行種に進化する際、魔物が直ぐに飛べるようにこの能力が付いてくるようだ。


 背中から分かたれた骨は肉付き翼へと変化する。

 額から突き出た二つの骨は角へと変化する。

 俺の身体から痛みが徐々に引いて行く。


 ―― 個体名うさしゃんは強制進化により種族名ヴォルパーティンガーに進化しました ――


 進化終了とともに、俺は即座に飛び上がった。

 ヴぉるなんとか? 確認するのは後だ。今は……奴を倒す!

 ばさり、初めて扱う器官であったが、脳内に流れ込んだ飛行方法の御蔭で迷いなく羽ばたける。

 自然とキィ――――ッと声が出た。

 それは超音波を伴って周囲に広がる。


 まるで新たな脅威の産声のように、声を聞いた鳥たちがばさばさと逃げだす。

 唖然としているソニックバード。

 今のうちに身体の確認か。否、そんな事はいつでも出来る。

 ただ、空のように青く透き通った毛並みの中、視界に映る頼もしき翼、それがあれば今はいい。


 力強く羽ばたく。

 その加速力は呆然としていたソニックバードがはっと我に返って逃げようともがく、そんな羽ばたきを一瞬で嘲笑う。

 俺の体当たりが直撃し、ソニックバードは無様に落下していった。


 パリ。俺の頭上で何かが集まる。

 パリパリ、パリバチ、バチバチバチ。

 それは雷撃が集まる音だった。

 額から突き出た二つの角の中心に、二つの角から集まった雷撃が包球を作りだす。


 喰らえ相田ッ、これが必殺のぉ……なんか集まった雷撃攻撃だっっ!! 名前募集中、なんてなぁ!

 墜落中のソニックバード向けて、良心の呵責なく俺は雷撃を打ち放った。

 落ち着いたらこの能力についても確認しないとな。


 雷撃は見事直撃。

 なんか凄い絶叫響かせてるんだけど、そんな威力高かったのかこれ?

 ぷすぷすと焼け焦げた鳥が地面に激突する。

 うわぁ、こりゃ死んだわ。


 警戒しながら近づいてみる。

 うん、アイテム入手ダイアログ出てやがる。

 すまんな相田。折角転生したみたいだが俺に敵対したのが運の尽きよ。


 迷わず成仏、というか転生してくれよ?

Wolpertingerの豆知識

ヴォルパーティンガーはウサギの中でも特殊で、角と翼を持つウサギである。

ヴォルパーティンガーを見つけることが出来るのは、若く美しい女性のみ。且つ、満月の夜の時のみという条件がある。

ドイツ・バイエルンのアルペン森周辺に生息すると伝わる伝説的動物。もちろん実在はしない幻獣。

実際には癌化して膨れ上がったウサギを見間違えた説が最有力候補。

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