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ルルジョバ、軟禁される

 ナリアガリッパー王国に亡命した元道真廣、赤穂楓夏、真壁莱人、上田幸次、ルルジョパ、中浦沙希の六人は、今困った状況になっていた。

 町の一つに行った際、王国騎士団を名乗る者たちが尋ねて来て、一緒に国王に謁見してほしい。と言われたのだ。

 王国騎士のシンボルが付いた甲冑だったし、人の好い団長さんだったので信用して付いて行ったのだが、王国に辿りついた後が問題だった。


 まさに至れり尽くせり。

 綺麗なメイドやイケメン執事が一人一人の部屋に付いて夜伽を行おうとして来たり、ありとあらゆる豪華な食事やお菓子を用意してくれたり、なんだかここから出て行くのが悪い気がしてくる程の歓待である。


 流石に夜伽は皆断ったものの、青少年な男子達としては少々危ういところである。

 赤穂楓夏、上田幸次が他の二人を狙っているせいで、その二人が夜伽に堕ちないか気が気でなく、憎悪を迸らせそうだったので、最初の夜にルルジョバが相手執事にそれとなく伝えたところ、直ぐに夜伽は行われなくなったのだが、気を抜くと国内に絡め取ろうとして来るナリアガリッパー王国の隠すことない勇者の抱き込みに、皆さすがに困った顔になっている。


 今はテラスでお茶をしながら女性陣が座り、男性陣は近くで日課の準備運動、元道真廣もすぐ傍で素振りの練習をしている。

 今日は全員でこれからの方針を話し合うつもりなのだが、流石に何処に行っても誰かが聞き耳立てているので、できるだけ開放的な庭での話し合いを選んだのだ。

 そのため、本日は皆の付き添いメイドと執事まで勢ぞろいしている。


「さて、どうしようかね」


「流石にずっとここに居るというのは、でも出て行きづらいのは確かね」


「俺は別にいいと思うぞ? ロスタリスからは魔王倒せとか言われてるけど、実際情報集めた限りじゃ魔王なんて現れてないんだろ?」


「一応各種族の魔王はいるらしいけど、勇者を呼びだす意味はないんだっけ?」


「オー、ワタシタチイミナーシ」


「流石にそれはないだろ。とりあえずレベル上げを優先しよう。ここら辺の魔物でも充分闘えるみたいだし」


「そうね。他のクラスメイトとは冒険者ギルド通して連絡できるし、そこまで急ぐ必要は無いからここに腰を落ち着けるのもいいのかも。あ、でも夜伽とかはいりませんよ?」


 一応、と釘を刺しておく楓夏。

 メイドの一人がやうやうしくお辞儀をする。

 分かっております。ということなのだろう。


「しかし、ここの騎士団との模擬戦は面白かった、なかなか強かったぞ」


「真廣さんは強過ぎだと思うよ。まさか百人相手に闘い切るとは思わなかったし」


「アレは流石に失敗だった。最後の方は剣を持つ感覚が無かったからな。あそこで騎士団長が出てくるのも計算外だ。もっと精進せねば」


 真廣としては百人組み手でも充分闘える計算だったのだ。

 まさか九十を越えたあたりで武器を持つのも辛くなるとは思わなかった。

 腱鞘炎を起こそうとも回復魔法を使えば元通りになるのでこの世界は便利だが、地球ではそうはいかない。

 自分は九十人くらいまでしか相手しきれないのだと分かってしまったのだ、これはまだまだ強くならないと百人抜きは夢のまた夢だろう。


「ルルジョバは何してたんだ? よく居なくなってたけど」


「オゥ? ココデ踊ッテタヨー」


 ルルジョバは暇を見付けてはサンバを踊っていた。

 宮廷楽師を何度か借りて、音楽つきで踊ったのは久しぶり、どういう音楽を紡いでほしいかを言えば、なんとかそれに答えようとしてくれる楽師はとても素敵なナイスミドルたち。

 ルルジョバの行う変わった踊りに最初こそ驚いていたが、これがサンバという踊りなのだと理解してからはむしろ楽しんで楽曲を演奏してくれていた。


 たまにメイド達が休憩中にサンバモドキを踊ってこれ腰のシェイプアップによさそう。とか噂しているため、徐々にサンバがこの国に浸透し始めていることを知り、ルルジョバは満足気である。

 その内この国の国舞にするのもいいかもしれない。密かな野望を胸に抱いていた。


「中浦はどうだ? これからどうすればいいと思う?」


「そうね。しばらくはこのままでいいんじゃないかしら? 無理に国を出る必要も無いし、安全ならこの国で暮らすのもいいと思うけど、魔王の気配も無いし」


 そう、もしも目標である魔王とやらの噂でもあれば倒すと言う目標に向かっていけるのだが、今はこれと言った目標がない。危険人物だったらしい鏡音も死に、坂上もミザリオという国で見たという噂をギルドで聞いたのでこの国は主だった危険が無いのだ。

 余程の危険が迫りでもしない限りこの国から脱出する必要性が無い。

 このため、王国の狙いを知りながらもずぶずぶと目論見に沈んで行くのであった。

 むしろ軟禁状態の居心地が良すぎて逃げたくなくなっているのだが、それはまだ彼ら自身気付いてもいなかった。

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