表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
254/981

天音、ライゼンを見送る

 ギルドで緊急依頼受注を告げて皆で外に出る。

 ライゼンだけはやるべきことがあるということで不参加を表明。理由は孫娘の仇打ちだそうだ。

 いろいろおかしい気はするけれど受付嬢は気にせず了承していた。


 ライゼンが緊急依頼を蹴るのだからよほど重大事情らしいと勝手に納得してしまったらしい。

 この国でのライゼン信頼度は物凄い高かったのである。

 外に出た天音たちは、宿屋へと向い、ライゼンの馬を引き取りに行く。

 ライゼン自身は安宿に泊まったのだが、老馬は天音たちの宿でストナ名義で預かって貰ったのである。


「ではの」


「戦争を終えたら、私達もウサギさんを探しに行きます」


「そうか。あのピスカというお嬢ちゃんが味方についとるみたいだしの、もしかすれば色々な場所に逃走するかもしれん。今はカラザン皇国辺りにおるとだけ伝えておこう」


 聞いたことも無い国だった。

 天音が小首を傾げていると、ここから二週間ほど馬車で西へ向った場所にある国なのだそうだ。

 めちゃくちゃ遠い場所である。


「なんでそんな場所に?」


「だからお嬢ちゃんが空飛んどっただろ。あれで運んだんじゃろな。かなりのスピードじゃったし、この時間でそこまで辿りつくくらいは造作もあるまい。儂はただ何処までも追って殺す。それだけじゃ」


 柔和な笑みを天音に向けて、ではの。と一言。シウバに乗ったライゼンがうさしゃん向けて駆けだした。

 天音はこれを見送るしかできない。

 大丈夫、アレは簡単には死なない。そう祈りを捧げ、彼女は皆に視線を向けた。


「私達は、私達の闘い」


「まぁ、そうだな。ガロワさん、お願いします」


「おうよ。ストナの嬢ちゃんの代わりにゃ心もとないかもしれんがな。おっさんの実力ってものを見せてやる」


 がははと笑うガロワ。

 その姿は歴戦のヤクザにしか見えず。目元の斬り傷痕がさらに彼をカタギの人間じゃない存在に見せているが、この世界ではこういった容姿の男はざらだった。

 この位厳つい顔の方が実力があるので冒険者仲間を募る冒険者達からは引っ張りだこになるのである。


 中でもソロでA級冒険者として指定されているガロワは間もなくS級の仲間入りと言われる程の実力者。

 後一歩及んでいない状態ではあるが、ストナの代わりとしては充分過ぎる存在だった。

 だからきっと、天音たちはツイているのだろう。


 例え戦争に巻き込まれるとしても、彼らにはほぼ生存が約束されているのだから。

 とはいえ、戦争。何が起こるか分からないのが戦場なのである。

 そのことを肝に銘じ、天音はアボガランサーEXをギュッと抱きしめる。

 うさしゃん、私を守って。そんな祈りを捧げ、少女は前へと歩きだした。


 向う先は王城。

 戦争に参加する旨を国王に伝えるためであり、また鏡音を討伐したことを伝えるためでもある。

 王城前に着くと兵士が立っていたので謁見許可を取ることにする。

 相手が勇者と名乗れば、兵士たちは慌てて王の采配を伺いに向かうのだ。門前払いはされないのである。


「しっかし、あのピスカさん、お淑やかそうデーシタ」


「俺そこまで詳しくは見てないんだけど、やっぱ可愛かったか?」


「おぅ、めっちゃプリティーガールデース」


「パイは、パイはどうだった!?」


 ワキワキと手を動かしながら尋ねる孝明にジョージは得意げに告げる。


「ヒンヌー教が暴動起こす程の神デーシタ」


「マジか、それはそれでじゅるり」


「はぁ、アホが二人に増えてしまったわね。あんたたち天音を噂の対象にしたらもぐわよ」


「「ひぃぃぃっ!?」」


 アホな話題で盛り上がっている三人の声をバックサウンドにして、天音は許可が下りるのをゆっくりと待つ。

 兵士が許可を貰ってやってくると、三人を残して天音たちは王城内へと進むのだった。


「でも、桜坂さんってめっちゃ胸あるよな」


「Oh、確かに」


「ちょ、なんでそこで私を対象に上げるのよ!?」


「こう寄せて上げて、俺のゴッドハンドで!」


「ハッハー! ミーのマイサン、サムもホットホットしてしまいマース」


「キモッ!?」


 意味は分からなかったが背筋を駆け廻った悪寒に両手で自身を抱きしめ震えあがる美与。

 即座に二人から距離を取る。

 はっと気付けば、他のメンバーは既に王城に入ろうとしている所だった。

 慌てて後を追う。


 そして、兵士達二人が見守る目の前で、卑猥な単語連発しながら盛りあがる孝明とジョージは、他のメンバーが戻ってくるまでずっと下ネタ話で盛り上がっていた。

 下世話な話が好きな二人が揃ってしまったのだ。歯止め役がいなければ彼らはずっとこの調子だろう。


 そして、このことが王城前で下世話な話をする二人の勇者として民間人に有名になって行き、勇者は全員変態という噂が駆け廻ることになるなどと、天音たちは全く気づきもしなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ