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真廣、行動開始

 元道真廣は座禅を組み、目を閉じたまま座っていた。

 周囲からはいくつかの話声が聞こえるが、彼女にとってはどうでもいいことだ。

 周囲の声はクラスメイト、皆戸惑っている様子である。


 それはそうだろう。ナリアガリッパー王国の王都にやってきたら国王に呼ばれて歓待を受けた。

 しかし眠り薬を盛られ、気が付けば地下牢に幽閉。首には奴隷の首輪を掛けられていたのである。


「ど、どうすんだよこれ!?」


「Oh、慰みモノにされて無いだけマシでーす」


「マシって、ルルジョバ、今は良いかもだけどこれからもとは限らないのよ、どうすんのこれぇ!!」


「参ったな、こんなことになるとは、この国は信じちゃダメなとこだったみたいだ」


「真壁は能天気過ぎだわ。はぁ、折角隷属野郎から逃げ切れたと思ったのに……」


 上田幸次、ルルジョパ、赤穂楓夏、真壁莱人、中浦沙希が口々に告げているように、今自分たちが置かれている状況はかなり危機的状況である。

 隷属の首輪のせいで主人に逆らうことが出来ない。

 その主人が誰かもわからない。

 牢屋に入れられている。

 王国全てが敵。


 そして救助は期待できない。

 つまり彼ら自身で何とかしなければならない。

 さて、と目を瞑ったまま、真廣は考える。

 確か皆の固有スキルは……上田幸次は打撃強化、ルルジョパは舞踊拡大、赤穂楓夏は瞬間移動、真壁莱人は韋駄天、中浦沙希は道連れ。そして自分の能力は……絶対斬撃ハバムモノナシ

 なるほど、自分以外ならば助けられる可能性はありそうだ。

 問題は自分だろう。どうしたものか。


 無数の可能性を探す。

 逃げ切ることが出来ればよし、殺されるのならば仕方無い。

 ただ、問題は……隷属状態で仲間に嗾けられること。切腹でもすればいいのだろうか?

 ああ、そこだけが問題だ。だが、算段は付いたのだ。


 ゆっくりと目を開く。

 逃走に必要なのは韋駄天と瞬間移動。二人が肝になる。

 攻撃は上田が適任か。中浦は死んだ時にこそ発揮される力なのでルルジョバともども逃げに徹して貰おう。


 では、いざ、参るッ。

 座禅から立ち上がった真廣に視線が集中する。

 何する気だろう、そんな疑問を浮かべる面々に、真廣は腰だめになり、己の刀に手を掛ける。


「ま、真廣さんっ!?」


「全員、動くなよ、手元が狂う」


 言葉と共に踏みだし、刀を引き抜き一撃、二撃。

 呆然としている仲間に剣撃を浴びせて行く。


「ひゃわ、え? あれ?」


「おー、ファンタスティック!」


「うわ、喉元スパって、え? 死んでない?」


「怖っ、ちょ……」


「んっ。凄いわね。紙一枚だけを斬る正確な斬撃だわ」


 行ったのは奴隷の首輪だけを切り裂く居合斬。

 絶対切断のスキルだからこそ出来る首輪斬である。


「これでお前達は奴隷ではなくなった」


「おお、さすが真廣さん!」


「って、元道さんは?」


「さすがに自分の首に居合斬は行えん」


「それって……元道さんだけ奴隷のまま!?」


「仕方あるまい。後はお前達の脱出だ。上田、お前が攻撃役だ。近づく敵を薙ぎ払え。赤穂、真壁、はスキルを使って皆を逃せ。ルルジョパ、中浦は、死なないようにしっかり逃げろ」


「真廣さんは!?」


「私は、逃げても命令次第でお前達に迷惑をかけかねんからな。ここに残るさ」


「そんなこと許せるわけ無いだろッ」


「そうよ! 元道さんを残してなんて出来る訳ないわ」


「しかし、私は……」


 なおも言い訳しようとした真廣の両脇を赤穂と真壁が掴み上げる。


「お、おい?」


「逃げるなら全員だ。命令なんてさせてたまるか」


「そうだよ。元道さん、最悪私のスキルで助けるからね!」


「全くお前達は……分かったから降ろせ。まずは牢屋を斬る」


 仕方ないな。と溜息吐いて、皆と一緒に脱出する決意をする。

 それと同時に、もう一つの決意も、だ。


 牢屋を切り裂く。

 分厚い鉄格子はズズンと音を立てて倒れる。

 そして空いた穴から皆が脱出を開始した。


 さすがに音がでかかったようで、直ぐに兵士達が殺到する。

 だが、打撃強化の上田によるスイングと、真廣の剣撃で一気に蹴散らして行く。


「馬鹿な、勇者たちが脱走!?」


「宰相様に報告を!」


「奴隷の首輪があるのだぞ!? 逃げられるものか!」


「奴らの首にはありませんっ!!」


「馬鹿な!?」


 驚く兵士達をなぎ倒し、一気に外へと飛び出した。

 慌てて格子を降ろし閉じ込めようとする兵士、しかし真廣によりこの格子は一瞬で切り裂かれる。

 跳ね橋を上げようとする兵士達。だが、跳ね橋が上がるより早く皆が走りだす。


「真壁!」


「任せろ!」


 ルルジョバと沙希を小脇に抱え、莱人が全力疾走。

 韋駄天スキルで超加速した彼は上がりだした跳ね橋をジャンプ台にして一気に駆け抜け飛んだ。


「嘘だろっ!?」


「残りは私達だけか」


 跳ね橋が上がり切る。

 そこに真廣が到着と同時に居合斬。

 跳ね橋が破砕され、外が見える。


「上田、ちょっとだけ一人でよろ」


「え? マジ!?」


 真廣の手を掴んだ楓夏が跳ね橋の先に居る莱人へと視線を向ける。


「行くわよ、ぶっつけ本番瞬間移動!」


 莱人の隣へ瞬間移動を指定してスキル発動。

 次の瞬間、真廣と楓夏は莱人の隣へと移動していた。


「次ッ!」


 もう一度残っていた幸次の傍に瞬間移動して、彼を捕まえ最後の瞬間移動。

 こうして真廣たちはナリアガリッパー王国から脱走を果たしたのだった。

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