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天音、新たなる旅立ち

 コーライ村に戻ってきた面々は、村の入り口前で円陣を組んでいた。

 ドルアグス、アウレリスを交えての話し合いである。

 二体を交えたのは最高司祭たっての希望。どうやら彼ら話が出来る魔物の存在を中央ギルドに伝えるために二体に来てほしいと交渉したかったようだ。


 本来魔物との意思疎通は不可能。出会えば殺し合うしかないと思われていたのだ。

 それが間違いであったことの証明が中央ギルドで出来たならば、即座に全世界に知れ渡ることになるだろう。

 最高司祭としてはこんな世界的規模の大発見を自分がギルドに見せびらかすチャンスなのだ。ぜひとも彼らの協力を取り付けたいと必死になって誘っていた。


 しかし、二体の返事は鈍い。

 それというのも彼らには管理すべき森があるからだ。

 近くの村程度ならば問題無いが、何日も森を空けることになる町まで同行することも、いつ着くかもわからない最高司祭たちに合わせて移動するのも彼らにはあまりしたくは無いことである。


 森の守護者である彼らにとって森を守ることが最優先事項であり、その森を留守にする間に何かしらの問題が起こってはいけないのだ。

 確かに、問題が起きても対処してくれると信頼出来る存在が森に居るのならば別だ。

 残念ながらドルアグスもアウレリスも信頼出来る存在はいなかったし、どちらか一方が両方の森を守護してもう片方が戻ってくるのを待つ等といった面倒なことをする意味もない。

 彼らは結局は魔物。人間の都合を押しつけられても困るのである。


「どうであろうか? もし来てくれるのならそなたらの森に人間がむやみに立ち入らぬようにすることもできる」


『それはむしろ困るな。コーライ村とは持ちつ持たれつやっている。あそこの村は周囲の森の魔物からもたらされるドロップアイテムで成り立っているだろう。我等としても定期的にやってくる外の魔物を適当に狩ってくれる人間がいる方が助かるのだ』


 実は持ちつ持たれつだったようだ。

 魔物達としても人間という高経験値持ちが森に来てくれた方がレベル上げもできるし、いろいろとメリットがある。ただただ狩られるだけという立場ではないのだ。


『他にもいくつかメリットはあるが……ともかく立ち入らぬようにするのは我等への気遣いにはならん。まぁ森の核には近づかないでくれればそれでよい』


「それは失礼した。しかし、どうしても、ダメですか?」


『ふむ。我等は行けぬがその中央ギルドだったか、その付近にも森はあろう? 主と交渉すればよいのではないか?』


「それは、確かにそうですが、主に確実に会う術がありません」


『ふむ……少し待て』


 そう告げたドルアグス。おもむろにアウレリスに近づくと、その尻尾に噛みつく。


『あ、ちょ、ドルアグス!? 私にはもう番いが……あいっだァ!?』


 尻尾から毛をぶちっと毟り取ったドルアグスは最高司祭にその毛を手渡した。


「これは?」


『アウレリスの尾毛に我が魔力とメッセージを込めた。これを持ち森に入ればそこの主と会話が出来るだろう』


「なんと……それはありがたい」


『くれぐれも悪用はしてくれるな。用事が済めば火にくべて燃やせ』


「あ、それなんですけど、私がアイテムボックスに回収させて貰っていいですか?」


 思わず天音が話しに入る。 

 ドルアグスの顔が見る間に警戒に彩られるが、天音はそれに気付かない。


『なぜ、だ?』


「その、それがあればウサギさんの居場所を森の主さんたちに聞いて行けるかなって……」


『小さき者か……』


 思わずため息を吐くドルアグス。


『私が許す、持って行きなさい。あと見付けたら必ずここに連れて来なさい』


 そして勝手に許可を出すアウレリスを見て被りを振る。ダメだこのメスども。そんなニュアンスが含まれていた。

 そして、他の面子が良く理解していないことに気付いてさらに溜息。


『全く、本当にあの小さき者は節操がない……』


「ん。ドルアグスどの何か言いましたかな?」


『なんでもない。主との会話を終えた後はその娘に渡してくれ。決して他者が使うことのないようにな。我等としても好き好んで人間と戦争はしたくもない』


「き、肝に銘じよう」


 用事は済んだ。とドルアグスとアウレリスが去っていく。

 馬車に乗り込む面々。皆で中央ギルドのある町に向かうことになったのだ。


「ちなみに中央ギルドはピーザラ国の先にあるコロアという国にある。ここは冒険者ギルドが作った街でな、王城は無いが王城に近いギルドが存在しておる」


「そこには森が?」


「冒険者用の初心者の森というのがある。新人冒険者の研修に使用されている森なのだが、ここの主は非常に強いと言われている」


 ヘンドリックの質問に答える最高司祭。馬車がゆっくりと動き出し、がだがだと振動祭りが始まった。

 お尻を守るために寝そべることにする天音。それに気付いたアーボが天音の背中に手を当ててマッサージしようとぎゅっぎゅっと押していた。

 残念ながら大して意味は無かった。

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