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うさぎさん、村を見付ける

 しばらく進むと耳にピーンときた。

 何か近づいて来る。

 慌てて近くに茂みに飛び込む。


 周囲を注意深く探る。

 鬱蒼とした森の中、風は無いのに上空の木々は揺れ動いている。

 火の光が微かに差し込む密林に、しばし息を潜める。

 鼻を動かし臭いを確認。いや森の臭いは漂って来るものの、耳に来たような違和感はな……いや、間横から何か獣臭が……


 ゆっくりと視線を向ける。

 間横に視線を向けると毛むくじゃらの何かを発見。

 先客がいました。ウルフさんです。

 飛び込んだ先に狼さん待ってました。

 ウルフにしてみれば獲物が自分から口元に飛び込んできた感覚。

 兎さん大ピンチ(笑)。

 

 ちょ、まっ。ぎゃあああああああああああああああ!? って、あれ?

 が、ウルフは俺を襲うことなく、近づいて来る気配に警戒を向けてます。

 むしろ俺を襲ってしまいたいけど、これから近づいて来る生物に気付かれたくないといった様子。

 じろりと視線を向けて来るものの、隣合う兎に襲いかかることはせず、ちょこんとお座り状態で気配を伺ってます。


「このあたりのはずなんだけどなぁ。アレに必要な薬草の場所」


 声? しかもこれ、もしかして……


「本当にあるの? こんな森に」


 話声が聞こえた。人間だ。

 人間だよ。人間が居らっしゃいますよ!?

 ウルフと一緒に俺は茂みの先からこの世界初人類を見る。


 レザーアーマーを着た男、多分十代だろう。若々しい。

 ついでにその横で魔法使いみたいな服装を着ている同じく若々しい女の子。

 可愛い。でもデカイ。俺からすれば巨人もいいところだ。


 あの、なんて言うんだろ、えいっとかファイヤーとかじゅげむーとか言ってる魔導少女ゲームあったじゃん。アレの主人公、あんな髪型の女の子。短いポニーテールと肩元位のセミロング。眼元はちょっときつい感じかな?

 多分二人とも身長自体は百三十くらいだろう。成長段階といったところだ。

 子供だけで森を散策? クマとかヒョウとかドルアグスさんとか普通に居る森だぞ、大丈夫か?


「ぐ、ぐるぁっ!!」


 何をトチ狂ったんだろうか? 隣に居たウルフ君が飛び出した。

 なんで動いちゃった!?

 驚く俺を放置して、ウルフ君が男に向ってアギトを開き跳びかかった瞬間だった。


「甘いッ!」


 銀光一閃。ウルフの胴体真っ二つ。

 ちょ、一撃ですか!?

 ヤベェ、人間ヤベェ。今出会ったら確実狩られる。

 俺はガクブルしながら二人が立ち去るのを待つ。

 当然ながら背後からスニーキングするなどといった気にはならなかった。


 彼らが通り過ぎた後、俺はさらに南西へと向かう。

 こっちの辺りは魔物が少ないのかな? 耳にも危険な足音は殆どしないぞ。

 まるでこっちに生活圏内を広げるのを嫌っているかのように一気に野生動物や魔物の気配が無くなって来たな。人間が来たのもこっちからだし、もしかするともしかするのか?


 ん? 森が終わるのか?

 開けた場所に出そうだったので茂みに身を隠しながら森の外を窺う。

 どんな場所か。と思えばどうやら村のようです。


 森の手前に柵が設けられており、入口の辺りに兵士っぽい服装のおっさんが二人。

 村の中では眼で見える限り粗末な服装のお姉さんが井戸で水汲みしていらっしゃる。

 のどかな農村って感じだ。


 なるほど、人里近くの森なのか。

 というか、そんな場所に魔物が一杯居るしゴブリンも居るんだけど、いいのかね?

 っと、あまりここに居ると俺が見つかるな。

 今日の冒険はここまでにして帰ろうか。

 とりあえずそれなりに走った場所に人間の村がある。しかも巣の南西側に、だな。


「グガ?」


 ん? 不意に、隣に誰かがやって来た。

 誰だ? と思って見上げてみると、緑色の肌の小人さん。

 はい、ゴブリン御来客。

 今日はよく隣に誰かが並んで来るなぁ。


 当然逃げた。

 ゴブリンが動くより早かったので驚いたゴブリンが慌てて追って来る。

 逃げたら追う。まさに狩猟本能だ。ゴブリンなんぞに狩られてたまるかっ。

 脱兎使うべきか、いや、この程度なら茂みを使って撒ける!



 お、人間発見。さっきの二人組だ。

 背後を向けばまだ追って来るゴブリンくん。

 ふむ。これはつまり、電車でレッゴーって訳ですな。トレイン行為万歳!


 とぉっ。とばかりに茂みから飛び出す。

 焦った顔で剣を構えた男の前を駆け抜ける。

 兎!? と思わず叫ぶ男と、俺が必死に逃げてることに気付いて魔法を詠唱し始める女。

 女の方が抜け目ないな。

 そして俺の後ろから出現するゴブリンくん。出現と同時に……


「シェ・ズルガ!」


 女の魔法がゴブリンを浮かびあがらせ八つ裂きに切り裂く。

 何アレ恐い。魔法やべぇ魔法すげぇ。マギラビット早くなりたい。


「なんだ? ゴブリン?」


「どうやら兎を追ってたみたいね。今の兎は運が良かったわ。こいつは運が悪かったみたいだけど」


 アイテムを回収した女がふふっと苦笑する。

 対する男は不満顔だ。兎倒せてたら今日の飯豪華になってたのに。とか言われてもな。俺は喰われる気ないから。

 しっかし、凄いな人間。ゴブリンを一撃かぁ。

 な、凄いよなあんちゃん。と、俺は茂みから人間を窺いながら隣の相棒に視線を向けた。


「グッ?」


 ……

 …………

 ……………………ん?


 目の前には巨大な毛むくじゃらの大木。すっと視線を上に向けて行くと、目が合った。

 グリズリー様の御出現にございます。

 ……逃・走!


 ガアァァァァァァ――――ッ!!


 だっと走り出した俺に気付いたグリズリーが威圧の声を張り上げた。

 ビリビリっと身体が麻痺したような気分に陥る。

 まず……


「グガァッ」


 真下から掬いあげる一撃。まともに喰らった俺の意識が一瞬飛んだ。

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