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うさぎさん、意図せず人間達を危機に落とし入れる

 ひぃぃ、友人の捕食されシーン!?

 いやああああああああっ!?

 べろりと舌で口元を舐め取り、我が親友を喰い殺したクロが俺を見下した。

 あかん、これ、次の獲物に決まちゃってる!?


  ―― 常時スキル:復讐者 が発動しました! ――


 今発動されてもどうしようもないわっ!

 逃げるしかない。だが脱兎で逃げてコイツから逃げられるか?

 否、無理だ。逃げ切れる気がしない。向こうは狩猟民族、お犬様だぞ!


 どうやらクロもこっちが打つ手なしの袋の鼠だと気付いたようで、クックと嗤う。

 変身したところでどうにもならん。しかも後ろには三匹のコボルト。

 詰んでる、逃げ場が無い。

 方法は何かないか。脱走? ここから逃げきれるか?

 だっそ……あ、そうか、一つだけ。方法がある。

 やるか? いや、もうそれしかない。


「グルルルル。ガァッ」


 襲いかかるクロ。

 跳びかかって来たブラックコボルトを無視して、俺は即座にスキルを発動する。

 発動! 中の人消えまーすっ!!


 当然、対象は自分だ。シルクハットを取り出し自分が被る。その瞬間、視界が一瞬にして消えた。

 シルクハットに一瞬眼を塞がれたが、次の瞬間には頭にシルクハットが被さっていることもなく、ただの兎さんが見知らぬ森に存在していた。

 目の前に迫っていたクロのアギトは消え去り、代わりに見覚えのない森の景色が広がった。


 お、おお、成功? 成功した?

 シルクハットは? 一応俺の持ちモノだったからかアイテムボックスに戻っていた。

 凄いなこのスキル。緊急脱出に最適だぞ!?

 シルクハットで自分を隠し、ランダムワープ。どこに出るかは分からないけど、生き残ることを考えればこれ程いいスキルはなかなかない。


 ……で? ここ、どこ?

 

 全く知らない森にしか見えないが、多分ドルアグスの森のどこかだろう。別の森に向かったとは思えない。なんか森として居心地いいし。ドルアグスさんの加護がある気がします。

 一先ず周囲を探りながら見覚えのある場所に向かおう。

 出来ればクロに会いませんように。グリズリーより強い犬とか絶対勝てないし。


 うぅ、酷い目にあった。いや、遭う前に逃げだせたっちゃ逃げだせたけど。

 索敵をしてみたが周囲に敵性存在は居なかった。

 危険察知があっても気を付けてなきゃあそこまで近づかれても分からないのか。おそらくレベル1なのが悪いんだろう。

 ただ、索敵に反応が合った。少し先に複数の存在を確認。あまりにも数が多く、敵性存在以外にも無力ッぽい感覚も数体居たので、もしかしたらという思いでそちらに向かって見た。


 すると案の定。村です。

 人間の村であります隊長!

 目に見える位置からすると、どうやらこの前連れて来られた村みたいだ。


 ただし、前回とは逆の入り口側に出てきた。

 ランダム移動とあったけど、結構村の近場に出現したみたいだな。

 良かった。世界の裏側とかに出たらどうしようかと思ったけどランダム移動も半径数キロメートル以内とかそれくらいなんだろう。

 まぁ、この辺りからならなんとか家に辿りつけそうだ。

 人間に見つからないようにしなきゃいけないけどな。と、安堵の息を吐いた瞬間だった。


「ウオオオオオオオオォォォォォォォンッ!!」


 物凄い声が轟いた。

 びくっとした俺よりも、村に居た兵士達が慌ただしく動き出す。

 何があった?

 突然居なくなった門番の隙を付いて村へと入り込む。

 物影を移動しながら対面の入り口に向って行くと、村の中央辺りに複数の人間。

 どうやら非戦闘民が集められているようだ。


 門番の兵士が慌ててこっちに来たことが問題だったようで部隊長か誰かに怒鳴られていた。

 慌てて門を守りに戻る兵士さん。御愁傷様です。

 けど、もう一方の門番さんは一人たりともこちらに来てない。向こうで何かあったな。


 中央部分を遠回りしながら村の中を移動する。

 時に牛舎を駆け抜け、鶏の背中に飛び乗り、人間の目を掻い潜りながら戦場を見に行く。

 うわ、暴れるな。鶏鳴くな!?

 鶏舎から脱出して一息付いていると、見知った顔があった。

 あ、あいつらようやく今逃げてるのか。


 見知った子供たちを見付けた俺は物影から覗く。

 男の子に先導されて五歳時と三歳児だったか? が走っている。

 その後をレットだっけ? 男を背負ったマールちゃんが走っていた。

 走るというか小走りだね。


「ねえちゃん。レット兄ちゃん俺が持つよ!」


「いいから。全員村の中央に行って! 速く皆の安全確保してお爺ちゃんの助っ人に行かないと! 年寄りの冷や水なんだから。兵士さんたちに任せておけばいいのにっ」


 人間達が駆け去るのを待って俺は村の入り口側へと駆け抜ける。

 入口横の柵に飛び乗ると、数匹のコボルトが兵士と闘っていた。

 そして、兵士の一人が相手取っているのは……黒いコボルト。


 お、おいおい、さっき逃げた時に居たクロさんじゃありませんか?

 なんでここに……

 そう思って、気付いた。

 俺のせいだ。


 何しろクロたちと会ったのはここから少し北に行った場所。

 消えた俺を探していた彼らは人間たちの村を見付けてしまったのだ。

 ただの兎よりも喰いでのある人間を。

 うっわ、これ俺が人類存亡の危機招いちゃった感じ? やばい責任感じちゃう。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 『中の人消えます』の移動距離が、半径数メートルになってる。数キロメートルの間違えかと
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