ルルジョバ、朝は踊りから始まる
固いベッドから身を起こす。
うーんと背伸びをするが節々が痛い。
朝早くに目覚めたのは、黒人の少女。
ドレッドヘアの彼女は厚ぼったい唇に付いたリング型ピアスを指先でなぞる。
金属製なのでかなり冷たい。
ルルジョバの顔にはいくつもの穴が開いている。
耳には耳たぶだけじゃなく側面に四つの穴、全てにリング型ピアスが付けられている。
これはファッションというよりもルルジョバの部族に伝わる伝統文化と言った方が良いだろう。
確か悪魔が幼子を連れ去らないように既に穴が開いている五体満足ではないぞ。と告げるためだったかと思う。
今ではただのファッションだし、日本人はピアスが多いと危ない人と思うみたいだが、ルルジョバ自身は別に危ない人と言う訳ではなく、ただサンバなどの踊りが好きなだけの普通の女性なのである。
踊りまくっているせいだろうか? 腰が縊れて凄いプロポーションになっているのだが、やはりピアスのせいで彼氏候補が寄ってくることはない。
それでも持ち前の明るさの御蔭で仲間は多い。
とはいえ、同じようにピアス開きまくりの彼氏でいいかと言われればルルジョバの好みはヘンドリックなどの優男系でピアス穴がない男性がいいのではあるが。
そういう男性に限ってルルジョバの容姿が苦手という男が多いのである。
部屋の中には元道真廣、赤穂楓夏が眠っている。
男子とは別部屋を取っており、そちらには真壁莱人、上田幸次がいる。
このグループはスポーツ仲間ではあるのだが、なかなかに複雑な恋愛模様を見せていてルルジョバはそれを傍から眺めるのが好きだった。
何しろ楓夏は莱人が好きで幸次は真廣が好き。だけど莱人と真廣が今いい雰囲気でこのままだとくっついてしまいかねないのだ。
だから二人の邪魔をするために楓夏と幸次が共闘し始めたのだが、それを見た莱人と真廣はあの二人仲が良いなぁ。もしかしてくっついたか? と勘違いしているのである。
傍から見るとあまりにも間抜けで、でも楽しい光景である。
果たして誰と誰がくっつくのか、楽しみで仕方無いのである。
ただし、本日は部屋からお暇して外へと出る。
朝早く起きたのは、いつもの日課のサンバを踊るためである。
顔を洗って気分爽快になったルルジョバは外に出ると、宿屋の庭で一人踊りだす。
「おねえちゃん何してるの?」
宿屋の娘が洗濯物を持ってやってきた。どうやらこの庭は洗濯物干しに使われているようだ。
所定の位置に縄を結って張り巡らせた縄に洗濯物を干して行く。
そんな彼女の話し相手をしながら激しい踊りを披露する。
楽しそうに見えたのだろうか、洗濯物を干し終えた彼女はルルジョバの隣に来ると、真似するように踊り出した。
激しく腰をくねらせるルルジョバにすごいすごーいと驚嘆しながら、楽しそうに踊り合うのだった。
「何してるのかと思えば……ルルジョバ、そろそろ皆起きたから食堂でこれからの方針話すぞー」
「了カーイ」
最後に少女と両手でハイタッチしてイェー! と喜び合って踊りを終える。
「なんか楽しかった」
「オウ、ワタシもステキなジカンでした」
少女に手を振って食堂に向う。
はっと気付いた少女は仕事の途中だったことを思い出し慌てて洗濯物入れを抱えて走りさっていった。
少女と別れたルルジョバは呼びに来た莱人の背後からダイレクトアタック。胸を押しつけ背中から抱きつく。
「お、おいルルジョバ?」
「莱人ー本命ドッチヨー?」
「は? 本命?」
「ソダゼー。真廣かー? 楓夏かー?」
「な、なんのことだよ。知らねぇよ!?」
女性に抱きつかれたことが無いからだろう。顔を赤らめ焦る莱人。
なんか面白いのでこのまま食堂に歩いてやる。
案の定、莱人の姿を見た楓夏ががしゃんとスープを掬っていたスプーンを取り落とす。
「な、な、な……るるじょばしゃん……?」
「ヘイ楓夏ー。ジョーダンよー」
と、莱人から離れたルルジョバは今度は楓夏に背中から抱きつく。
オーバーリアクションで驚く楓夏はルルジョバにとっては弄りがいのある可愛らしい娘だ。
なんだか妹のように思えてしまうのだ。
「な、なんだ冗談……も、もうルルジョバさんったら、悪質ですよ」
「ハハーごーめんねごめんなー」
「良く分からんが、そろそろ話を始めてもいいか?」
真廣が話を元に戻す。
ルルジョバの登場で一気に話の腰を折られたが、元々話していたのはヘコキウタに着いた後どうするかという話だった。
「さて、私達がここに来る目的は情報収集だった訳だが、昨日の感じからだとこの町周辺の情報が手に入るくらいで世界情勢などはなかなか入りづらい。むしろ王都の方が情報が速く集まる気すらするのだが?」
「じゃあ戻るか?」
「しかし、来て早々戻るというのも……何かいい案はないか?」
「この町付近で闘うイイヨー。力付けとくベキダヨ」
「なるほど、手ぶらで帰るよりはいいか」
真廣たちはルルジョバの進言で周辺でのレベル上げを行うことに決めたのだった。




