うさしゃん、不本意な強盗
「KSYAAAAAAAAA――――ッ!!」
うわーお。
目の前に現れたコフィンオロチ。なんというか水色に近い青色のヤマタノオロチに足くっつけたような姿は、なぜだろうね、足の生えたオタマジャクシに八本の頭をくっつけたみたいに見えなくもない。
ぷふ、笑える。
「さて、戦闘開始、でありますね」
冷静に告げるピスカさん、これ、マジで大丈夫?
まぁピスカが闘うから問題は無いか。
負けるなピスカ~。
ガシャリ。次の瞬から何処からともなく取り出された巨大な長距離ライフルみたいな、でも砲口がかなり巨大な銃が現れる。
1mはあろう銃身を軽々構えたピスカがコフィンオロチ向けて引き金を引く。
ウォンウォンと不気味な音を立て始める銃。砲口に光が集まり始める。
あの、ピスカしゃん、それ、なんですかな?
「長距離メガランチャーであります」
めが、らんちゃー!? 何ソレ? 初めて見るんですが、というかマンガ世界の銃器じゃなかったのか!?
「発射であります」
押し込んでいた引き金を放つ、その刹那、溢れだすように前方へと伸びて行く光の一撃。
おお、ビームだ。ビームでたっ! まさにロボ子。これぞ男達の夢の結晶ッ!!
ビームが当った瞬間物凄い爆発とともにコフィンオロチが悲鳴を上げながら倒れ込む。
いや、待って、普通におおっとか叫びそうになったけどさ、なんでビーム当たって爆発? 核融合エンジンとか付いてないよねオロチさん。
「仕様、であります」
当たったら爆発する仕様ってどんなだよ。ああ、そうか、こいつ作ったの頭のおかしなマッドドクター連中だったの忘れてたわ。あいつらしょうもないことにこそ情熱賭ける馬鹿ばっかだった。
人を改造すれば変身シーンにこだわり抜いてなぜか爆発して爆炎の中から七色の光を放ちながら登場する奴とか、あの変身が元で俺はもう変身するのが嫌なんだーっとか言ってヒーローたちに自爆特攻しちまったんだ。結構強かったのになぁ、可哀想に。変身した姿、ショボかったから余計にな……マジ可哀想に。
胴に風穴開いたコフィンオロチ、怒り狂って雄叫び上げながら起き上がる。
が、ピスカは既に飛び上がり、その首向けて突撃していた。
超振動ブレードに手を換装し、近くに来た首を一つ一つ切り裂いて行く。
なんだろう、このコフィンオロチに対する同情というか、可哀想って思う気持ちは。
残り二つの頭になって、ようやくコフィンオロチは逃げだそうと背を向けずりずりと後退を始めた。
しかし悪魔のような兵器様は見逃す気など一つも無かった。
その姿、まさに黒き悪魔のようである。
真上から超振動ブレードを構えて急降下。
逃げるコフィンオロチを真っ二つに引き裂いた。
ギエェェとか叫んだコフィンオロチの首を回転斬で双方切り裂きすたりと着地する。
四つ裂きとなったコフィンオロチが倒れる。
うわぁ、もはや一回も攻撃できずに即殺されちゃったよ。HPバー何処行った?
あ、アイテム入手ダイアログ出て来た。
「ご主人様アイテムはご主人様が持つべきであります」
了解。いや、なんかヒモプレイしてる気がしてちょっと気が引けるんだけど、まぁ楽に経験値入るからいいか。
流石コフィンオロチ、パティー組んでるから自動でオイラの経験値に大量に流れ込んで来たぜ。
これでまた連続レベルアップできるな。
でも今はお爺ちゃんがいつ来るかわからないからやめとこう。
もうちょっと落ち付ける状態になってからか、切羽詰まった時の必殺の一つとして残しとこう。
しっかしこれ、どう見ても俺らがコフィンオロチの食糧庫に強盗として押し入って殺害しちゃった構図だよね。まさに押し込み強盗殺人である。
なんてこった悪人の所業じゃないか。
―― 称号・強盗殺害犯 を手に入れた! ――
い、いやあああぁぁぁぁぁぁぁ!?
神様にも認められる悪徳ウサギさん爆誕っ!?
ちょっと神様、見てたの!? 今の見てたの!?
「新しい称号を貰ったでありますが……これはあまり褒められた称号ではないでありますね」
強盗殺害褒められたら世も末だよ。
外道勇者並みに欲しくない称号である。
返品できませんかね? 称号だから無理? ですよねー。
「目的は達しましたし、そろそろ帰るでありますか?」
だな。あ、でもその前に……
「この、ケダモノ、であります」
そう、この洞窟にはもう用は無い。
ペンペンたんという雌魔物を除いては。
いざ、新たな世界へれっつらごー。
狙いを定め、強盗殺害者の獣が走りだす。
「ぺん? たーんっ!!?」
慌ててよちよちと逃げだす獲物に向かい、俺は迷わず飛びかかるのだった。
あ、ピスカさん周囲の警戒お願いします。
いやぁ従順なメイドさんって最高ですな。




