うさぎさん、交渉する
「……つまり、今から目指しているロスタリスは先程倒した男のせいで高位神官がいない、と?」
「はい。このままではその娘が助かる確率は限りなく低いと言わざるをえませんであります」
睨みつけるようなライゼンの視線に耐え続ける俺。
そんな俺の意思をくみ取って彼と会話するピスカ。
真剣な話だと理解した勇者パーティーは固唾を飲んで交渉を見守り、ストナだけはダイアログ押すことだけに意識を向けている。
あの集中力凄いな。
「ふむ」
「ライゼンさん、どうするんです?」
「信用するにしてもこの娘の証言だけでは信じ難いな。だが、実際に向って本当であれば眼もあてられん。とはいえ村に戻るには時間が掛かる」
昨日の夕方辺りから出立したから同じくらいの時間掛かる、いや、急いで来たんだろうから遺体を落としたりしないように慎重に事を運ぼうと言うのなら一日以上掛かるだろう。
ストナさんその分だけ1分以内にボタンを押し続ける単純作業し続けないといけない訳だ。
「私であれば、その娘を連れ他国の教会に向えるでしょう。時間も数分であると保証するであります」
「ふむ。先程の飛行を見せられれば納得だな。条件は何だ?」
当然俺を追って来ないでください。
「ご主人様を追うのを止めていただ「却下だ」きた……ええぇ~」
やっぱなー。無理だろうなって思った。
「そのウサギを殺すのは我が人生最後の仕事だ。絶対に誰にも譲れんし拒否はさせん。儂はなんとしてでも追い詰め殺す。これは決定だ」
「Oh、ウサギさんお前何やったー!?」
そんなの言える訳ないだろー。リアの為にもだんまりだ。
「では、少し譲歩し、私がその女性を蘇生させる間私達を追わない。というのはどうでしょう」
「よかろう。しかしこの娘を無事蘇生させ生き返すこと、そしてここに無事返すことが条件じゃ。当然、この娘まで襲った瞬間、儂は全力を持って貴様を追い殺すであろう」
うさしゃん誓います。襲いません。
宣誓するウサギさんにふんっと面白くなさそうに憤るライゼン。
交渉成立ということなので先生の遺体をピスカが受け取る。ボタン押し係はストナから俺に移行した。
ウサギさんタップ、タップ、タップ。これは長時間はきついぞ。
「では、失礼します」
いやー、いい移動手段が手に入ったよ。
ピスカは優秀だな。
「ふふ。ピスカは役に立っているでありますか? ご主人様の為なら何でも致しますでありますよ」
さすがだピスカ。お前をメイドに出来てよかったよ。っていうか腕疲れて来た。
「まだ1分経ってないでありますよ?」
うん、タップし過ぎたか。でも1分過ぎる前にタップしないとやばいんだよなー。先生生還させないとだから休む訳にも行かない。
ピスカ、早めに頼む。
「間もなく真下に教会が来ますでありますよ。あと数秒の、いえ全体で1分程であります」
と、言うが早いか空の移動から着地態勢に入るピスカ。
周囲の人々が何だあれは? とピスカを指差す中、悠々と地面に着地するピスカ。
最後にはスカートの裾を押さえて優雅に着地。
俺に振動すら来なかった。
「教会はここでありますね。すいません神官の方、蘇生をお願い致しますであります」
ピスカと共に教会に入る。教会にいたシスターたちが驚いた顔をしていたが、遺体を見た瞬間直ぐに動き出す。
高位神官を呼び出し、しばし。
やってきた高位神官が蘇生魔法を唱えた。リバイ。という魔法である。ってことはリバイバルの英単語を簡略化させた奴かな? 多分上位魔法はリバイバとかリバイバルと言ったところだろう。
まぁどうでもいいな。あ、アイテムボックス消えた。
「では、ご寄付の方を。復活は30000ストロになります」
「え? お金取るでありますか?」
ああ、大丈夫、ピスカ俺が払うよ。
俺はギルドカードを取り出し神官に渡す。
一瞬ぎょっとした神官だったが、ギルドカードが俺の物だと理解して驚きながらも金額を引き抜く。
うわ、今更だけど凄い金額溜まってるな。
微妙に高い30000ストロだったけど今の持ち金だったらはした金だったので即決払いさせて貰った。まぁ即決じゃないんだけどな。実際は金額請求、復活を直した後だったし。
ただ、冒険者達にとってはこれ酷いんじゃ。切羽詰まりながら仲間を復活させて貰って安堵した瞬間30000円の請求。断るとギルドで評判悪くなるから仕事が来なくなる。
つまり借金して仕事をこなさないといけなくなる訳だ。駆けだし冒険者にとっては地獄である。
「う……ん?」
あ、先生が起きた。いや、また寝た?
起きたら状況が分からず困惑するだろうからどこか落ち付ける場所連れて行こうか。今ので生還出来てることは確認できたし。
ピスカ、宿取ろう宿。
教会の人たちにお礼を言って、俺たちは宿屋探しに向うのであった。




