うさぎさん、襲撃される
森に逃げ込んだ俺は一直線に泉へと向かう。
泉に辿りつくと身体を洗い臭いを消しておく。
今回泉にはモモンガみたいなのと鹿、ついでにコボルトっぽい犬型獣人が数匹水浴びしていた。
楽しげに水を掛け合うコボルト達、迷惑そうにしながら鹿が隣で水を飲み、モモンガが泉で手を洗いながらこちらを時折チラ見する。何見てんだよぉ、兎さんだよ文句あるか?
当然ながら注目を受けていたが、親指消えまーすを行ったら驚いて呆然としていた。
どうやらマジックのネタを知らない人が見ると親指が本当に消えたみたいに見えるようだ。
それは良いんだけどうさぎの親指ってどこにあんの?
うん、これ、驚き顔見る時は楽しめそうだな。全く持って生存には無意味だけどな。
マジックもう少しいいの無いのかよ。
機会があればドルアグスの旦那にも見せてみるかな?
それならもう少しマジックネタ覚えて色々やってみるか。人体切断とか出来るようになるんだろうか?
いつもの祠に戻ってくる。
祠の中には母ウサギと四匹のウサギ。おお、兄弟たちよ、今のところ誰も死んで無いようだ。
戻ってきた俺に驚いた顔をした母ウサギだが、直ぐに記憶の中の自分の子供と一致したのだろう。再びもっきゅもっきゅし始めた。
えーっと、あのウサギはどれだ? 雌ウサギは一人だけか。多分このウサギがいつも一緒に寝てたウサギだろう。お姉様、一緒に寝ましょう。
お姉様の周囲は発酵して凄い臭いになっている。これ絶対動いてないだろ。
お姉様を無理矢理引っ張ってその場所からどかし、洞窟の奥へ。
発酵した地面は砂を掛けて埋めておく。
なーんて感じで寄り添って眠る。今日は疲れたよ。
「キィ―――――っ!!」
な、なんだぁっ!?
突然の声に思わず跳ね起きた。
眼を開くと、真っ暗だ。いや、日の光が多少入ってくるはずの入口が塞がっている。
塞いでいるのは暗いから分かりづらいが緑の肌を持つ小さな鬼。ゴブリンだ。
必死に手を伸ばしてウサギを捕獲しようとしているのだが、流石に上半身の頭と片手を入れるとソレ以上が穴につっかえ入ってこれないらしい。
運が良かった。今まで寝ている場所に居ればゴブリンに掴まっていただろう。姉さんが酷い臭いだったので移動させた御蔭で俺もお姉様もゴブリンの腕が届く範囲からさらに奥に逃げることに成功していた。
穴につっかえてるのにそれでも必死に入って来ようとするゴブリンくん。
無茶しやがって……ぶっ殺す!
ゴブリン風情が、俺の熟睡の邪魔しやがって!!
名前:ゴブぶ
種族:ゴブリン ♂
Lv:4
HP:62/62
MP:0/0
TP:32/32
状態:普通 ∞s
スキル:
暴れまくり /周囲の被害を考えずに打撃を与えるスキル。
気合い溜め /次の一撃を攻撃力2倍にする。
種族スキル:
仲間を呼ぶ /嘶きで助けを呼びます。
か弱き犠牲 /群れのために弱い個体を犠牲に出来る能力。
異種間性交・可 /異種族との間で子供を授かることができる。
ふ、62か。31回の攻撃で倒せるな。
いくぜ、疾風怒濤じゃぁ!!
オラオラオラオラオラオラオラオラヒャァッハーッ!!
「ゴブッ!?」
「キィ――――ッ!!」
慌てるゴブリンに咆哮を浴びせかける。
びりびりっと震えたゴブリンが動けなくなったのをいいことに、俺の連撃が火を吹いた。
ゴブリンが絶叫する。だが、彼が動くより先にドロップキックがトドメとなった。
ふっ、オークにグリズリー、俺が倒して来た宿敵たちに比べれば、なんと雑魚な敵よ。貴様の腰布、貰っておくぜ。
臭い腰布をゲットした! てってれーっ。
いらんっつの。
ゴブリンが消えて行く。勝利の雄たけびを行おうとした俺は、再び影った入口に気付いて巣穴の奥へと逃げ込む。
新たなゴブリンがゴブぶ君同様にやってきた。
何度来ても同じじゃぁ――――っ!!
「キィ――――ッ!!」
「ゴブッ!?」
今度は疾風怒濤すら使わなかった。連撃でぶっ倒した俺はアイテムを回収する。
そして更なるゴブリン出現。
どうにも入り口前に数体のゴブリンがいて巣穴に入る俺達を捕獲しようとしているらしい。
入れ食い? こっちのな! 経験値になるがいいわ!!
「キィ――――ッ!!」
―― 身代わり を覚えた! ――
―― 不退転 を覚えた! ――
―― 中の人消えまーす! を覚えた! ――
うわーお。勝利の雄たけびと共に三つのスキルを覚えました。
一番最後のはおそらくレベルアップで覚えた奴だろう。
ゴブリンは結局六匹現れた。一応臭いで確認してみたけどこれ以上は出現しないらしい。全員仲間を倒された方法を律儀に守って倒されに来るとはな。馬鹿どもめ。
しかし、これって巣穴バレ始めてるってことだよな。これからも外敵が来ると思うとちょっと不安だぞ。寝てる時も警戒しとかないとな。




