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天音、ロスタリス防衛戦争3

「クソッ、どうなっている!? ロスタリスは府抜けたのではなかったのか!?」


 ボザーク軍を指揮する総司令官は思わず毒付いていた。

 遠めに見えるのは空を舞う自国の兵士たち。

 血飛沫が舞い散る戦場では、高笑い浮かべる女が一人、獅子奮迅の闘いを見せていた。


 精鋭ではないとはいえ帝国軍として侵略に適した訓練を行っていた兵士たちだ。

 フォーメーションもばっちりで、帝国としての闘い方をしっかりと頭に叩き込んだ兵士たちが、たった一人の女に歯も立たずに斬られている。


 別の場所では背の低い敵なのだろうか? 姿は見えないモノの物凄い勢いで帝国兵を跳ね飛ばし、こちらに向って来る敵の気配。

 明らかにおかしい。


 ロスタリス王国は三国から責められているはずだ。

 王はつい先ほどまで隷属されていたと聞く。

 クローアギルドで聞いた話によれば既に隷属は解かれたそうだが、だからと言って攻め寄せる帝国軍が三つもあるのに強力な兵士を集められるとは思えない。


「まさか、S級冒険者がたまたま居たのか?」


 だとしたら読み間違えたとしか言えない。

 そしてその可能性は高い。

 国王が隷属されたことでS級冒険者が解放に来た可能性は否定できないのだ。

 だとしたら、あの血飛沫の舞う状況も納得はできる。


「女、戦場での高笑い、近接戦闘……ストナ=エルレインか!?」


「総指令、いかがいたしました?」


 近くに居た兵士が小首を傾げる。

 未だに危機感を持っていないらしい兵士にイラッとしながらも、総指令官は撤退を視野に入れる。

 このままS級冒険者の居るロスタリスに仕掛けるのは愚策。

 ロスタリスが徹底抗戦した理由は彼女の存在か。

 そう、思っていた彼の元へ、兵士達を跳ね飛ばしながら現れる一体の魔物。


 一瞬、なんだこれは? と意味不明の存在をしげしげと見つめてしまう。

 動きはコミカル。

 突き出した槍を前にしたまま走り込み、数体の兵士を吹き飛ばした後につんのめってころころ転がる。

 兵士達からの反撃は全て手にした盾で受け止め、クルクル回りながら槍を突き出しその場でブレイクダンスのように回転、周囲の兵士を薙ぎ払う。


 ただの魔物ではないことは一目でわかった。

 弱そうな姿なのに攻撃力がおかしい。防御が硬過ぎる。

 なんだ、あの魔物は?


「総指令、か、鑑定結果、出ました」


「魔物の名は?」


「アボガランサーEXエクスペリエンス。ネームドモンスターで、アーボ、テイムされてますッ」


「テイム!? モンスターテイマーか!?」


 正直信じたくない事実だ。魔物使いまでいるとなれば帝国兵の勝利はかなり薄い。

 そもそも今回はロスタリスの戦力を減らすのが目的なのだ。なのに自分たちの兵だけが潰されては意味が無い。


「し、しかも、あの槍……神槍ロンギヌス!? 盾は神盾アイギスですっ!!」


「馬鹿な!? アイギスはアテネポリスの御神体として飾られている筈だ! 本物の訳があるか!?」


「間違いありません、鑑定は、槍も盾も本物だと告げてます」


「嘘だッ!?」


 もはや意味が分からない。

 なぜただの黒い球体に手足が生えたような生物が神話級の武具を持っているのか、しかも宗教国家の御神体をさも当然のように使っているのか。


「あんな武器で突撃されれば人間など紙屑と同意、マズいですよ総指令!」


「わ、分かっている。撤退、撤退だ!!」


 判断は速かった。

 ただ蹂躙出来ると思っていた敵にS級冒険者、だけでなく未知の魔物を扱うモンスターテイマーまで居るとなればこちらの壊滅は必至。

 ボザーク帝国は撤退用の照明弾が撃ちあがると同時に一人の遅れも無く引き返し始めた。


「帝国兵が、去っていく?」


「よし、足の速い冒険者数名集まれ。敵軍が何処まで引くか見て来てくれ。国境を越えて完全に撤退したら作戦終了だ」


 冒険者とロスタリス兵から二人づつ、帝国軍が何処まで逃げるかを偵察するため帝国軍の後を馬に跨り追って行く。

 そんな彼らを見送って、ストナはふぅっと息を吐いた。


「っし、クロウ、貴様はどっち行く?」


「近い方、かな」


「それでは、私がテモニー帝国、お前はロビオン討伐に援軍だ。行くぞ」


「おいおい、ボザークどうすんだよ。戻ってきたら大打撃だぞ?」


「A級冒険者が居るんだから問題ないだろう。なぁガロワ」


「そういうことかい。ったく、めんどうくせぇ」


 ストナとクロウが足早に馬に乗って去っていく。

 どうやら彼らは別の戦場を救援に向うようだ。

 天音たちは一先ずここで闘い終了。


 大したことはしていないのだが、テイムしたアーボが活躍した御蔭で天音には多くの経験値が手に入る。

 ジョージもかなり経験値を手に入れていたようで、オーイェ! と喜んでいた。

 戦闘終了によって団体戦用経験値が割り振られたのだ。御蔭で勇者たちの平均レベルが70を越えたのだった。

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