うさぎさん、神様から指名依頼を受ける
ユルルング洞窟から数日。野宿を繰り返し、たまにピスカときゃっきゃうふふなふれあいをしていた俺、お荷物としてアンゴルモアも着いて来ているのが邪魔ではあったが、なんやかんやで結構有用らしいのでそのまま一緒に歩いている。
お爺ちゃんの進行速度が遅くなったのが一番の理由だ。そうじゃなければアンゴルモア放置して二人で逃げてるところである。
お爺ちゃんに感謝しろよ。
いや、そもそもが追われてなければ問題じゃなかった訳だけど、そうなると俺が原因になっちまうからそこは考えない方向で。
で、そんな俺たちは今、なんかよくわからない天からのメッセージを受け取ってます。
一応全世界に発信しているらしいんだけど、神って本当に居たんだなぁ。
地球の方にも神様っていたんだろうか?
―― 邪悪な女神の勇者がこの世界に四体ほど紛れ込んでおる。彼らはこの世界を滅茶苦茶にするためにやってきたのじゃ、なんとか、なんとか皆で力を合わせて撃退してほしいのじゃ!! ――
ええぇ……
なんだその緊急強制ミッションは?
女神の勇者ぁ?
「アンゴルさんを倒せばいいでありますか?」
「いや、おちつけ。女神に知り合いなんていな……あ、いるわ駄女神」
「よし、一体殺すであります」
「待て待て待てッ、落ち着こう、違うから、俺じゃないからっ!!」
「悪人は皆そう言うであります」
「え、冤罪ですよ、冤罪かかった人も絶対全員そう言うからぁ―――――ぎゃあぁ!? 本当に撃ちやがった!?」
あはは、こらこらピスカ、弱い者イジメしちゃだめだよ。
「失礼したでありますご主人様。こんな雑魚邪神が女神勇者のわけがありませんでしたであります」
そうそう、こんな自滅するような雑魚い邪神様が神が恐れる存在な訳がないじゃないか。
「なんかウサギの御蔭で助かったっぽいけど凄い酷いこと言われた気がする!?」
「何を訳の分からないことを言っているでありますか。それよりほら、見てくださいアンゴルさん。ご主人様のもっきゅもきゅ顔。なんだか愛らしくありませんか!」
「いや、知らねぇよ、つかどうでもいいよ」
―― あ、それから、こっちは個人回線なんじゃが、うさしゃん、ぴすか、あんごるもあの三名 ――
ファッ!?
―― その近くに女神の勇者3人ほど来とるからなんとか倒しておくれ ――
え、指名されちゃってるんだけど、なんでさ!?
俺の名前いつ知った! 待てよ、あの神、確か名前ザレク。いやにフレンドリーに話しかけてくると思えば、こいつのキズナ値無駄に高かったんじゃなかったか。確か名前は、ザレク!
―― よろしくなのじゃ ――
くそう、なぜか脳内に再生されるのはロリババァの愛らしい声。でも名前からしてジジイっぽいんだよ、畜生、ジジイの頼みなんて聞きたくないが、聞きたくないがぁ……俺の脳内が自動で和風のロリババァが両手合わせてキラキラ眼で哀願しているようにしか思えなくなっているっ!!?
「どうするでありますか?」
まぁ、せっかくだし受けようかな。
でも、まぁ今は食事の時間なので。
「ではではぁ、私はご主人様を観察させていただくでありますよ。ああ、愛らしいおめめでもきゅもきゅしてるであります」
「なんなんだこの主従。つかウサギ本当に意思疎通できてんのか? ただのピスカさんの設定という可能性も……」
アンゴルモアはなんか考え始めたようだ。どうでもいいので放置で。
「はぁ~癒されるでありますよぉ~」
うん草うめぇ。
ここの草は芝か何かかな。草原の殆どがこの草なんだよなぁ。
これはこれでうまいんだが、出来れば他の草も食べたく思います。
「はきゅ~ん。最高でありますご主人様ぁ。もごもごでありますよぉ。もきゅもきゅでありますよ。ふわふわもこもこもっきゅもきゅでありますよぉ~」
ピスカが乙女モードに入っている。可愛いなぁ。これはもう襲っちゃうしかないだろうか?
しかしアンゴルモアがいるからちょっと遠慮しちゃうんだよなぁ。
ユルルング洞窟出てからは一度も致してないし。そろそろもっこり一発行っちゃうか。どうせそのうちアンゴルモアにはばれるだろうし。あ、でも俺の女に手をだしたら股潜るぞ!
「見てくださいアンゴルさん。我がご主人様を。もきゅもきゅしてるでありますよ。もっきゅもきゅにしてやんよでありますよっ!」
ピスカが俺を指差しアンゴルモアに自慢している。
とはいえウサギさんの魅力が全く分かっていないアンゴルモアはどうでも良さそうだ。
「あー、はいはい」
そんなどうでもいい答えを返すアンゴルモア。そこから一時間程、オイラが草を食み続けたので同じ問答が続く。なんか、ピスカが昔のゲームで町の入り口に居たモブキャラみたいになってきたな。同じ言葉しか言わなくなっちまったぞ。
流石にアンゴルモアも呆れて来たようで、はぁっと空を見上げる。
むっとしたピスカは俺を両手で持ち上げ掌の上に乗せると、アンゴルモアの目の前に持って来た。
「ちょっとアンゴルさん、我がご主人様がもっきゅもきゅなのでありますよ!? なぜ魅了されないのでありますか。見てくださいこのもきゅもきゅ感を!!」
ピスカさん、俺もう少し草食べたいんだけど、なんで野郎同士顔を合わせてもっきゅもっきゅしなけりゃならんのだ。
「あーそうだな。もきゅもきゅしてんな。ンでピスカだっけ?」
「正式名称PS2037-K、通称ピスカであります。なんでしょうアンゴルさん」
「さっきの話聞いただろ。女神勇者とかいうのがこの世界に四体くらい降りて来たってよ」
「はい。お聞きしているであります」
「お前ら神様から直で闘ってくれって言われたよな」
「そうでありますね。ご主人様に神が直で言って来ましたであります。さすがご主人様、神に頼まれる程に重用されているのでありますよぉ」
さすがですご主人様ぁ。といいながら手に持ったままの俺を高く掲げでくるくると回りだすピスカ。
何だこの状況?
もぐもぐしながら回される俺、止めてください、吐くぞ?
「凛と命……元気してっかなぁ。ああ、不幸だ……」
ほら見ろ、アンゴルモアが思考の海に旅立っちまったじゃないか。




