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勇作、VS変なウサギ

 人間二人から逃げ切って安堵していたウサギ。

 まさか横から掻っ攫われるとは思っていなかっただろう。

 間抜け面した人間共を出し抜いて、俺は獲物の奪取に成功した。


 これで今日は豪勢なウサギ肉である。

 生のまま踊り食いだ。活け造りだ。

 毛皮を全部毟り取ってこいつの見ている前ではらわた引きずりだして……くく、楽しみだなぁ。


 人間共は俺を追って来れない。

 もはや豆粒の如く、その姿は既に見えない。

 奴らは所詮地を這うしかできない愚図どもだ。空を飛べるようになった俺とは違う。

 そうだな、その内人間を喰ってみるのも、面白そうだ。

 まずはガキから、女、そして兵士や冒険者。

 倒せば倒す程俺の実力も上がって腹が満たされる。最高じゃないか。


 これからの未来に笑みを浮かべていると、突然足元から衝撃が走った。

 予想外の攻撃に変な声が出る。

 衝撃で緩んだ足からウサギが落下してしまった。


 チッ、思わず足放しちまった。

 ウサギが死んじまうな。

 でも肉は残るか。あんまし飛び散らないでくれよ? 食べる場所くらい残しておいてくれないと困るんだからな。


 地面に激突し赤い花を咲かせるだろうウサギに一先ず黙祷を捧げた俺は、しかし空中で身を翻し、周囲の風を操ることで落下速度を減らすウサギを目にする。

 ソニックバードになった御蔭か風の動きを見る目があるのだ。

 上昇気流となった風がウサギの速度を緩和、そして見事地面に着地するウサギ。

 元気に飛び跳ね自身の異常を確認し始める。


 嘘だろ?

 ただのウサギのはずだろ? なんでこの高さから落下して平気なんだよッ!?

 意味わかんねぇ。あいつはただのウサギじゃないのか?

 ……いや、むしろ、なんかやる気になってきた。ぜってぇ喰うっ。


 その場で旋回すると同時にウサギに狙いを定めて急降下。

 もう来ないだろうと思っていたのだろうか、上を向いたウサギが驚くように眼を見開く。

 逃すわけねぇだろが! テメェは俺に喰われてりゃいいんだよっ!

 片耳無くして逃げ切った先は俺の腹の中だ馬鹿がっ!


 突撃した俺はくちばしを開く。

 ブチ殺してやろう、と思った俺は、しかし次の瞬間全身を揺さぶる悪寒を感じた。

 身の危険を感じた俺は攻撃をキャンセルして身体を横にずらす。

 刹那、何処からともなく出現した神々しい槍が俺の直ぐ隣を飛んで行く。


 なん、だ? 今の?

 放物線を描いた槍が地面を穿つ。

 ズドンと衝撃が走り地面が抉れ飛んだ。


 ふざけやがって。

 あんな奥の手があるとか聞いてねぇぞ!?

 なんだよ槍投げてくるウサギって?

 風纏いのスキルがなかったら掠ったぞ今の?

 しかも掠っただけでヤバそうな威力の槍だった。


 直ぐにUターンして空で旋回。

 これは慎重に倒さないとウサギなんかにやられかねないぞ。

 遊びは無しだ。

 生かしたまま食べるのは諦めよう。

 確実に息の根を止めてから喰う。


 まずはソニックショット。

 これで終わりになれば簡単だ。

 でもこの変なウサギはおそらくこれを回避するだろう。

 どうだ、強敵か、強敵に見せかけただけの雑魚か! どっちだ!?


 当たるか? と思ったが案の定だ。

 唐突に空間が揺らぎ、見えない筈の風の弾丸を揺らぎで可視状態に変えやがった。

 即座に避けてみせる。


 なら、これだ! ソニックスラッシュ連打。

 ただし、この斬撃の連撃は空気の揺らぎですぐにばれる。

 別にこれで仕留めようなどとは思っていない。

 出来るだけ近づき、近距離からの……疑似ファイアブレス。

 爆裂発火の能力を使って風で拡散させる俺が考えた攻撃だ。ブレスを吐いたみたいに見えるが、吐息攻撃じゃないので疑似を付けている。


 周囲が風魔法の斬撃。避ければ確実に切り刻まれる。そして頭上からは疑似火炎ブレス。

 さぁ、どうする? 切り刻まれて死ぬか、丸焼きになるか、好きな方を選びなうさ公!

 テメェは所詮獲物なんだよ。狩られる為に存在する生物なんだよっ!!


 火炎ブレスが地表を舐めつくす。

 不可視の斬撃が地面を抉る。

 中心に居たウサギは完全に丸焼き状態だ。

 ふっ。楽勝だったな。出来れば生肉食いたかったが仕方ない。

 焼いた方が美味いっちゃ美味いだろうから結果オーライ……ん?


 気のせいか?

 いや……気のせいじゃねぇ!

 あいつ消えやがった! 何故だ。どうやって?

 逃げ場は無かった筈だぞ!?

 何処行きやがった?


 慌てて周囲を探る。

 見当たらない。

 クソ、あの野郎、どこだ?

 絶対に近くに居る筈だ。


 どこだ? 森か? 森……居たッ!

 木の陰にいるウサギに思わず舌舐めずり。

 何らかのスキルで逃げたのだろうが、残念だったな。


 こちらには気付いてないようだったのでゆっくりと降下し、一気に急降下でトドメを刺す。

 その、つもりだった。

 様子がおかしいことに気付いたのは、急降下をしかけた直後。

 ウサギの身体がぼこりぼこりと波打ち、まるで癌化したように不格好に膨れ上がる。

 なんだ? ヤバい。何かヤバいぞ、急いで殺さないと、アレは、危険だっ!

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