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うさぎさん、身の上話を聞かされる

「僕はもともとどこにでもいる中学生だったんだ」


 はぁっと溜息吐いてキリトゥ君が告げる。


「正直驚いたよ。この世界は僕には合わない。別の世界に行ければいいのにって、思ってた時だったから、驚いたけどすんなり受け入れて、むしろ舞い上がったなぁ」


 今のキリトゥ君は中学生、というよりは高校か大学生に見える。

 つまり、それだけ前にこの世界に迷い込んだってことだろう。


「勇者として召喚された、とかじゃないんだ。突然、意味も分からず街中に飛ばされた。だから何の準備も出来てなくて、お金も無くて、奴隷にされそうになったりもした。でも、異世界知識使ってさ、知識チートすれば僕でもお金を稼げるって気付いた後は店を開いて、マヨネーズを作ってたんだ。でも、ほら、小説とかアニメじゃ直ぐに上手く行くけどさ、この世界って鳥が産んだ卵は生で食べれないんだ。サルモネラ菌とかがいるから。最初はさ、産みたて卵をぬるま湯で洗うとか知らなくてさ、折角作ったマヨネーズは食べた人を腹痛にさせて死者をだして……僕は慌てて国を逃げだした」


 あー、知識チートで失敗したタイプか。

 日本は作りたい食べ物の材料も既に加工済みのが多いからなぁ、一から作る知識がなくても作れるんだよ。

 チョコレート作ろうとか思ってもカカオの実なんて実際見たことないからわからないだろうし、なんか美味しそうな果実だと思って食べたらクラートゥとかマチンだったとかでそのまま即死してる転生者とか居そうだよな。


 野生の植物には毒のある果実も結構あるんだよ。棘で手を切っただけで死亡するような猛毒植物もあるしな。中途半端な知識でチートしようとすると大失敗に繋がるんだよ。


「その後は別の国で冒険者を始めてね。この世界にはにっちゃうっていう雪だるまみたいなウサギがいたからそれを狩って飢えをしのいだよ。肉になるし、毛皮も取れるし、あ、ウサギに言うようなことじゃないか?」


「問題無い、と言っているであります」


「そっか。それでさ、冒険者稼業やってると、自分のスキルがレベル以外で上がることに気付くんだ。スキルチートの開始だよ。この世界の奴らは恩恵とか言ってるけどな。異世界で小説とか読んでたらこれは! って分かるだろ? もしかしたらと考えつく限りのやりかたでスキルを取ってみたんだ。アニメとかで見た必殺を練習したり、魔法をイメージして使用してみたり。そしたらどんどんスキルが増えたんだよ。御蔭でギルドランクもどんどん上がって、こうして武装も整えられた。でも、やっぱり僕は主人公なんて柄じゃなかったんだ」


 まぁ、瞬殺されたしな。


「君は、ウサギに転生したんだろ? 人間じゃないのに何故ピスカさんに挑もうとしたんだ? 僕が倒されたことで相手の強さも理解出来ただろ?」


「それは確かに気になるでありますね」


 いや、気になると言われても、男が強敵に挑む理由なんざ殆ど似たようなもんだろ。俺の好みの女だった。ご主人様になれば一緒に付いて来てくれるんだぜ、やるだろ、男なら。


「あぅ……容姿はウサギなのに思考回路がドエロいですご主人様」


 おお、顔を赤らめるロボット。さすがあのドクター共の最高傑作。いい仕事してやがる。

 むしろこの知能機械、普通に人間の脳使ってても不思議じゃないよな。何せマッドな科学者だらけな訳だし。

 俺の理由を聞いたキリトゥ君は眼を見開き、ふふっと笑みを零した。


「なんだよ、僕と同じような理由じゃんか。ああもう、なんか悔しいな。僕だって頑張ったんだぞ」


「ウサギ生は過酷だったと言っているであります」


「あれ? この施設で生まれたんじゃないの? ここの関係者っぽかったし、てっきりこの施設内にウサギの巣穴があるのかと」


 俺がピスカを通して今まであったことを簡単に説明してやる。

 かなり驚いた後なるほどなぁと顎に手を当て真剣に考え出す。


「そうか、強敵相手に闘った記憶は僕にはないな。ピスカさんが初めてだと思う。そっか、実戦経験が違うのか。地上に出たら僕も強敵と闘うようにしないと……いや、でもそれで死ぬのは嫌だしなぁ……ア○ナさんみたいな可愛い彼女が出来れば後はもう余生を静かに暮らすつもりだったし、今更強敵に挑むのはちょっと、さっきのでこりたというか……痛いのはもう嫌です」


 袈裟掛けに切られて血がぶっしゃーでてたしな。ありゃ今まで切られた経験無ければトラウマモノだろ。


「あ、そうだ。僕、キリトゥって名乗ってるけど本当の名前は仲村修介って言うんだ。よろしくウサギさん」


「生前の名前は言う意味ないだろうけど、じしゃくじけいた? だと言っているであります」


「そっか、これからよろしく」


 あれ? なんかこいつとパーティー組む前提になってない?

 まァいいけど、あ、そうだ。キリトゥ君や、あの女性メンバー二人、襲ってしまっていいかな?


「あの、ご主人様がパーティーメンバーの女性二人を襲ってもいいか聞いて来てるでありますが?」


「え、正気!? 悪いけど今日から男性組にいようかウサギ君。絶対ぇ襲わせねぇ」


 あ、言うんじゃなかった……


「ドガッサならいいぞ?」


 誰が襲うかッ!

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