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うさぎさん、誘惑する

 なんだこの可愛らしい生物は。

 引っ込み思案な図書委員っぽい容姿、目元が隠れるほどの前髪とショートカットに頭頂部のアホ毛が一本。なんだこの可愛い生物は。なんだこの可愛らしい生物は。

 おっと思わず語呂が単調になっちまった。


 目の前に居るメイド服着た人型ロボは、まさに俺の好みにドストレート。ピンポイント爆撃されたような気分だ。まさに俺の為に存在するメイドさんではないか。

 これはもう、なんとしてでもご主人様と呼ばせたい。

 娘さんよ、あんたの御主人になるにはどうすればいい。ウサギでもなれますか!?


 少女は近づいて来たウサギが謎の動きを見せ始めたことに小首を傾げる。ステッキから花を取り出すが受け取ってくれません。

 敵対行動ではないようだが、意味があるのかどうか不明である。……誘惑してるんだよッ。

 足元にすり寄ってきたことから敵対的というよりは親愛を感じなくもないのだが、小動物に好かれても彼女にはどうでもいいことだった。


 ウサギさんを放置して侵入者四人に視線を向ける。

 視線が向けられたことで焦るキリトゥ君一同。

 ウサギさんは慌ててジェスチャーして武器を持たないように告げる。

 うん。伝わらねェ。

 伝われ、この想い!


「な、なんかウサギが壊れたんだが」


「あの動きなんなのかな?」


「皆ウサギに気を取られるな、このボスをどうするかを……」


「まぁ、待ちなキリトゥ。相手は攻撃すれば攻撃をするっつってんだ。つまりこちらから敵対行動しなきゃ攻撃はしてこない。まずは会話から行こうじゃないかい」


 ナイスレペスタ!

 そうだよ、会話しよう。

 戦闘は悲劇しか生まないよ。


「あー、と、その、俺らは冒険者なんだが、君は何者、かな?」


「会話でありますか。私は自動人型最終兵器・PS2037-K。この施設にてこの部屋をご主人様より守るよう仰せつかりましたであります。よってこちらに近づいてくるようであれば迷いなく排除するであります。多少の会話であればお受けするであります」


「じゃあ、えっと、この施設って、なんなのかな?」


「秘密結社、新生インセクトワールド本拠地と聞いているであります」


 あ、やっぱインセクトワールドだ。


「では、その部屋の先には何がある?」


「ご主人様の研究施設と私の換装パーツ。アルティメットアーマーがそんざいしているであります。メンテナンスは怠っておりません。いつでも起動可能であります」


 アルティメットアーマーってなんだろう。凄く、凄く魅惑的な感じがします。

 戦闘モードになるんだろうか?

 それともメイドさんを究極進化させた姿になるんだろうか?


「で、では、もしもその部屋に向うとすれば、俺達ならどうすればいい? 見てみたいだけだとしたら?」


「ご主人様からは誰も通すなと通達を受けているであります。ただし、私の新たなる主人となる方であれば通しても構わないと言われたのであります」


「主人……それは、どうすれば成れる?」


「新たな主人設定条件は、1.異世界日本人であること。あるいは日本からの転生者であることを証明すること。2.インセクトワールド社の関係者であり主と同士であること。3.私と死合いを行い生き残った上で私から勝利条件を奪うこと。4.以上1か2、と3の条件を満たす者を私は主と認めることをここに宣言するであります」


 ふむふむ。じゃあ俺は? 異世界日本人。オッケー。インセクトワールド関係者? オッケー。なら問題は無いな。

 後はどうやって彼女にこれを伝えるか、だな。


「俺は……日本人だ。なら後は試合とやらをすれば主人認定できるな」


 少し考えたが、自分の秘密を暴露することに決めたようだ。


「証明は?」


「えーっと、俺の容姿はその、コスプレなんだが、これのアニメ名とかでもいいのか?」


「少々お待ち下さい、容姿のスキャンを開始、検索開始、アニメ……検索結果出ました」


 キリトゥ君が証明を行ってしまった。

 証明完了でキリトゥ君も条件は後一つ。彼女と闘い何かを奪えば彼女を手に入れることが出来るらしい。


「主人移行試験を開始します。奪いたい私の身体の一部を指定してください。ソレを奪えば貴方の勝利とします。試験失敗条件は貴方の戦闘不能。また、他者の介入は認めません。介入があった場合も試験失敗とさせていただきます」


「わかった。もしも負けてしまった場合はドガッサ、悪いけど俺の遺体を回収して帰ってくれ」


「い、遺体って……」


「燃える展開だよ。こういうのを待ってたんだ」


 キリトゥ君が舌舐めずりをしてニタリと微笑む。

 好戦的な笑みを浮かべ静かに武器を構えた。

 生死を掛けたバトル。負ければ死亡、勝てば新たな仲間が、しかもメイドロボが加入する。物語の主人公ならば確実に彼女を手に入れキャッキャウフフ出来るはずだ。そして彼は、それになり切ろうとしている。ここが彼の存在証明であるともいえるのだ。


「じゃあ、皆は端の方に」


「わ、分かった」


 1対1で闘うのか。キリトゥ君に勝たれると俺の目論見が潰えてしまうんだが、彼女の行動パターンは見ておきたい。

 頼む、負けろキリトゥ、骨は拾ってやる。あ、でも出来るだけ死ぬなよ、寝ざめ悪いから。

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