うさぎさん、怒れるクマを見る
強敵に遭遇した。
緑色の身体をした悪魔だ。
そいつは俺の目の前で両手を構えて対峙してきた。
今の俺と同じボクサースタイル。
じりじりと近づいてくる四足。
黄色の複眼がしっかと俺を見定める。
ギザギザの破壊力がある鎌を構えて距離を縮めてくる。
何者? 蟷螂ですが何か?
俺は二足歩行で相手に拳を向けて威嚇。相手も同じように鎌を持ち上げ威嚇。
両者の距離が徐々に近づいていき……
グリーンマンティスの気合いの一撃。
ソレを跳ねるように跳んだ俺が躱す。
そして落下するのは彼の真上。
―― グリーンマンティスを倒した! ――
フッ。空しい闘いだったぜ。
というか、グリーンマンティス結構な頻度で合うな。
なんとなくついつい緊迫じみた闘いをしているが、正味この昆虫は単体相手なら楽勝であると言える。
まぁ、動物と昆虫なのだから勝敗などあってないようなモノだけど。
昆虫類はいろいろ危険な奴もいるからな気をつけねば。
一先ずバカな闘いを行った俺は即座に身を隠す。
今、耳にぴーんと来た。
咄嗟に隠れた少し後、一匹のゴブリンさんが茂みから顔を出して周囲を見る。
あっぶな。もう少し隠れるの遅かったら俺が狩られてた。
安全を確保したのか現れるゴブリンが一、二……六体ですか。
ゴブリン達はリーダー格のゴブそんに付き従うように歩き、周囲を見回し獲物を探っている。
ちなみに名前はステータス確認で確認した。ネームドモンスターというよりは亜人扱いなのだろうか?
ふむ。ちょっと危険だが尾行してみよう。
漁夫の利狙えるかも知れん。
名前:ゴブそん
種族:ゴブリン
Lv:6
HP:91/91
MP:0/0
TP:53/53
状態:警戒
スキル:
暴れまくり /周囲の被害を考えずに打撃を与えるスキル。
気合い溜め /次の一撃を攻撃力2倍にする。
トラップ作成 /近くの何かを使用して罠を作る知識。
種族スキル:
仲間を呼ぶ /嘶きで助けを呼びます。
か弱き犠牲 /群れのために弱い個体を犠牲に出来る能力。
異種間性交・可 /異種族との間で子供を授かることができる。
おおう、知恵あるゴブリンだ。トラップ作るとか……
と思ったのだけど、追跡している俺は見た。見てしまった。
ゴブそんが作っていたのは落とし穴。
しかも意味不明な何の脈絡もなく周囲のゴブリンにここに罠を作れとばかりにゴブゴブ命令して手掘りさせてました。
頭の悪さはやっぱりゴブリンです。
でも、罠作成スキルか。俺も何か罠作ったら手に入るかな?
そして近くの茂みに隠れる一同。どう見ても間抜けです。つか隠れきれてないぞゴブリン共。
って……掛かったよ。
罠に引っ掛かっちゃってるよ。熊さんが……
浅く掘られた落とし穴に、グリズリー様が引っ掛かりました。
全く注意せずに歩いている所に片手がぼそっと空を付いて面白いくらいガクッてなっていた。
そんな罠に掛かった熊に、ゴブリン達が襲いかかる。
うん、あいつらアホの子だった。
ちょっと体勢を崩しただけだった熊はむしろ怒り狂ってゴブリンに一撃。
ガァァッと渾身の一撃を喰らったゴブリンは木に叩きつけられ絶命した。
すげぇだろ。ワンパンで沈めやがったんだぜ?
地力が違い過ぎだ。
それでも突っかかるゴブリン。勇猛果敢? いいえ、ただの無謀な馬鹿です。
鎧袖一触、まさに数秒で壊滅しました。
まさかの二撃目で三体のゴブリンが吹き飛ばされていた。
最初にベアクロー喰らったゴブリンなんか下顎がふっとんでたからな。その威力は半端ない。
後にはゴブそんが計算違いとでも言いたそうな顔で聳え立つ巨大な黒壁を見上げていた。
そんな黒壁なベアー様は片手を振り上げ、一撃。
真横から襲いかかる腕の一撃でゴブそんは木に叩きつけられ死亡した。
……怖っぇぇ。
ふん。とばかりに鼻を鳴らした熊はそのままのしのしと歩き去って行く。
熊も食わないゴブリンの肉。
とりあえずアイテムだけ回収致しましょう。
と、触れて行くと、ゴブリン、一人生きてました。
虫の息ですがアイテム回収できません。
ハァーハァー。ゴブッ。と血を吐くゴブリンさん。当然俺は……
といやっ! とばかりに助けると見せ掛け拳を一撃。
―― シロウサギは掌返しを放った! ――
―― ゴブりんを倒した! レベルがアップしました! ――
ゴブリンのゴブりん? なんじゃそりゃ。
まぁいいや。とりあえず俺のレベルアップに貢献してくれてありがとう。
そう思いながらアイテムを回収致します。
さって、俺のステータスを確認しよう。レベル上がったしなんかいい感じにスキル覚えてたりしないかな?




