200話突破特別編・ウサギさん死亡する
その日、うさしゃんは森を散策していた。
いつも通りに警戒しながら歩いていたんだが、その日は珍しい果実を見付けたんだ。
全体的には真っ白い実を鈴生りに付けた奴で、白い実の真ん中に黒い丸がある果実だ。
なんか無数の目玉が枝になってるみたいでちょっと気色悪いけど、恐いもの見たさもあってうさしゃんは食べることにした。
ごふぁ!?
そしてうさしゃんは即死した。
後にはうつ伏せに倒れたウサギの口元から零れ落ちる目玉のような果実が一つ。
泡を吹くうさしゃんが痙攣している。
「ぶひ?」
「ぶひぶひ」
お、見ろよアニキ。ウサギが死んでる。まだ間もないぜラッキー。
喰いでのある肉を見付けたオーク二人が駆け寄ってくる。
早速貪り喰らおうとしたオーク弟に、オーク兄は慌てて手で制す。
止めておけ弟よ。
な、どうしたんだよアニキ!?
ウサギの口元を見てみろ。
口元? なんだあれ?
俺は博識だから知ってるのさ、ありゃあホワイトベインベリーといって食べたら即死する果実だ。
え? ってことはあのウサギそれを喰っちまったのかアニキ!?
ああ。そんな肉を食ってみろ。俺達も即死させられちまう。
うっわ、やっべ。さすがアニキ、博識っす。
ふっ。当然だ、何しろ俺はオークの王になる男だからな。
ニヤリ、笑みを浮かべたオーク兄はウサギを放置して歩きだす。
さっすがアニキ。一生付いて行きやす。
ふっ。付いて来い弟よ。別の獲物を狩って帰ろう。
そしてウサギさんは放置され、オークたちが去っていく。
……
危なかったぁ。とうさしゃんは起き上がった。
今のは完全に判断ミスだ。
せめてステータス確認を実に掛けるべきだった。
口元を拭いながら立ち上がる。
くいしばりが発動したおかげでなんとか助かったようだ。
まさか食事で死亡しかけるとは予想していなかった。
せっかくなのでホワイトベインベリーの実を全てアイテムボックスに詰め込み、敵を殺す時の奥の手として回収するのだった。
しっかし、とうさしゃんは回収したホワイトベインベリーの実を一つ取り出し眺めてみる。
見るからに毒々しいその実は、赤い茎に成っていたものだ。
正直どう見ても毒しかなさそうな実なのだが、ついつい好奇心に負けて食べてしまったのがアホの子たる所以だろう。
目玉のような黒目部分はどうやら花であった時の雌しべの名残のようだ。
まさかこの実を食べた瞬間即死するとは思わなかった。毒耐性があるから大丈夫だと思ったがやはり食物を口にする時は事前に確認が必須だな。
改めてステータス確認の大切さを認識したうさしゃんであった。
「ぶひぁーっ」
なんだぁ?
豚二匹が去っていった方向から聞こえた汚い断末魔の声に、耳がぴくんと反応した。
一先ずHPを薬草で回復しつつ木に登ると、安全に木の上を飛び交いながら現場を見に向かう。
あー、そういうことか。
丁度クマさんに遭遇した豚兄弟のアニキが一撃でやられたようだ。
弟オークは衝撃的事実を受け入れきれずに棒立ちになっている。
ふふんバッカで~。
うさしゃんはくっくと笑い、俺を馬鹿にするからそんな目に合うんだぜーと心の中であざ笑う。
その瞬間、弟オークは見た。
木の上から覗くウサギの姿。
「ぶひぃ!」
クマさんクマさん、ほら、あそこに喰いでのあるウサギがいるよ! 俺ら襲うより美味しいって。
「グアァ!」
俺様は今豚が喰いてぇんだよ!
そんな感じに咆えたクマが真上からの打ち降ろし。
弟オークが絶命した。
あーあ。可哀想に。
そう思ったうさしゃんに、クマが視線を向ける。
次はお前の番だ。そう告げるように唸りを上げた。
うさしゃんの居る木に向かってやってくる。
どうやらオークたちは憂さ晴らしか何かで殺されたようだ。
やってきたクマがうさしゃんのいる木に二足歩行で立ち、べったりともたれかかりうさしゃんを見上げて来た。
「グアオゥ!」
うさしゃんはアイテムホワイトベインベリーを投げた。
丁度咆えたクマの口にダイレクトイン!
「GUGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!?」
もがき苦しみ喉を掻き毟るクマがそのままばたんと倒れる。
なんとか吐き出そうとしていたが、どうやら飲み込んでしまったようだ。
しばしもがき苦しんだ後、痙攣しながら泡を吹いて力尽きた。
ふ、また空しいモノに与えちまったぜ。
ぴくぴくしているクマの横に落下して着地すると、ふっと息を吐く。
オーク兄弟たちの形見を回収し、クマさんが力尽きるまで待ってからクマさんの形見を回収する。
ホワイトベインベリー。予想以上に使えそうなアイテムを見付けてしまったようだ。
たまにはアホの子も役に立つな。と思ううさしゃん、次の瞬間にはそもそもアホの子化させられてなければあんなもの食べて即死する必要無かったと気付くのだった。
ちなみにホワイト・ベインベリーは実在の植物なので見付けても食べちゃダメです(>_<)ノ




