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咲耶、想定外の危機

 しばし、ゆったりとしていた天竺郁乃、イルラ、東雲咲耶、中浦沙希の四人。そろそろ食事にしようか、と沙希が提案したことで皆が移動を開始した。

 通路を行くのを咲耶を先頭にして郁乃がちょこまか動き、イルラと沙希の間を行ったり来たりしている。

 そんな四人の目の前に、にやにやと嫌らしい笑みを浮かべた坂上博樹、鏡音孝作の二人がやってくる。


「あれあれー。坂上君と鏡音君? 他のメンバーどうしたの?」


「あいつらは中庭でだべってんぜ」


「それより先生、ちょっと試したいことあるんで握手お願いできません?」


「鏡音君と握手ですか?」


 なんだか様子がおかしい。と思うモノの、生徒のお願いならばと深く考えることなく手を差し出す。

 ぎゅっと握った瞬間だった。


「隷属契約!」


「っ!?」


 ぱぁっと握手した手が赤く光る。

 咲耶は首筋に嫌な感覚が生まれたことに気付き慌てて手を放し飛び退く。


「な、何をしたの鏡音君っ!?」


「あぁ? スキルを発動したんだよ。奴隷契約。会議ン時に言ったろぉ、固有スキルっすよ先生」


「そ、そのスキルは魔物にしか使えないんじゃ……」


「ああそれ? 嘘に決まってんだろバーカ。ひゃはは。先生はもう俺の奴隷っすわ。んじゃ強制命れ……ごひゅっ!?」


 孝作が命令を発動させようとした瞬間、即座に動いたのは沙希だった。

 孝作の隣に博樹が居たことで警戒感を最大に引き上げていたのだ。

 御蔭で孝作が命令を告げるより早く、彼女の蹴りが孝作の股間を直撃した。


 崩れ落ちる孝作の顔面に追撃の蹴りを叩き込み、呆然としていた咲耶の手を引っ張る。

 イルラと郁乃もそれに気付いて逃げだした。

 流石にこれはマズいと博樹が走りだそうとして、自分一人向ったところで意味がないと気付く。孝作を助け起こし、追いかけるぞと尻を蹴る。


「こンのクソアマがァ!!」


「クソ、天竺さんイルラさん、先生連れて逃げて!」


「え? で、でも……」


「急いで! あと冒険者ギルドに寄ってここに居ないクラスメイト達にもあの二人が危険だって連絡して!」


「犠牲に、ならないでね?」


 イルラが心配そうに告げる。

 コクリ、神妙に頷いた沙希は三人を送り出し、追って来た二人に振り返る。


「やったわね博樹……」


「チッ。折角ハーレム作れそうだったのに、お前だけかよ」


「あら、私を落とせると思って?」


「触れれば終わりだ。テメェただの奴隷じゃすまさねぇ。散々弄んだ後はゴブリン共の巣に自分から向わせてやるッ」


「二人とも道連れに殺してやる」


 両手を怪しくわきわきとさせながら走りだす孝作。

 思わず背筋がゾッとしたが、あまりにも拙い突撃だったので、飛び上がって顔面を蹴り抜く。

 スカートを翻し、太ももに取りつけていた隠しナイフを取り出し、相手の首に突きつける。

 が。あと1cmというところで両腕が後ろに引かれた。

 なんだ!? と驚いて振り向けば、いつの間にか背後に回った博樹が両脇を抱えて拘束して来た所だった。


「行け鏡音!」


「ナイス坂上!」


 マズい。

 焦る沙希、必死に逃げようとするが、その首が孝作に掴み取られる。


「お前の負けだ中浦。隷属け……」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ」


 中浦を奴隷に落とす、その刹那、通路の奥から炎に包まれた男が走り寄ってくるのが見えた。


「な。なんだ!?」


「さぁかぁがぁみぃぃぃっ!!」


「なっ!? 田代!?」


 田代康弘が炎を纏ったまま博樹向けて突撃して来た。

 咄嗟に逃げだす博樹。

 拘束を解かれた沙希が膝蹴りで孝作の股間を強打。

 呻く孝作の頭を両手で固定し、飛び上がっての膝を顎先へと叩き込む。


「死ね女の敵ッ」


 が、追撃を放とうにも迫ってきた康弘に狂気を感じ、慌てて飛び退く沙希。

 呻く孝作も身の危険を感じて博樹の後を追って逃げだした。


「ふぅ……田代君には感謝すべきかしらね。それよりも……早く逃げよう」


 直ぐに彼らとは逆方向に逃げだす沙希。王城を脱出して冒険者ギルドに向うと、逃げた筈の三人がギルド受付の順番待ちをしているのに遭遇した。

 この非常時に何を悠長に並んでいるのか。

 イラッとしながら三人を列から引っ張り出す。


「何してんの!?」


「だ、だって、ほらギルドに報告しないと……」


「そうしてる間にここに来られたらアウトでしょ。この国は諦めるわ。全員一人づつに別れて四つの街に向う、クラスメイトたちと合流して現状を告げる。あとはそのクラスメイトたちと行動。出来れば私達も合流。おーけー?」


「「「はいっ!」」」


「よし、それじゃ先生は……」


「ヘンドリック君の居る場所に伝えに行きます!」


「了解、天竺さんはクローア、イルラさんはラコステ、先生がコーライ、私がヘコキウタ。向う場所は分かった? 急ぐわよ!」


「「「はいっ」」」


 沙希が仕切って三人を解散させる。

 といっても国を出るまでは一緒に向かい、全員別方向へと向うと、自分一人遠周りでヘコキウタへと向うのだった。

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