うさぎさん、ツワモノ共が夢の後
「この依頼、旋風の風が引き受けたッ」
依頼ボードから奪取した柄の悪そうなお兄さんが手にした依頼書を無理矢理奪い取った男冒険者が満面の笑みで告げる。
依頼が受理され、やった! と勝利を喜ぶお兄さん。
が、そこで受付嬢に告げられた依頼内容に彼らのパーティーは凍りつく。
なんと外でワカサギ釣り大会があるのでその護衛三日間という依頼内容だったのだ。
町から出たくない為激戦の依頼を奪い取ったのに、まさかの外で三日。
想定外の出来事に男達は自失呆然となる。
柄の悪そうなお兄さんはしてやったりの悪役顔。あいつ、奪われるの前提でやべぇ依頼を手にして駆け込もうとしやがったんだ。
罠に嵌められた冒険者達は必死にキャンセルと告げるが、既に受理された以上キャンセルすれば経歴に傷が付く。
歓喜から一点、断末魔の様な悲鳴を響かせるパーティー。
その横で少年防衛団が和気藹藹とギルドを後にして行く。
これが仁義なき戦い。
騙してライバルを減らすもよし、気力で勝利をもぎ取るもよし、なんて熾烈な生存競争。
冒険者ギルドの闇を見せられた気分である。
「冒険者というのは野蛮でありますね」
この時間だけだけどな。
いやー、これはさすがにヤバいわ。街中の依頼が一段落するまで待つか。
俺たちはぼーっとバーゲンセールのワゴンに群がるおばちゃんたちの激闘に似た冒険者達を見守る。
人間観察だけなのに普通に数時間過ごせたよ。
ここの人間模様凄過ぎ。泣いて笑って喜んで。あるいは必死に抗った先で絶望して。
まるで蠱毒の内部みたいな熾烈な争いがしばし続いた。
そして、3時間後、依頼書が見事に消え去り、本日依頼にあり付けなかったパーティーが外の比較的軽い狩り等の依頼を持って溜息吐きながら依頼を受けに行く。
さぁって、そろそろ俺らもなんか仕事すっか。
ピスカに乗って依頼ボード前へと向う。
頭の上のアンテナ倒して発進ピスカロボ! 僕が一番ピスカを上手く使えるんだ! なんちって。
しっかし、ついさっきまで死闘が繰り広げられていたのに、なんか急に閑散としてるな依頼ボード前。
今残っているのは、乱闘騒ぎで伸されてしまった冒険者達の気絶体と、街中依頼を受けられなくてどうしよう、と戸惑う三つほどのパーティーだ。
一つはおっさんパーティー。厳ついおっさんたちなのに外は寒いから嫌なんだよなーとか、紫外線の照り返しで肌が……となんか乙女チックなことをほざいている。どっかのヤクザ映画に出て来そうな強面キャラのオンパレードなのに。
もう1チームは男女均整のとれたパーティ。
イケメン男と不細工ながらタンク役と思われる大柄の男。魔法使いの女性と一際綺麗なヒーラー少女。
なぜか綺麗な女の子はタンク役と手を組んでいらっしゃる。え、もしかして美女と野獣カップル? ちくしょう、なんかムカツク。あんな可愛い子がなんでさっ!?
「ご主人様、あれ男であります」
マジで!? 男の娘!? あのおっさんすっげぇデレデレしてるぞ。もしかして正体知らないのか!?
え? 普通に魔法使いの女より可愛いんですが!?
人体の神秘を見せられた気分だ。
残りの一チームは女性チームだ。
戦士のがっしり体格ながら綺麗な顔立ち。頬に爪だろうか? 三本の傷が入っているがむしろ野性味が増していい女に見える。まさに姉御肌といった容姿のお姉様である。
そしてタヌキかな? 獣人の女の人がいる。狸耳の女の子とかではなく、狸顔の二足歩行娘である。これはこれで、もふもふしてそうで素敵です。
斥候役だろうか? タンクトップと思しき鎧を着た軽装のお姉さん。ワイルドなポニーテールで目元がちょっと怖い。でも綺麗な人なのでなんというか忍者の頭目とかが似合いそうな女性だ。クールビューティーで腕組んで佇んでる姿とか良く似合いそうである。
魔法使いの少女はおどおどしている。
沈痛な顔をしているメンバーに声を掛けようとしてどう声掛けしたらいいか分からず戸惑っているようだ。
パッツンカットのセミロングで、薄い青色の髪。体つきは小柄なのだけど、どっかの鳥か何かをモチーフにしたらしいローブを頭にまで被っているせいで全身見えなくなっている。むしろ、鳥のぬいぐるみを着込んでいるような姿だ。
アレだな、アフリカあたりにいる呪術師の正装みたいな飾り羽一杯で鳥のお面付きの衣装みたいだ。まぁ、鳥の顔部分はフードになってるけど顔は今出してる状態だな。すっぽり顔まで隠せるローブとか、前見えるんだろうか?
最後にリルハみたいに大荷物を持ってるサポーターと思しき鹿娘さん。どっかのセ○トくんと違い角が生えている訳ではなく小鹿を擬人化した少女と言えばいいだろうか。身体を覆う栗毛がなんとも、鹿娘って何気に初めて見た気がするな。
まぁいい、ピスカこの娘たちに決めたぞ。共闘を持ち掛けるのだ。ふははハーレムパーティーじゃーっ。




