うさぎさん、歩いて目指す
アンゴルモアが強制的に仲間になった。
正直強いっちゃ強い。でも不幸だ。
そりゃもうなんでそうなるのっ!? ってくらいの不幸である。
俺らと一緒に歩いているだけで、隕石に直撃すること2回。
身体の機械が動かなくなること1回。
そんな状態で魔物の群れの大移動に巻き込まれて散々踏みつけられること1回。
ヌーの大移動を思わせる物凄い大群が移動して来たので俺とピスカは即座に逃げた。
身体が動かなかったアンゴルモアは悲鳴を上げながら巻き込まれて行った。
その後、過ぎ去った魔物達に突っ込む巨大肉食獣がアンゴルモアを踏みつけていた個体だけを綺麗に平らげて行った。
不幸のおすそ分け、めっちゃヤバいな。
地割れにも落ちかけてるし、かと思えば間欠泉が噴き出すようにアンゴルモアが噴き上がって助かってるし、運が悪いのかいいのかわからんな。
本人曰く、死に直結するような不幸はむしろ死ぬことこそ幸運だ。と心の底から思ってれば普通に不幸にも生還しちまうんだよ。とのこと。
その思考回路、ついていけません。
どうも不幸過ぎるからこそ身に付いた生還方法らしいけど、心の底からって無意識の部分じゃん。怖いわこの人。さすが魔神と言われるだけあるな。思考回路が滅裂過ぎる。
「絶対にピスカに触れないでくれませんか、でありますよ」
「へぇへぇ、触れる気はございませんよ。で、何処向かってんの?」
「レッセン共和国であります」
「いや、国名言われてもわからんよ?」
そりゃそうだろうね。この世界来たばっかだもんね。
あ、そうだ、ピスカさんやこいつがどの世界から来たのか聞いておくれよ。
「アンゴルさんはどのような世界から来たのでありますか?」
「俺か? なんてーのかね、この世界は魔法が主だろ。俺のいた世界は科学が発達した世界でな」
「ああ、それでその身体にでありますね」
「いや、これはまた別世界でな。いろいろ不幸が重なった結果だ」
うん、まぁなんとなく理解した。この世界みたいに異世界に召喚されてなんかあって改造されちゃったんだな。俺みたいな怪人ではなく半分だけ機械化という見た目からして人外化まったなしの改造を。
「で、俺がいたのは地球って星の日本って国でな。ラナリアっていう秘密結社が国を牛耳り始めたらしいんだ」
地球!? 日本!? 秘密結社!?
こいつまさか、俺のいた世界の住民か!? いや、それはないか。こんな不幸な存在が近くに居る訳が……
「秘密結社、でありますか。ご主人様は秘密結社インセクトワールド社の元怪人でありますよ。私もインセクトワールド社元ドクターの方々に作られた最終兵器であります」
「マジか!? 俺の知り合いにもインセクトワールドの奴居たぞ。ってかラナリアってのがインセクトワールド社の後釜なんだけどな」
マジで!? え? 何ソレ、つまり俺の知り合いの知り合いがこいつなの!?
なんだその的中率。ご近所さん過ぎだろ、なんで似たような場所から異世界転移して来てんのさ!?
ピスカ、せっかくだし詳しく聞いてくれ!
「えーっと、ではラナリアの首領は一体誰がなったのでありますか。確かご主人様の死ぬ前にインセクトワールド社の首領さんが殺されたと聞いたでありますが?」
「え? ああ、あの首領さん生きてたらしい。ウチの学校にも来てたぞ」
ファッ!?
あの首領死んでなかったの!? じゃあ、俺って絶望して死ぬ必要……あ、違うわ、俺が死んだの不慮の殺人だった。
畜生、あの女絶対許さん、俺を殺しやがってぇ。
というか、あいつってどうなったんだろう? 警察に捕まったのかね?
もしもクラスメイト達と一緒にこの世界に飛ばされていたとしたならば……
そりゃもう遠慮はせん、徹底的に……ウサギさんスペシャルを喰らわせてやるぜ!
「ド変態、であります」
「なんでさっ!?」
話を区切るように唐突に告げたピスカ。対象は俺だったが、目の前に居たのはアンゴルモアだった。
結果、自分がド変態と呼ばれたと思ったアンゴルモアが意味不明過ぎてツッコミ入れる。
「さぁて、相手の動きも凄く鈍くなっているでありますし、アンゴルさんと共に歩きでも充分辿りつけるでありますね」
あ、じいちゃんの動きが変わったのか? 乗り物から降りたとかかな?
―― 緊急事態じゃぁッ!! ――
ホワォ!? な、なんだ今の、視界に変な白い文字が!?
「こりゃ、なんだぁ?」
「唐突、でありますね。何でありましょう?」
―― 皆の者初めまして、神である ――
神、だとぉ!? なんじゃそれ!?
なんか世界中の人に連絡している緊急事態なのだとか。
折角なので草原の上に飛び降り、草を食みながら神の御言葉を聞くことにする。
こいつが俺をウサギにしやがった張本人、か。いつか絶対に後悔させてやるからな!
ここから数日は俺のクラスメイトが全員一般人じゃなかった件EXに出てくる話と被っています。
出すかどうか迷ったのですが丁度この時期に闘ったという事実を伝えるために載せることにしました。
一応ウサギさん目線での話に変えてますが会話内容などは変わっていません。




