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ウサギさん、行ってらっしゃいする

 カラザン皇国にやってきました。

 この国を探索するのは後でいいとして、まずは冒険者ギルドである。

 ギルドに向うと、やっぱり皆が一斉に振り向いてピスカを見る。なんてことは一切なく、皆が思い思いの行動をしていなさった。


 職業安定所みたいな内部なので、皆自分の仕事探しに必死なのだ。暇そうにしている奴が見当たらない。

 冒険者が結構居るから賑わっているんだけど、ピスカから振り落とされたら俺は気付かれることなく踏み殺されるだろう。それぐらい周囲を気にしない冒険者達が忙しなく闊歩していた。


 それというのも、皇国というこの国の冒険者密度が高いせいらしい。

 新人用受付に行くと受付嬢のお姉さんが苦笑しながら教えてくれた。

 冒険者が多いのでいい仕事は取り合いになるし、直ぐに無くなってしまうのだそうだ。


 余程残るのはレッド指定の塩漬け依頼ぐらいだろう。ここにあるのは荒野に潜むデスワームの変異体討伐依頼とか荒野への護衛依頼だった。

 塩漬けとして残っていることからそれだけ危険な場所なんだろう。

 荒野にはできるだけ行きたくないという冒険者達の本音が透けて見える塩漬けの多さだった。


「えっと、冒険者登録をしたいであります」


「はい」


「それからこちらの方とパーティーを組むであります」


 そう告げるピスカに呼応して俺がギルド証を提示する。


「え? ウサギ!? え? ギルド証!? なんで!?」


 想定外過ぎて思わず叫ぶお姉さん。

 気付いたベテランさんが慌ててすっ飛んで来た。

 冒険者の秘密や容姿は大声で叫ばないように教育していたのだろう、俺に対して平謝りしてお姉さんの頭も一緒に下げさせる。


「気にしていないと言っているであります」


「それはありがとうございました。以後このようなことが起こらないようしっかりと教育しておきます。それと、これが登録用紙になります。ご記入ください」


 ベテランさんが対応。新人さんは後ろで申し訳なさそうに立っていた。

 何かこっちの方が悪いことしてる気がしてくるな。

 ちょっと涙目のお姉さんが凄く可哀想だ。


 ベテランさんに連れられてピスカが試験に向う。

 相手は適当にそこらへんにいたお姉さんが声掛けられて一緒に向って行った。

 あ、ピスカ、一応分かってると思うけど、手加減しろよー。


 手を振ってピスカと別れを告げる。

 ピスカは声が届いたようで、了解であります。と告げて来たので多分大丈夫だろう。

 冒険者のお姉さんには可哀想なことになりそうだけどな。


 せっかくなのでピスカが帰ってくるまでは受付カウンターに乗ったまま受付のお姉さんと一緒に接客する。

 お姉さんが困った顔をしていたが、ウサギさん、マスコットみたいにしとくのは得意だよ。


「すいません、冒険者登録したいんですけど」


 おっと新人さん居らっしゃい。

 可愛らしい女の子とちょっと生意気っぽい男の子の二人組だ。


「俺、村で一番強いんだぜ。即S級に上げてくれよお姉さん」


「あ、ランツェがすいません。F級希望でお願いします」


 お嬢さんの方がしっかりして居るではないか。

 二人ともカウンターより上に喉が来るくらいの背丈なので150あるかないかだ。


「では、こちらに記入をお願いします」


「え? 文字なんか書けねぇよ」


「あの、すいません、私達文字書いたことなくて」


「大丈夫ですよ。代筆もやっております。ではあちらの方で対応させていただきます」


 と、移動する様子だったので、とぉっと女の子の方に飛び乗る。


「ひゃわ!? え? ウサギ、動いた!?」


 どうやら置物と勘違いされていたようだ。


「なんだぁ? ギルド内にウサギいんのかよ?」


「え、えぇと、その、その方も冒険者です……」


 凄く申し訳なさそうに告げるお姉さん。いいんだよ、ウサギだもんね。信じられないよね?

 お姉さんが受付から出ると、別の受付嬢がカウンターに入る。

 なるほど、受付には常時人がいるようにしてる訳か。


「では、お名前からよろしくお願いします」


「ランツェだ」

「エペです」


 二人同時に言っちゃったよ。

 お姉さんも苦笑しつつも困惑中だ。

 ここはウサギさんが一肌脱いであげよう。

 どうせ一番じゃないと嫌だろうからまずはランツェ君だな。ほれエペさんや、ウサギさんと少し遊びましょうぜ。


「あら、ウサギさんどうしたの?」


「ちょうどいいですから一人づつにしましょう、エペさんはウサギさんの相手をして待っていてください」


「え? え? はい」


 困惑しながら俺の背中を触るエペ。

 ゆるふわうぇーぶの緑色の髪を揺らしながら、わぁと笑みを浮かべる少女は絵になります。

 うん、年ごろから中学生くらいだな。

 丁度膨らみ始めた胸が自己主張をしだした頃だ。


「ふわふわですね」


 ふふっと笑みを浮かべたエペに、いつか俺の女にしたいなぁと思ううさしゃんであった。

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