表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/981

うさぎさん、観察する

 本日は雨です。

 しとしとではなくざぁざぁ降ってるので巣穴は兎だらけです。

 皆雨のせいかじっとしてます。


 俺? 当然姉さんの横でぬっくぬくですわ。

 はぁ、気温下がってるからかちょっと寒いぜ。姉さんもっとこっち寄りなさい。

 しかし姉はもごもごしているだけで動く気配すらなかった。


 ダメだ、この姉動かなすぎる。

 他の兎は眠っていたり、自分のウ○コ摘まんで喰ってたり、母親が意味もなく移動してみたりと巣穴は兎天国になっている。


 どうもここの巣穴は水がたまらないように緩い坂の上側に位置しているようで、雨水が巣穴を水浸しにすることが無いのは少し嬉しい。

 ただ、何もすることが無いのが辛くはあるが。

 脱兎で巣穴駆け廻っとくかな。


 などと思った時だった。

 巣穴の先、外の森を右から左にゆっくりと歩行している生物を見付ける。

 あれは……コボルトかな?

 犬の頭を持った二足歩行する生物が森の中を徘徊している。


 あ、なんか発見した。

 しゃがみ込んで手にしたのは……キノコだ。

 口にした瞬間うげぼっと吐き散らしている。


 うん、ただのバカ犬らしい。雨の日に歩いている時点で気付くべきだった。

 おバカなコボルトは盛大に吐き散らした後よろめきながら左へと去っていく。

 あ、立ち止まった。どうしたコボルト?


 慌てて逃げだすコボルト。

 ウルフの群れが彼を追って走る。

 その数十匹。あれは即死案件だ。

 あー、やられた。


 雨のせいで臭いが消されているせいで近くに行くまで気付けなかったんだな。

 というか巣穴の近くに臭いに敏感なウルフの群れとか、即死フラグじゃね?

 巣穴から見えない右側でお食事が始まる。

 ウルフもコボルトも同じ犬とかオオカミだろ、共食いじゃないのかね?


 しばらくすると、ウルフ達が右から左に去っていく。

 ふむ、左側にウルフの巣があるとみた方がいいのかな?

 となると、東側か、向う時は気を付けないとだな。


 幸い今まで向かっていたのは巣穴を北側と見た場合、北西側に位置しているので逆方向だ。

 でも、そうだな。そろそろいろいろ調べに行ってみるのもいいか。

 ウルフには気を付けるようにして、まずは北から攻めてみよう。


 あ、今度はゴブリン来た。

 しかも巣穴の上側からとぅっと飛んで目の前にずしゃっ。

 そして巣穴に気付かず南へと去っていく。


 うん、まぁ、ゴブリンは間抜けだな。

 そんなゴブリンさん、コボルトの死骸を見付けたらしく西側へ。

 俺から見て右側に去っていくゴブリンはその場に座り、何かをしているようだ。


 丁度洞穴の入り口に阻まれ見えないのだが、座りこんだゴブリンは用事を終えたようで立ち上がり、巣穴の中央側へと戻ってくると南へ向けて歩きだ……あ、またしゃがみ込んだ。あれってコボルトが吐いてたキノコじゃね?


 あ、食べた。吐いた。悶絶した。

 バカだ。バカが居ます。

 しかもまたキノコ見付けて食べて吐いて悶絶を繰り返している。


 はっはーばっかでー。食べれないもん食べて悶絶してるとかバカのやる……あれ? 苦い雑草喰って悶絶していた兎さんって傍から見たらバカじゃね?

 まさかのブーメラン。俺はその場でうなだれる。


 しばし、雨の轟音だけが木魂する。

 兎共は巣穴でじっとしており、眠りだす者が多くなっていた。

 俺もそろそろ寝るかなぁ。


 そういえばこの姉さん、今日起きてからずっともっちゃもっちゃしてるけど、朝からずっと何か食べてるのか?

 いや、待てよ、この兎が動いたの、見たことない、つまり……今までずっと、同じ草を食べてるっ!?


 いかん、なんか怖くなって来たぞ。

 この兎、一体いつ稼働してるんだ?

 餓死してないってことは移動はしてるし食事もしてるんだよな?


 まさか、なんか凄いスキル持ってるとか?

 時間停止か!? 瞬間移動か!?

 姉さん、あんた一体何者なんだ!?


 入口を一心不乱に見つめながらもっちゃもっちゃしている姉は、何も考えていないようにしか見えないのだが、まさか何か高尚な思考回路を有した俺とは別の転生者だったりするのか!?

 途端、姉の存在がとてつもなく巨大に思えてくる俺でした。


 ふっ。寄らば大樹の木。あんたについてくぜ姉さん。

 ところで、本当に移動しないけどいつ動……ひぃっ!? 姉さん小便、小便垂れ流しですかっ!?

 ダメだこの兎、何も考えてないわ。


 この姉さんに付いて行くのはやめておこう。

 そう思いながらそっと離れる俺でした。

 あ、兄弟、そこは姉さんの……あーあ。

 もうやだ兎生活。


 ごろごろ転がりながら汚れていく兄弟たちに俺は顔を両手で隠してさめざめと泣くのだった。

 というか雨早く上がってくれ、こんな洞窟オイラ嫌だ。近いうち洞窟出て一人暮らしするんだ。チクショウ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ