うさぎさん、本気出す
オークと戦う。そこでオークを倒し俺が獲物ではなくオークより強い存在であると覚らせねばならない。
それができれば、ゴブリン達は恐れを成して逃げて行くはず。
つまり、目の前のオークを俺が自力のみで倒す事が前提になる。
逃げ場は無い。
逃げれば即座にゴブリン達が動くだろう。
あるいはクマさんの元へ逃げ込むか?
運が良ければ逃げ切れるかもしれない。だが、豚の嗅覚がどこまで高性能なのか分からない。
下手すれば巣穴まで追ってこられるかもしれない。
つまり、オークはいまココで潰さなければ俺の身ばかりか巣穴に住む兄弟たちの命も危うくさせてしまうのだ。
やれるか? 否、覚悟を決めよう。
ココが最初の冒険だ。
命を掛けて闘うにふさわしい戦場だ。
ドルアグスだっけ? あんた加護くれたんだし今こそその加護の力を発揮してくれ。
死した父よ、俺に力を。
俺ならできる、自分を信じろっ。
大きく息を吸い全身に力を込める。さぁ、やるぞッ!
茂みから飛び出しオークの前に姿を見せる。
両拳を握ってステップ。
「ブヒッ!」
拳を前に打ち出し威嚇。サイドにステップ踏みながら掛かってこいよとジェスチャーしてみる。
そんな俺にイラッと来たらしい、我武者羅に襲いかかってきたオークの側面に回り込んでの……連打ッ。
ドラドラドラドラァッ!!
「ブヒィァ!?」
驚きながらも槍を振ってくる。
当然飛んで回避。多分一撃当っただけでも俺は死ぬ。
それだけは絶対に、絶対に回避だ。
飛び上がりと共に蹴りを叩き込む。
振るわれる槍を右に左に時にしゃがんで回避して、隙を見て拳を叩き込む。
ウサミミが邪魔だ。長い分槍を大きく避けなきゃならない。
面倒だが切り裂かれるのは嫌なので必死に避ける。そら、顎がガラ空きだぜ!
ダメージは殆ど喰らっていないだろう。
槍を振るって来たのでアグゥの身体を足場にして真下に回避。
さらに振るわれた槍を左に避けて回し蹴り。
槍を掻い潜って脛に拳を叩き込む。
即座にサイドステップ。
アグゥの脛に回し蹴り。
アグゥがこちらを振り向くより早くさらに回り込んで左側をキープ、動きながら必死に拳を蹴りを当てて行く。
どうだこの野郎。元怪人様をなめんな! 特殊部隊並みの訓練受けてんだよこっちは!
名前:アグゥ
種族:オーク
Lv:3
HP:58/120
MP:0/0
TP:30/35
状態:警戒
スキル:
突き /相手に向って槍を突き出す槍技。
気合い溜め /次の一撃を攻撃力2倍にする。
二連撃:TP3 /二連続で攻撃する槍技。
種族スキル:
仲間を呼ぶ /嘶きで助けを呼びます。
絶倫 /交尾時に疲れ知らずになる。連続交尾可能。
異種間性交・可 /異種族との間で子供を授かることができる。
オークの鼻 /臭いでの索敵にプラス効果。
マジか、今のでようやく半分、先は長そうだ。
というか、何時の間にスキル二連撃使ってたんだ?
TPが3減ってるしそれだよな?
「ブゥアァァ!!」
オークが気合いを入れた。
遠巻きに眺めていたゴブリン達が恐れるように身を竦める。
来るか!?
ブゥンと一回転するオーク。槍が全周囲を攻撃してくる。
身を竦ませて回避、さらに連打を浴びせてHPを減らす。
これならなんとか、そう思った刹那だった。真横から襲いかかる二連撃目の槍。
回避行動など取れなかった。
気付いた時には槍の柄が俺に激突し、くの字に折れ曲がる。
想像以上の衝撃が俺に襲い掛かり、木に激突した俺はそのまま地面に崩れ落ちる。
効ぃ……た。
すげぇ痛い。ものすげぇ痛い。もう、俺死んだんじゃないかと思える程だ。でも、俺はまだ意識を持っていた。
一応、生きてるらしい。
全身痛いし、死んでてもおかしくない衝撃だったんだが。
名前:
種族:ノウサギ・シロウサギ
二つ名:雑草ハンター・ハイエナ
Lv:6
HP:1/55
MP:4/6
TP:4/6
状態:くいしばり・死者への誓い・雑草魂
どうやら、一度死亡したのは確実らしい。
くいしばりが発動している。そして瀕死のため死者への誓いと雑草魂が発動。
俺のステータスが倍になっているはずだ。
けど、このままじゃ勝てないのは分かり切っている。
どうすればいい?
このまま死ぬのか? 前世のようによくわからない内に呆気なく?
いや、嫌だ。絶対に嫌だ。
何も出来ないままで死ぬのは嫌だ。
だから……抗おう。
持てる全ての力を出し切って。
力ある言葉、それはきっと変わらない。俺にとってそれはいつもたった一つの言葉だった。
正義の味方を倒す、敵を倒す最後の力。そう、それは……
「flexiоn!」




