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うさぎさん、脱走する

「もう、だから警戒されちゃうのよ!」


 はっと我に返ると、リックだっけ、男の子に近寄ったマールがむにっとリックの頬を抓っていた。


「いひゃいひゃいっ、馬鹿姉ぇ、ちがうっつってるだろっ。僕じゃないってば! コイツが勝手に着込んでたんだよ! 今日見にきたらこの服着てたって!」


「嘘言わないっ」


 自分で頬の引っ張りを引き剥がしたリック。必死に言い訳する。しかし、もぅっと両手を腰に当ててぷんすか状態のマールは聞く耳持たない御様子。

 ごめんなリック、これ、多分俺が進化したマギー・ラビットの常備装備みたいだ。

 マジシャンを志す為にタキシードとネクタイ、シルクハット常備なんだろう。ついでにステッキも持ってる。おお、武器持ってるじゃないか、使えるのかこれ?


「お姉ちゃん、ほんとーだよ。私が最初に見たもん」


「ねぇね、んとーよ」


 妹だろうか? 二人の幼女にまで言われ、リックの無実は晴れたらしい。

 不承不承マールちゃんがぷんすかモードを解除する、リックは頬を押さえてマールちゃんから距離を取る。

 しかし、マールは彼に視線を向けることは無く、俺に視線を向けて来た。


 おっと、ぼーっと立ってる余裕は無かった。

 良くはわからないが、俺はマールちゃんに拾われたようだ。

 おそらく存在進化で眠ってしまったせいで捕獲されてしまったのだろう。


「ま、まぁいいわ。とにかく、無事に起きたようで良かったわ」


「お姉ちゃん、ウサギさん飼うの?」


「うさしゃん好きーりあのたまねぎさんあげゆのーっ」


 玉葱なんぞ喰わされたら死ぬわっ! しかも俺を飼うだと。人間にテイムなんぞされてたまるか!

 しかし、どうやって逃げる?

 この配置、普通に逃げるのはムリだ。

 何か方法は……そうだ。今覚えたアレを!


 親指、消えまーす!

 俺は全員に見えるようにスキルを発動。

 すると左の手に右手を隠す動作が自動で行われる。

 気持ち悪っ。俺の身体が誰かに動かされてるかのように自動で動き出したぞ!?


「え? え? なに?」


「きゃぁーっ!? ウサギさんの親指消えた!?」


「いやーっ。うさしゃんしなないでーっ!?」


 マールちゃんは呆然、幼女二人は大パニック。リックはそんな三人にいや、ウサギの親指ってどこだよ。と冷静に突っ込み入れていた。

 それ、脱兎!

 現場がパニックになっている隙に俺はマールちゃんが出てきた扉から脱出。


「あ、待って!」


「ウサギさん逃げた!?」


「うさしゃんしんじゃだめーっ」


 あの幼女、リアだっけ? なんか変な勘違いしてないか。これは子供だましのマジックだからね! あ、子供か。

 廊下を走り抜けると下の方から複数の人間の声。

 階段を下りるのはマズい。おっと、このドア開いてるぜ。

 入った部屋にはベッドが一つ。

 造り自体はさっき居た部屋と変わらないな。ベッドに飛び乗り窓へと向かう。


「げふっ!?」


 おっと!? どうやらベッドに眠っていたらしい男の腹を蹴ってしまったらしい。

 気にせず窓の外を見る。

 うーむ二階か。しかしだ。俺は木昇りを持って……木昇りじゃ降りれないじゃないか!?


「ウサギさーん!」


 くっ。仕方無い。脱出!

 窓を器用に開いてアイキャンフラ――――イッ!

 俺は思い切り飛び降りた。


「あ痛っ!?」


 禿げたおっさんの頭を蹴り飛ばしくるくると回転しながら叢に着地。

 アブな。今のおっさんの頭が無かったら骨折しててもおかしくなかったな。

 偶然通りがかっていた禿げたおっさんに感謝して、俺は茂みから様子を伺う。


 おっさんは何だ今の? と周囲を見回し、何も無いことを確認、小首を傾げて子供のいたずらか? と自己納得して散歩を再開し始めた。

 なんというか、村長というよりはのんきに散歩してるただのおっちゃんって感じの人だ。多分ただのモブだろう。

 ありがとうモブおっちゃん。あんたの御蔭で兎は無事生還できたんだよ! 


  ―― マジック:脱出を覚えた! ――


 アレでか!?

 脱出マジックってかなり大変なんじゃないのか?

 っと、確認は後だ。今はとにかく森に逃げないと。


「うさしゃーんっ」


 マールたちが降りて来たようで、周囲を探しながら走りだしている。

 こちらにリアだっけか? 小さい女の子がやって来たのでそぉっと逃げだす。

 人に見つからないように茂みを走る。


 頭のシルクハットが邪魔だったのでアイテムボックスにブチ込んでおく。ついでに服もだ。

 装備普通にボックス入れれるじゃん。蝶ネクタイもステッキも入れておこう。

 よし、これで真っ白シロウサギ復活である。

 ふ、やはりウサギは裸が似合う。

 いやん、恥ずかしいから見ないで鹿さんっ。


 近くを歩いていたホーンディアを見付けたので二足歩行状態になって股間を隠していやん。ホーンディアは突然意味不明な行動を行った兎さんを見て小首を傾げていた。

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