うさぎさん、出会う
ここ数日、俺の行動はパターン化していた。
午前中は新たなえさ場を探して巣穴を離れて移動。最近は北から順に北北東、北東、東北東、東といった感じで回っている。
東に向かった時はウルフの群れを警戒したのだが、一度も会うことは無かった。運が良かったのだろう。最悪木に昇ることも視野にいれていたのだが、そこまで警戒する必要が無かった。
既に何日も経過したせいで南南西に向けて進軍中であります。
正味闘うのはグリーンマンティスばっかりだ。
ゴブリンの集団には何度か会うけどかなり遠くまで移動するので後を付けたりはしていない。
午後の作業に支障が出るからな。
とりあえず今は武器をなんとかすることを試行錯誤中である。
幾度か背後からゴブリンを襲ったりしたけれど、一匹狩る前に集団が集まって来て脱兎で逃げるの繰り返しである。
忍びの一撃仕事して! 未だに一度も即死攻撃になってませんよ!
レベルも8から上がってないし、そろそろ次の段階に行きたいのだけど武器に関しても全く変動が無い。
あ、でも草は幾つか見付けた。
沈黙中の薬草とか見つけたぞ。沈黙を回避させるような草が見当たらなかったので草だけ採取してアイテムボックス入れて、後で食べようとまだアイテムボックスの肥やしになってるけど。
四日くらい前のだけど時間経過で萎れてることはないのがいいよな。アイテムボックス様々である。これについては神様に感謝だ。
意図せずアイテムボックスの性能を確認することが出来た。
後2レベルか。やっぱり背後から漁夫の利狙うのが一番なんだけど、さすがにそういうのを狙うのは俺だけって訳じゃないのである。
前回ゴブリンたちがオークと俺の闘いを見守っていたように、ときおり俺の背後に潜んで来る魔物がいたりする。
大抵はなんとか気付けるのだけど、時々気付いて無い時があるから怖い。
いきなり背後から唸りを上げて飛びかかって来るウルフ系とか普通に絶望モノです。
今のところ脱兎でなんとか逃げてるけど、そのうち狩られる可能性は高い。
現にウチの兄弟達も着実に数を減らしており、洞窟に帰って来る数もすでに四人いや四匹になっている。一匹は俺の目の前でウルフに拉致されてったからな。アレにはビビッた。俺全く気付いてなかったから下手したら俺が喰い殺されてたからな。スケープゴートじゃないけど兄弟に感謝したもんだ。
まぁ、俺が布団代わりにさせてもらってる姐さんは普通に洞窟内でもごもごしてるけど。
いつ帰っても洞窟に居るし、食事をどうやってるのか全く謎です。
おや?
ふと、歩いている先に洞窟を見かけた。
なんか妙に居心地の良さそうな場所である。
別のウサギでも住んでるのかな?
気配を探ったり匂いを嗅いだりするが、残り香こそあれど何かがいるようには感じない。
周囲も安全そうだ。
恐れながらも入ってみる。
鬼が出るか蛇が出るか。どっちも出てほしくないですが……って、何もねぇし。
ふむ。でも、ここはいいな。立地的にも蛇が気付きにくい場所だ。
内部の方には窪地とでも言うべきか、さらに小さな場所がある。
緊急避難として使えそうだ。
ふむ。いいな。秘密基地に使えるね。というわけで、ここは俺の別荘に決めさせて貰うぜ!
そうと決まればいろいろと用意していかないとな。
と、思って洞窟から出た時だった。
眼が、合った。
なんかひょろ長い生物と目が合った。
白い細長い姿の生物だ。
その姿、どうみても……オコジョである。
名前:
種族:鼬・オコジョ (♀)
Lv:8
HP:62/62
MP:8/8
TP:8/8
状態:興奮
スキル:
鉤爪 /相手に向って鉤爪で攻撃する爪技。
特攻 /体当たりの上位版。
切り裂く /爪で切り裂く攻撃。通常攻撃より威力が高い。
種族スキル:
威嚇 /嘶きで相手をスタンさせる。
おお、レベル高い。しかも♀だよ。初めての♀と遭遇です。
そんな彼女は興奮しているようでシャーッ! と威嚇してきます。
え。もしかしてこのオコジョさんの巣でしたか?
どうやら俺は留守中に部屋に入ってきた泥棒と感違いされたようです。
言い訳したいけどオコジョとウサギではどうしようもありません。
業を煮やしたのか、オコジョは俺に向って飛びかかってきた。
きらりと爪が光る。
バックステップ。
スイングが空振りして俺の髭に風圧を伝えて来る。
まるで私の居城からでていけ。とでも言うようなオコジョの怒りの攻撃に、俺は攻撃を躊躇ってしまっていた。
逃げよう。そう思うのだがオコジョは逃がす気は無いらしい。
元々肉食なオコジョはもしかして、俺を食料と思っているのでしょうか。
むぅ、これは危険な気もしないでもない。しかしだ。俺はこんな所で死ぬ気はないぞ?




